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    侍ジャパン世界一おめでとう! から考えるスポーツ界の課題【原田香里のゴルフ未来会議】

    今回は、祝! WBC(ワールドベースボールクラシック)優勝! ということからいろいろと考えていきたいと思います。

    配信日時:2023年3月29日 02時30分

    • ゴルフライフ
    スポーツの世界の大きな可能性を見せてくれた侍ジャパンの活躍だった(撮影:GettyImages)
    スポーツの世界の大きな可能性を見せてくれた侍ジャパンの活躍だった(撮影:GettyImages)
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    ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。今回は、祝! WBC(ワールドベースボールクラシック)優勝! ということからいろいろと考えていきたいと思います。

    “侍ジャパン”のニックネームで呼ばれる日本代表は、今回、大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手、ラーズ・ヌートバー選手らのメジャーリーガーも加わったメンバーで臨みました。今年からボストン・レッドソックスに加わる吉田正尚選手や、日本で活躍する村上宗隆選手、佐々木朗希選手らの日本球界からのメンバーと、最高のチームを作り上げ、ドラマチックなゲームを次々と制して、最後はアメリカ相手に競り勝ちました…。なんて、いまさらあまり説明する必要はありませんね(笑)。

    決勝をライブで見ることはできなかったのですが、ニュースで見ただけでも最高のプレーばかり。チームのみなさん、ファンのみなさん、本当におめでとうございます。

    この快挙を見て、改めてスポーツが持つ力のすごさを感じると同時に、その力を大きなエネルギーに、どれだけ多くの人に競技に触れてもらうかを考えることが大切だな、としみじみ考えました。

    アメリカとの決勝に臨む直前に、ロッカールームで円陣を組んだとき、大谷選手が口にした言葉は、アスリートの真髄ともいえるものだったと思います。

    「憧れるのをやめましょう」。対戦相手のアメリカには、有名なメジャーリーガーがずらりと並んでいます。ロサンゼルス・エンゼルスで大谷選手のチームメイトでもあるマイク・トラウト選手は、アメリカチームのキャプテン。他にも野球が好きな人なら、同じ場にいるだけでうれしくなるような選手ばかりが集まっているのです。

    侍ジャパンの選手たちの多くも、やがてはメジャーでプレーする夢を持っていることでしょう。けれども、これから戦う相手を、そんな目で見てしまっていたのでは、対等に戦うことはできません。ましてや勝利を収めることは難しい…。

    日本からメジャーに挑み、二刀流を武器にトップレベルで戦い続けている大谷選手には、そのことが誰よりもよくわかっていた。だからこそ、チームメイトにそう、呼びかけたのでしょう。

    若い選手が多いチームだとはいえ、きちんとそれが言える28歳の大谷選手はさすがというか…。言わなければいけないことを絶妙なタイミングで話す姿に感動しました。

    憧れや目標とする選手を持つことは、誰にでもあることです。けれども、ただ憧れているだけでは、追いつくことはできても超えることができない。これは、野球の世界以外でもいえることです。

    それこそ私の現役時代は、岡本綾子さんに憧れておりましたよ(笑)。その昔、米ツアーにスポット参戦したときに練習ラウンドをご一緒したことがあるのですが、その時はさすがに浮足立っていたことを思い出しました。

    当時の米ツアーは、日本人選手が今ほどいないし、岡本さんと練習ラウンドができるというので舞い上がってしまったのは仕方のないことだと思いませんか? そこは許してください(笑)。

    それでも「ああ、〇〇選手がいるな」と、有名選手の姿を見て練習方法やスイングなどを参考にすることはあっても、試合が始まると憧れとか舞い上がるという気持ちはほとんどなかったと思います。日本で行われる米ツアー「TOTOジャパンクラシック」(当時はミズノクラシック)でも、同じでした。

    ゴルフは、同じ試合に出ている全員が戦う相手なのですから、野球以上に憧れている場合ではないかもしれません。アスリートとしての心の持ちようは、大谷選手の言葉に尽きると思います。

    もうひとつ、選手ではなく我々のような競技関係者の課題も見えてきました。今回は、日本中が、侍ジャパンの快挙に盛り上がり、子供も大人も多くの人が野球に興味を持ったことでしょう。この人気を一過性のものにせず、昔に比べて減ってしまった野球ファン、野球をする子供たちをどれだけ増やし続けられるか。

    オリンピックでもワールドカップでもそうですが、盛り上がるときはすごいのですが、冷めるのも早いのが人間というものです。けれども、人気が爆発したときは、競技の裾野を広める大きなチャンス。興味を持った人が、どのような形でもよいからその競技に触れる機会を増やすこと。第一段階のハードルをできるだけ下げ、その先への道筋を、たくさん用意することが大事なのではないでしょうか。

    私が子供のころと違って、球技禁止の公園などが増え、遊びながらいろいろなものに触れられる機会は少なくなった気がします。もちろん、お稽古事などでさまざまなスポーツをすることはできるようになったと思いますが、子供たち自身が何をするか選ぶには、まず、いろいろと遊んでみないとわかりません。

    今の時代は親が主導することが多いのかもしれませんが、子供が自主的に「やりたい」と思ったときに、すぐできるようにすることが大切だと思います。ゴルフの世界でも、私はそれを考えていますが、野球の世界も同じなのではないでしょうか。プロの試合を見るファンを増やすという点でも、同じことが言えます。

    競技のルールを覚えることは大切ですが、その競技の歴史を大事にしつつ、時代に沿った考え方をする必要があるのではないでしょうか。さまざまな意見があると思いますが、まずはその競技に触れることができる環境がないと、この少子化の折、競技人口は増えないと思います。

    スポーツの世界の大きな可能性を見せてくれた侍ジャパンの活躍を、一過性のものにせず、将来につなげること。お祭り気分の中で、そんな課題が見えてきました。


    ■原田香里(はらだ・かおり)
    1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

    連載

    原田香里のゴルフ未来会議

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