【女子ゴルフのプロテスト】何位までが合格? 年一回開催の厳しい戦いに迫る!
トップ通過を果たした清本美波をはじめ、現役高校生が5人も合格したことで話題になった2023年度の女子ゴルフプロテスト。「難易度が非常に高い」とはよくいわれますが、実際のところ女子ゴルフファンの私たちは、どれほどの難易度をイメージすべきなのでしょうか? この記事では、合格人数と合格率などから、予選が免除される条件まで、主に2023年度のデータを参照しつつ、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストについて解説します。
配信日時:2024年5月20日 09時58分
1.女子ゴルフのプロテストは年一回開催の狭き門
女子プロゴルファーになる王道のルートは、「プロテストに合格する」こと。JLPGAが年一回開催するプロテストに合格するとJLPGA会員になり、実質的にプロになることができます。
ほかにも、「アマチュア資格でJLPGAのレギュラーツアーに出場して優勝しプロ宣言する」といったルートもあります。2016年「日本女子オープン」で優勝した畑岡奈紗や、最終プロテスト直前に2019年「富士通レディース」で優勝した古江彩佳がそれにあたります。
しかし、後者はごく少数であり、あくまでも例外的な位置付けのルートといえるでしょう。
女子ゴルフのプロテストの難易度は“非常に高い”
女子プロテストの合格基準は、順位でいうと「最終プロテストの競技終了時点で上位20位タイまで」が目安です。ここ数年は約600名が受験して合格者が約20名、合格率約3%で安定しています。
現在世界でも活躍中の渋野日向子は2018年に14位タイ、稲見萌寧も同年20位タイ、笹生優花は2019年に18位タイで最終プロテストに合格しました。このことからも参加者のレベルの高さがうかがえます。
女子ゴルフのプロテスト(JLPGAプロテスト)
JLPGAプロテストは、毎年5月に受験申し込みが開始されます。2024年度は5月1日に受付が始まり、7~8月の第1次予選と9月の第2次予選を経て、11月の最終までテストが続きます。競技は全て観客を入れずに行われ、会場には独特の緊張感が漂います。
2024年度の第1次予選は群馬・埼玉・静岡・石川・愛媛・佐賀で、第2次予選は茨城・岐阜・京都で行われる予定です。予選を通過した上位者は、茨城の大洗ゴルフ倶楽部で最終プロテストを受けます。
第1次予選
第1次予選の受験資格要件は、「最終プロテスト開催年度4月1日時点で満17歳以上の女子(出生時)」と「JGA/USGA HDCP Index5.0 以下の者(証明書等の提出は不要)」。申し込みに際しては、JLPGA トーナメント専用ウェブサイトへの登録が必要になります。
2023年度のエントリーは総勢619名、第2次予選へ進出したのは約36%の220名でした。
第2次予選
第1次予選を免除され第2次予選から参加できる資格要件について、2024年度の場合は以下の4項目です。
■2023年度最終プロテスト出場者
■第1次予選からの進出者
■2024年6月28日時点のロレックスランキング400位までに該当する受験申込者のうち上位30名
■上記以外でJLPGAが承認した者
2023年度第2次予選の通過者は94名で、これは第1次予選を免除された73名を追加した受験者293名のうちの約32%です。
最終プロテスト
最終プロテストから参加できる要件は10項目にもわたります。ここでは例として、2023年度のプロテストにおける予選免除者の該当要件を見てみましょう。
■2023年JGA女子ナショナルチーム女子メンバー
荒木優奈選手、手塚彩馨選手、馬場咲希選手
■2023年「女子アマチュアゴルフ選手権競技」優勝
飯島早織選手
■2023年「日本女子学生ゴルフ選手権競技」優勝
坂下一葉選手
ほか2名
2023年度の最終プロテストは予選免除者7名を加えた総勢101名が挑戦し、19位タイまでの21名が合格しました。失格や棄権、欠場者、予選免除者も合わせた全エントリー数は699名だったので、プロテストの最終的な合格率は「およそ3%」という結果です。
ちなみに、予選免除者7名のうち合格したのは馬場咲希選手1名のみ。トップ合格は清本美波選手、スコアは271ストローク(-17)でした。
※予選免除者の詳細な受験資格要件は「2024年度 JLPGAプロテスト受験申込要項」を参照してください。
最終プロテストに合格すると
最終プロテストに合格すると、11月下旬から2週間の日程で開催されるQTにも参加できます。QTは翌年のツアー出場資格を得るための予選トーナメントで、シード権を持たないプロがこぞって参加する非公開の厳しい戦いです。昨年末のQTでは、2023年度合格の96期生・宋ガウンがいきなりランキング1位を獲得しました。
2024年女子ゴルフのプロテストをチェックしよう
先ほど見た通り、2024年度のプロテストの申し込みは5月1日から募集開始で、第1次・第2次予選と最終プロテストが行われる予定です。2023年度はシステムの都合上見られませんでしたが、例年通りならJLPGAウェブサイトでスコア速報を確認できます。
また、2023年度の最終プロテストは第3日と最終日にはJLPGA公式チャンネルでライブ配信がありました。2024年4月現在は未定ですが、こちらも予定をチェックして、次世代女子ゴルファーたちの活躍を応援しましょう。
ちなみに、2024年度の最終プロテストには、以下のような要件に該当した第2次予選免除選手たちがいます。(2024年5月現在)
■2024年度JGAナショナルチーム女子メンバー
飯島早織選手、上田澪空選手、中村心選手、橋本美月選手、藤本愛菜選手、小宮千鶴選手
■2023年日本女子オープンゴルフ選手権のローアマチュア
中村心選手
2.女子ゴルフのプロとアマチュアの違い
女子ゴルフのプロとアマチュアにはどのような違いがあるでしょうか。女子プロゴルフにはトーナメントプロ(ツアープロ)とティーチングプロ(レッスンプロ)があり、どちらもJLPGAのテストがあります。今回は、トーナメントプロとアマチュアの違いについて見てみましょう。
プロは賞金を貰える
プロとアマチュアの一番の違いは、賞金です。アマチュアゴルファーは、大会で優勝しても10万円以下の賞金しか受け取れません。
プロはJLPGA主催ツアーへの参加資格を持つ
レギュラーツアーであるLPGAツアーに優先的に参加できるシード権は、以下のような選手に与えられています。
■永久シード:通算30勝
樋口久子、涂阿玉、不動裕理、大迫たつ子、岡本綾子、森口祐子の6人(2024年5月現在)
■前年度メルセデスランキング50位まで
■レギュラーツアー優勝の各選手
ほかに細かな規定があり、それに当てはまらない選手はQTで翌年のツアー出場優先権を競います。QTは予選トーナメントですが、2019年から、プロテスト合格後に入会するJLPGA会員資格がなければ参加できなくなりました。トーナメントプロは全員QTへの参加資格を持つため、結果次第ではレギュラーツアーに参加できます。
ちなみに、アマチュアゴルファーがメジャー大会に出場するためには「主催者推薦選考会(マンデートーナメント)で上位に入る」、「推薦枠・特別推薦枠に入る」などの条件があります。
ただし、こちらも生易しいことではありません。例えばJLPGAツアー2024シーズン開幕戦の第37回ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントでは、主催者推薦選考会としてアマチュアゴルフ選手権大会が開かれました。総勢169人のアマチュア選手が参加し上位4名が本戦への参加資格を得ましたが、通過率はおよそ2%です。
なおアマチュアが本戦に参加して優勝すれば、冒頭で述べた通りプロ宣言ができるほか、翌年の本戦シード権も得られます。ただし、これは日本女子ゴルフ史上7名だけが成し遂げた「偉業」となっています。
■アマチュアのツアー優勝
1973年「トヨトミレディス」 清元登子(この優勝で1974年からプロ転向)
2003年「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」 宮里藍(優勝後プロ転向)
2012年「サントリーレディス」 キム・ヒョージュ(優勝後プロ転向)
2014年「KKT杯バンテリンレディス」 勝みなみ(当時15歳293日・2017年プロテスト合格)
2016年「日本女子オープン」 畑岡奈紗(当時17歳271日でプロ転向・女子プロ史上最年少)
2018年「センチュリー21レディス」 K.ギルマン(2018年プロ転向・非JLPGA会員)
2019年「富士通レディース」 古江彩佳(最終テスト前の優勝でプロ転向)
アマチュアゴルファーとは
アマチュアゴルファーとは、「ゴルフを賞金や営利の目的としないアマチュア資格を持つプレイヤーのこと」です。自分の技術を向上させることや、コースに挑戦すること自体が目的のゴルファーともいえます。またアマチュア資格とは、アマチュアゴルファーとして競技に参加する資格のことで、アマチュア資格規則に違反する行為をしていない全てのゴルファーが持っています。
アマチュア資格規定は2022年に改訂され、10万円以内の賞金を受け取れるようになったほか、スポンサー契約をしたり報酬を得てCMに出演したりできるようになりました。
以下の行為は、アマチュア資格に違反すると規定されています。
■規則で認められない賞を受け取る
■プロフェッショナルとしてゴルフ競技でプレーする
■技術指導をして報酬を受け取る
■プロフェッショナルとしてゴルフ倶楽部、練習場に雇用される
■プロフェッショナルゴルファーのための協会の会員となる
例えば、不特定多数に向けてゴルフのレッスン動画を配信したり書籍を出したりすることは可能ですが、メールなどで個別の質問に応じることは規定に反します。金銭を得ずにゴルフの挑戦を楽しむという制限を守ると同時に、プロゴルファーの職域を侵害しないことが求められるのです。また、アマチュア資格を失っているのにもかかわらず、アマチュアゴルファーとして競技に参加することも問題とされます。
3.まとめ
最近の最終的な合格率は、毎回ほぼ3%のJLPGAプロテスト。ゴルフ技術はもちろん、予選から参加する場合は期間も長くなり、肉体的にも精神的にも強さが求められる「試練」といえるでしょう。また「プロテストに合格したらゴール」とはならず、ご存知の通り、むしろそこからがスタートです。
2024年度のプロテストも夏には第1次予選が始まり、JLPGAの公式サイトなどで結果が報じられるはずです。今季はぜひ、次世代のスター選手をプロテストから応援してみませんか。