第9回『ゴルフって日本発祥なの?』
ゴルフの秘密を多角的に探ってみましょう。
配信日時:2019年4月29日 06時00分
ゴルフを始めたときに、誰もが口にするのが「もっと早く始めれば良かった」というセリフです。ゴルフをしない人にとって、酸いも甘いも知り尽くした偉い人までゴルフに夢中になっているのは不思議なもので、ゴルフをしている人も夢中になりすぎて、ゴルフの魅力を説明できないという奇妙な現実もあります。ゴルフの秘密を探ってみましょう。
今回は、ゴルフは日本で生まれたというお話です。
ゴルフが遥か昔から行われていて、どこで始まったかは『諸説あり』で曖昧なのだという話はすでにしましたが……「ゴルフは日本発祥である!」と声高に主張していた時期があるのは、あまり知られていません。
第二次世界大戦前に、権威ある団体が正式に、ゴルフは日本で発祥した、と表明しました。平安時代に貴族で流行った蹴鞠がルーツだと主張しましたのです。蹴鞠は中国から輸入されて、日本独自の発展をしました。当時の文献をよく読むと鞠を蹴る競技ではなく、元々は棒状の用具を使って、鞠を打つ競技だった様子なのは、研究者たちの間では有名だったそうです。棒状の用具で丸い球を打つと言えばゴルフなのだ、というわけなのです。
どんなに考えても無理があります。この話には裏があるのです。
今回は、ゴルフは日本で生まれたというお話です。
ゴルフが遥か昔から行われていて、どこで始まったかは『諸説あり』で曖昧なのだという話はすでにしましたが……「ゴルフは日本発祥である!」と声高に主張していた時期があるのは、あまり知られていません。
第二次世界大戦前に、権威ある団体が正式に、ゴルフは日本で発祥した、と表明しました。平安時代に貴族で流行った蹴鞠がルーツだと主張しましたのです。蹴鞠は中国から輸入されて、日本独自の発展をしました。当時の文献をよく読むと鞠を蹴る競技ではなく、元々は棒状の用具を使って、鞠を打つ競技だった様子なのは、研究者たちの間では有名だったそうです。棒状の用具で丸い球を打つと言えばゴルフなのだ、というわけなのです。
どんなに考えても無理があります。この話には裏があるのです。
戦時色が強まっていく中で、「こんなときにスポーツなんてけしからん」という批判は、ゴルフも対象にしつつありました。また、敵国のスポーツを嗜むのは愛国心に欠けるという考え方も広まりつつあったのです。
日本のゴルファーたちは、ゴルフを守るために必死に知恵を絞りました。ゴルフをするたびに高額な金額の税金を支払うことで、国に貢献している証明にしようとしました。この作戦は見事に成功しました。驚くことに、このときに払い始めた税金は、21世紀になった現在でも、額は少額になったとはいえ、支払続けています。もう一つの作戦は、ゴルフ日本発祥説を世界中に向けて宣言することで、ゴルフは敵国のスポーツにあらず、という免罪符を手に入れるというものだったのです。これが、日本ゴルフ発祥説だったわけです。結果的に、戦争が終わるまで、日本においてゴルフは禁止にならずに済んだのです。
ということで、ゴルフ日本発祥説は、生き残りのための苦肉の策でした。戦後すぐに、この説は撤回されて、そのままゴルフ史のタブーになったのです。
でも、個人的には、そこまでしてゴルフを守ろうとした先人を誇りに思うのです。ゴルフのためなら、どんな理不尽にも耐えて、馬鹿になれといわれれば馬鹿を演じきるというスピリットは、21世紀にも引き継がれていると信じたいのです。
戦時中に捕虜になって本場のゴルフを見た偉い人の勘違いが悲喜劇になるという話は面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages
日本のゴルファーたちは、ゴルフを守るために必死に知恵を絞りました。ゴルフをするたびに高額な金額の税金を支払うことで、国に貢献している証明にしようとしました。この作戦は見事に成功しました。驚くことに、このときに払い始めた税金は、21世紀になった現在でも、額は少額になったとはいえ、支払続けています。もう一つの作戦は、ゴルフ日本発祥説を世界中に向けて宣言することで、ゴルフは敵国のスポーツにあらず、という免罪符を手に入れるというものだったのです。これが、日本ゴルフ発祥説だったわけです。結果的に、戦争が終わるまで、日本においてゴルフは禁止にならずに済んだのです。
ということで、ゴルフ日本発祥説は、生き残りのための苦肉の策でした。戦後すぐに、この説は撤回されて、そのままゴルフ史のタブーになったのです。
でも、個人的には、そこまでしてゴルフを守ろうとした先人を誇りに思うのです。ゴルフのためなら、どんな理不尽にも耐えて、馬鹿になれといわれれば馬鹿を演じきるというスピリットは、21世紀にも引き継がれていると信じたいのです。
戦時中に捕虜になって本場のゴルフを見た偉い人の勘違いが悲喜劇になるという話は面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages