第10回『108ミリの偶然に感謝って何?』
ゴルフの秘密を多角的に探ってみましょう。
配信日時:2019年5月6日 06時00分
ゴルフを始めたときに、誰もが口にするのが「もっと早く始めれば良かった」というセリフです。ゴルフをしない人にとって、酸いも甘いも知り尽くした偉い人までゴルフに夢中になっているのは不思議なもので、ゴルフをしている人も夢中になりすぎて、ゴルフの魅力を説明できないという奇妙な現実もあります。ゴルフの秘密を探ってみましょう。
今回は、108ミリという偶然に感謝というお話です。
108という数字を聞いたときに、日本では多くの人が『煩悩』を思い浮かべます。煩悩は、仏教用語で、人の心身を惑わせる妄想や欲望のことで、その数は108あると言われています。除夜の鐘の数という人もいるでしょう。除夜の鐘は、煩悩の数に由来するという説もあります。スコットランドで育ったゴルフにおいて、108という数字に特別な意味はありません。
ゴルフというゲームの目的は、ボールを打って、ホール(穴)に入れることです。ゴルフコースにおいて、規則で大きさが決められているものは、ほんの少しだけしかありません。その内、最も有名なのはホールの大きさです。直径4と4分の1インチなのです。
何とも中途半端に感じる大きさですが、つい百数十年前まではホールの大きさに厳密な決まりがなく、コースによっても、同じコースでも日によって、場合によっては、朝と午後によっても、ホールの大きさが変わってしまう現象が起きていました。
今回は、108ミリという偶然に感謝というお話です。
108という数字を聞いたときに、日本では多くの人が『煩悩』を思い浮かべます。煩悩は、仏教用語で、人の心身を惑わせる妄想や欲望のことで、その数は108あると言われています。除夜の鐘の数という人もいるでしょう。除夜の鐘は、煩悩の数に由来するという説もあります。スコットランドで育ったゴルフにおいて、108という数字に特別な意味はありません。
ゴルフというゲームの目的は、ボールを打って、ホール(穴)に入れることです。ゴルフコースにおいて、規則で大きさが決められているものは、ほんの少しだけしかありません。その内、最も有名なのはホールの大きさです。直径4と4分の1インチなのです。
何とも中途半端に感じる大きさですが、つい百数十年前まではホールの大きさに厳密な決まりがなく、コースによっても、同じコースでも日によって、場合によっては、朝と午後によっても、ホールの大きさが変わってしまう現象が起きていました。
19世紀後半のある日、近代ゴルフの父で最も偉大なゴルファーとして尊敬されているトム・モリス・シニアが、ホールは同じ大きさでプレーするほうが良いと判断して、試しに水道管を切って埋め込んでみたらちょうど塩梅が良かったのです。その大きさは一気に世界中に広まっていったというお話が有名です(いつものように諸説ありです)。その水道管の内径が直径4.25インチで、現在でも変わらないというわけです。
実は、ホールの直径については、何度も変更する案が出たことがあります。そのたびに『いやいや、この大きさがゴルフを面白くしているのだよ』と却下されてきました。ゴルフをするとわかりますけれど、ホールの大きさは絶妙なのです。大きすぎず、小さすぎず。その大きさ故の泣き笑いのドラマが、全てのゴルファーに用意されているといっても過言ではありません。
直径4.25インチは、108ミリです。ただの数字の偶然ですが、ゴルフというゲームは突き詰めれば欲望と妄想と自分の戦いでもあります。この国の多くのゴルファーが108あるという煩悩と結びつけて、ニヤニヤしてしまうというわけです。ゴルフは単なる球打ちの球技ではなく、心の弱さを試すゲームだから尚更なのです。そして、本当の上級ゴルファーは、そういう偶然に心から感謝をしてしまうのです。
ホールに挿してある旗を通称ピンと呼ぶのはなぜかという話も面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages
実は、ホールの直径については、何度も変更する案が出たことがあります。そのたびに『いやいや、この大きさがゴルフを面白くしているのだよ』と却下されてきました。ゴルフをするとわかりますけれど、ホールの大きさは絶妙なのです。大きすぎず、小さすぎず。その大きさ故の泣き笑いのドラマが、全てのゴルファーに用意されているといっても過言ではありません。
直径4.25インチは、108ミリです。ただの数字の偶然ですが、ゴルフというゲームは突き詰めれば欲望と妄想と自分の戦いでもあります。この国の多くのゴルファーが108あるという煩悩と結びつけて、ニヤニヤしてしまうというわけです。ゴルフは単なる球打ちの球技ではなく、心の弱さを試すゲームだから尚更なのです。そして、本当の上級ゴルファーは、そういう偶然に心から感謝をしてしまうのです。
ホールに挿してある旗を通称ピンと呼ぶのはなぜかという話も面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages