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打打打坐 第2回【グリーンは僕らを待っている!】

打打打坐 第2回【グリーンは僕らを待っている!】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

配信日時:2020年4月24日 15時00分

(写真・Getty Images)
(写真・Getty Images)

古(いにしえ)のグリーンを想う

2020年春。愛する人のために『Stay Home』というキャンペーンで、多くのゴルファーがゴルフを自粛しています。新型コロナウィルスは、したいときにゴルフができることが当たり前ではなく、本当は幸せなことなのだということを21世紀のゴルファーたちに教えてくれたような気がします。

ゴルフコースは自粛要請業種に指名されていないエリアが多いので、よく調べてみると、オープンしてお客様を待っているコースがたくさんあることがわかります。ゴルフは3密とは真逆で、安全に楽しめるので、隠れるようにしてゴルフコースに通っているゴルファーも、それなりの数になるという話もあります。

第二次世界大戦を経験しているオールドゴルファーから、昭和の時代に聞いたことがありました。

「戦争中も、グリーンに出ていた強者がいたのは、日本人ゴルファーの誇りだ」

戦争中の米国の軍の記録を調べてみても、日本国内でゴルフをしていた人がいたという報告を米軍の戦闘機乗りが複数していますし、占領後に接収することを考慮して、ゴルフコースを空爆しないように指示した記録もあります。

新型コロナウィルスとの戦いは人類との戦争だと、諸外国のリーダーは認識して対応しています。戦時中だからこそ、ゴルフを守る一人になれるかどうか? 問われているような気がしてなりません。

ラブ・オブ・ザ・グリーンの意味は?

話を少し戻しましょう。

「グリーンに出ていた強者……」の台詞です。

あれ? 間違いでは? と疑問に思ったでしょうか。

コースに出る、とか、ゴルフに行く、とか、表現は色々ありますが、21世紀において、グリーンに出るという表現を使うゴルファーは皆無です。だって、グリーンは、グリーンで、コースではないですから、練習グリーンに誘われていると誤解されるのが関の山です。

昔過ぎて、正確にはわからないゴルフ黎明期において、ゴルフはグリーンでプレーするものだったのです。原始のゴルフは、現在のパットパットゴルフみたいなものだったようです。現在のグリーンのように芝生を刈り込めるようになったのは19世紀末と割と最近のことで、昔はフェアウェイに穴を空けて、ここがホールね、みたいな感覚でゴルフをしていたのです。

2018年までは、ゴルフ規則で使用される用語の中にその名残りがありました。「ラブ・オブ・ザ・グリーン(Rub of the Green)」という用語は、コース内でプレーヤー以外に偶然ボールが動かされてしまうことを意味していました。ここに出てくるグリーンは、まさに、ゴルフコースの広い範囲のことなのです。

昭和50年代までは、少しキザに格好付けて「グリーンに出ようか」と言葉にするオールドゴルファーが確実に存在していました。グリーン=コースというわけなのです。

グリーンを好きになろう!

現在のゴルフでは、グリーンはパッティングをしてホールにボールを沈める場所です。

初心者の頃は、グリーンはオアシスでした。ショットに比べれば、パットはやさしいから、グリーンに乗るとホッとするというわけです。初心者の頃が、最もパットが決まっていたと懐かしむゴルファーは案外と多いのです。

ゴルフをすればするほど、パットは難解さを増していき、邪念が増えていくものです。ゴルフ歴が長いゴルファーにとって、グリーンは謎解きを披露するサスペンスのラストシーンで、スポットライトを浴びる檜舞台に感じるようになります。

刈り込まれて絨毯のようになったグリーンを庭に作ろうとしても、なかなか上手くいきません。あまり気にせずに使用していますが、ゴルフコースのグリーンは、人類の英知が結集した特別な場所なのです。想像を絶する時間と労力と科学力を使って、転がりが良いね、とゴルファーが喜ぶグリーンは作られています。

家でもできる練習として、パターマットでパットを鍛えているゴルファーはたくさんいると推測しますが、こういう機会だからこそ、同じぐらいの熱意でグリーンを好きになる努力をすることをオススメします。

例えば、ベントグリーンと一括りにしている洋芝のグリーンの芝種を覚えるだけでも、次に行くゴルフコースのグリーンに興味が増します。昭和の時代に洋芝といえば、ペンクロスという芝種一色だったといっても過言ではありませんが、数十年が経過して、現在はペンクロスという芝生の種は流通していません。何世代も進化しているのです。種で増やせる洋芝の場合、使用しているペンクロスのグリーンの上に新しい芝種を撒いて、何年もかけてグリーンを新しく更新していくのは、知らないだけで多くのグリーンで行われています。

芝生管理のプロであれば、1メートルぐらいの高さから見ても、グリーンの芝種を言い当てることができます。葉の幅の違いや、緑色の色合いや発色の違いで、わかるそうです。新しい芝種のほうが、傾向として葉の幅が細めだったり、発色に特徴があったりすると聞きました。

ただ刈り上げることで速度が変わるのではなく、いかに平らにするかが、グリーンの速さを生む出すポイントになります。平成の30年間で、日本のグリーンの平均速度がかなり上がったことは、昔の速さと比較できないから理解していないゴルファーが多いですが、手にしているパターは新しい速さに合わせて進化しています。グリーンを好きになって、いたわる気持ちで接するようにすれば、今まで見えなかったグリーンの色々な顔が見えてくるはずです。

春と秋に、グリーン面に穴を空けたり、切れ目を入れたりするメンテナンスも、参ったなぁ、とガッカリするだけではなく、興味を持って観察する対象になります。それだけでも、ワンランク上のゴルファーになった気になれます。

なかなかゴルフに行こうと言いづらい世の中だとしても、ゴルフコースがある限り、近い将来、ゴルフに行ける日は来ます。

ゴルフに行こう、ではなく、オールゴルファーに敬意を払いつつ、グリーンに行こう、と声を掛け合うことを想像しましょう。想像できることのほとんどは、実行できるものです。

グリーンは、僕らを待っているのです!

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
連載

ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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