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打打打坐 第3回【お一人様ゴルフってどうなのよ?】

打打打坐 第3回【お一人様ゴルフってどうなのよ?】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

配信日時:2020年5月1日 15時00分

お一人様ゴルフの歴史

手元にある最も古いルールブックは、1996年のものです。20世紀末。タイガー・ウッズが、史上初の全米アマ三連覇を達成し、8月にプロ宣言、10月に5試合目でラスベガス招待でツアー初優勝したのが1996年です。

古いゴルフ規則を開けば、今はなき、“第1章 エチケット”の2ページ目に『コースの先行権』という項目があります。要約すると、以下の3つが書かれています。

■原則として、2球でプレーする組は、3球、または、4球でプレーする組に優先し、パスする権利があるべき
■単独のプレーヤーは先行権を持たず、何ら主張できない
■1ラウンドする組は、1ラウンド未満しかプレーしない組をパスする権利がある

注目したいのは、2つめの内容です。

お一人様ゴルフは、昔から存在はしていました。とはいっても、かなり特別であることと、全く奨励はされていないことがわかります。

現在のゴルフ規則では、規則5.6「不当の遅延;速やかなプレーのペース」が、それに代わるものになっていますが、プレーヤーの人数にかんする明確な記載はありません。名指しされていないから、お一人様ゴルフが市民権を得たと考えるのは早計です。例えば、お一人様ゴルフでのスコアは、ハンディキャップの申請などで使用したとしても、正規のスコアとは認められません。ゴルフは複数でプレーしてこそゴルフになるというフォーマットは変わっていないのです。

しかし、2020年春。例外的な処置として、お一人様ゴルフでのスコアでハンディキャップ申請を受け入れることをエリアの団体で認めても良い、という通達が、R&AとUSGAで出されました。

新型コロナウィルスの流行で、お一人様ゴルフはゴルフの歴史上初めて、時限的とはいえ、市民権を得ようとしているのです。

お一人様ゴルフの実態

約40年前、高校生のジュニアゴルファーだった僕は、ある試合の練習ラウンドでお一人様ゴルフを経験しました。ゴルフ部ではなく、公立の学校に通いながらゴルフをしていた関係で、指定練習日なのに組み合わせからあぶれてしまったからです。

キャディーマスターが事前に各組のキャディーさんに知らせてくれて、一人なのに、次々にパスさせてくれました。プレッシャーだったのは、ホールごとではなく、追いつくと、前の組の一般のプレーヤーが打つのをやめて脇に避けて、「打って良いよー」と声をかけられて、打っていくわけです。基本的には、最低2回は打つのを見られるわけで、緊張しましたが、結果としては、本番で出せば優勝争いできるぐらいのスコアでプレーできたのです。

「ありがとうございます」とバッグを担ぎながら、小走りで、パスさせてくれた大人たちにお礼を言うのですが、嫌な顔を見せずに、全ての人たちが「良いショットを打つね」「今のはナイスショットだったよ」「試合も頑張れよ」等々、温かい言葉をかけてくれたのです。(ちなみに、本番は1打差で予選落ちでしたが)

温かい気持ちになったのですが、お一人様ゴルフをしながら、そして、終わってから電車で帰路についたときも、『二度とやりたくない』と何度も何度も思ったのです。プレー中に深い孤独感を感じたことが理由でした。温かい言葉で励まされても、やるせ背ない気持ちに押し潰されそうだったのです。

コースで試打をしてインプレを書くことを生業としているので、実は、2年ぐらい前から年に数回、一人でラウンドすることがあります。悪天候で予定通りに撮影ができないのに、試打クラブの返却期日が迫っているときなどに、やむを得ずお一人様ゴルフをするのです。

面白いのは、平日限定でお一人様ゴルフができるゴルフコースだと、例外なく、他にもお一人様でプレーしている人が必ずいるのです。すれ違ったりするときに、さり気なく観察しますが、みなさん、淡々とプレーしています。練習場感覚なのだと思います。

時は流れました。それでも僕は、お一人様ゴルフを好んでやろうとは思わないのですが……
不思議なのですけれど、練習感覚でお一人様ゴルフをしている人が複数いると、一緒にプレーしているような連帯感が生まれるのです。最初のお一人様ゴルフで感じた絶望は、全く感じることはありません。

やむを得ない、と言いつつ、年に何度かお一人様ゴルフをするのは、勝手な仲間意識に支えられているのかもしれません。

お一人様ゴルフもゴルフの内

お一人様ゴルフが認められなかった最大の理由は、本来なら仲間でプレーできるはずのスタート枠を一人で独占してしまうからです。

現在は、多くの場合で、お一人様ゴルフはそれなりの追加料金があります。ゴルフコースの経営としては、空いたままのスタート枠よりも、二人分に近い料金で枠が埋まるほうが嬉しいわけです。土日や祝日は、一人ゴルフを受け付けないゴルフコースでも、二人分を払うからと交渉すれば、お一人様ゴルフができることもあるようです。

不条理な部分を数的に埋め合わせれば、お一人様ゴルフを禁止する理由は徐々になくなっていくのです。また、2020年春の新型コロナウィルスのパンデミックで、感染リスクを下げてゴルフをする方法の一つとして、お一人様ゴルフが注目されています。

お一人様ゴルフもゴルフの内です。
練習感覚でプレーしてみようと思えば、楽しめるかもしれません。

注意しなければならないのは、普通のゴルフと一緒だと言うことです。お一人様ゴルフは練習だから、と、ミスショットしたら、そこから打ち直したり、何球も打ったり、仲間とゴルフする際にできないことをすることが許されるわけではないのです。そういう御法度な行為をする人がいれば、せっかく注目を浴びているお一人様ゴルフの未来はなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、お一人様ゴルフもゴルフなのです。

ゴルフの楽しみ方は、2019年のルールの大改正を機に、種類を増やしていくと推測されています。この時代にゴルフをしているゴルファーの責任は重大です。無意識に時代の先頭を走っているゴルファーの一人になってしまうことがあるからです。

お手本になるつもりで、お一人様ゴルフをしてみることをオススメします。やってみなければ、わからないことがまだまだたくさんあることを、ゴルフは教えてくれるはずです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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