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「チャコ」から「シブコ」へ 〜LPGAツアー70年、日本人女子プロゴルファー 栄光の軌跡〜
コロナショックの影響から世界が復帰を果たしつつある中、米LPGAツアーは7月に再開の予定だ。昨年渋野日向子の全英AIG女子オープン優勝で一気に世間の耳目を集めた米LPGAツアーに挑戦してきた日本人プレーヤーの歴史と現在挑戦中の選手の現況を、在米ゴルフジャーナリストが解説する。 文・武川玲子 写真・Getty Images
配信日時:2020年5月20日 02時10分
世界ランキング4位の畑岡奈紗がスタートダッシュ
あの小さな体のどこからパワーが出てくるのだろうか? その秘密はどっしりと構える下半身、大腿筋の強さは畑岡の自慢でもある。さらに「オフにはシーズン中にできない上半身も鍛えたい」と話していたからトレーニングの成果だろうか、今季は開幕戦から得意なアイアンショットの精度が抜群、1月の開幕戦から2週連続で2位、ポイントレースも2位と好調な4年目を迎えている。
【5/31(日)午後0:30放送】世界で戦う日本人選手6人の「今」〜LPGA女子ゴルフツアー〜(WOWOW)
米ツアー通算3勝、メジャー制覇を目標に掲げる21歳だが、決して順風満帆に来たわけではない。1年目は慣れない外国暮らしを一人で転戦、寂しくて涙した日もあった。シード落ちの憂き目を見たが再び予選会挑戦と気持ちのパワーも持ち合わせる。その強さは2年目に大きく開花する。18年にウォルマートNWアーカンソー選手権で初優勝、KPMG全米女子プロゴルフ選手権ではプレーオフで敗れたが2位とその実力の高さを発揮した。19年も春先に早々とキア・クラシックで勝利を挙げるが、今度はメジャー制覇へのプレッシャーか、あるいは気負いだろうか、メジャー5大会中3大会で予選落ちと厳しい結果に直面、その最中に日本ツアーから参戦した渋野日向子が全英AIG女子オープンで勝利と先を越された。彼女の勝利を祝いつつも「正直、悔しかった」と胸中を吐露する場面も。そんな苦難を乗り越えて迎えた新シーズンは心身共に強さを増したというのが大きな印象だった。新型コロナウイルス感染でツアー中断という厳しい状況にはあるが、再開後には再び好発進となることを期待したい。
【5/31(日)午後0:30放送】世界で戦う日本人選手6人の「今」〜LPGA女子ゴルフツアー〜(WOWOW)
米ツアー通算3勝、メジャー制覇を目標に掲げる21歳だが、決して順風満帆に来たわけではない。1年目は慣れない外国暮らしを一人で転戦、寂しくて涙した日もあった。シード落ちの憂き目を見たが再び予選会挑戦と気持ちのパワーも持ち合わせる。その強さは2年目に大きく開花する。18年にウォルマートNWアーカンソー選手権で初優勝、KPMG全米女子プロゴルフ選手権ではプレーオフで敗れたが2位とその実力の高さを発揮した。19年も春先に早々とキア・クラシックで勝利を挙げるが、今度はメジャー制覇へのプレッシャーか、あるいは気負いだろうか、メジャー5大会中3大会で予選落ちと厳しい結果に直面、その最中に日本ツアーから参戦した渋野日向子が全英AIG女子オープンで勝利と先を越された。彼女の勝利を祝いつつも「正直、悔しかった」と胸中を吐露する場面も。そんな苦難を乗り越えて迎えた新シーズンは心身共に強さを増したというのが大きな印象だった。新型コロナウイルス感染でツアー中断という厳しい状況にはあるが、再開後には再び好発進となることを期待したい。
横峯さくら、上原彩子、そして野村敏京とベテラン勢は粘り強さを発揮する
あの横峯さくらがまさか米国に渡るとは誰が想像できただろうか? 日本女子ツアーで一時代を築いた横峯にとって大きな転機となったのは14年、宮里藍、宮里美香らと組んで参戦したLPGAツアーの国と地域別対抗のULインターナショナル・クラウン。この大会でLPGAツアーに魅了されると渡米を決意、その年の秋には予選会を突破した。翌年から夫でメンタルコーチも務める森川陽太郎氏と世界を転戦する日々を送る。盟友の宮里藍が現役引退をしてしまっても、「アメリカで勝ちたい」という思いで34歳は走り続けている。
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米LPGAツアー2019公式写真より。上原彩子は大舞台で強さを発揮する
一方ツアー8年目を迎える上原は36歳、毎年底力を発揮してシード権を守り続けている。「私って本当に幸運なんです」と天真爛漫な笑みをみせる。上原が目指すものはもちろん米ツアー優勝、17年のエビアン・チャンピオンシップ、18年のANAインスピレーションで優勝争いに絡むなど大舞台で強さを発揮する部分も持ち合わせる。また野村敏京も腰痛のケガに苦しみながらもシードを守り続けている。16年にツアー2勝を挙げるとリオデジャネイロ五輪では日本代表として参戦、4位と惜しくもメダルに届かなかったが大活躍だった。昨秋はゆっくりと休養をとり今年は2月からツアー参戦し完全復活を目指す。
注目の若きパワー、山口すず夏とルーキーの河本結に注目
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米LPGAツアー2019公式写真より。山口すず夏は過酷なQシリーズを2年連続で突破
畑岡に続けと海を渡ったのは19歳の山口すず夏と21歳の河本結。彼女たちは予選会が8日間の長丁場となったQシリーズ(予選会)を見事に勝ち上がった実力者だ。
山口は一年目の19年シーズンでは苦戦を強いられた。デビュー戦のISPSハンダ・ヴィック・オープンでは22位と好感触を得たのだが、結局これが1年のベストとなってしまった。畑岡と同様にアメリカ生活にアジャストするには時間が必要なのかもしれない。シードを落としても再びQシリーズに立ち向かう根性は見上げたもので、父と二人で転戦する山口は底抜けに明るい。今季はそろそろその力を発揮できる時期と秘かに期待を寄せている。
山口は一年目の19年シーズンでは苦戦を強いられた。デビュー戦のISPSハンダ・ヴィック・オープンでは22位と好感触を得たのだが、結局これが1年のベストとなってしまった。畑岡と同様にアメリカ生活にアジャストするには時間が必要なのかもしれない。シードを落としても再びQシリーズに立ち向かう根性は見上げたもので、父と二人で転戦する山口は底抜けに明るい。今季はそろそろその力を発揮できる時期と秘かに期待を寄せている。
同じくQシリーズを9位で突破してきたのが河本。デビュー戦となった1月のゲインブリッジLPGAボカ・リオでは堂々の8位と鮮烈なルーキーシーズンの幕開けだった。現在賞金ランキング30位、メジャーにも出場できる順位に付けているから、ツアー再開後には日本勢の台風の目になるかもしれない。
メジャー大会には渋野日向子も参戦予定。さらに来季は米LPGAツアー参戦計画 で“世界のシブコ”を目指す
初の海外参戦となった全英AIG女子オープンで優勝を飾った渋野日向子。その当時は「米ツアー参戦は100%ない」と言い切ったが、やはり欲というものは出てくるものだ。全英勝利で得たツアーメンバー資格は行使しなかったが、来季以降には米LPGAツアーにフル参戦したいという未来図を創った。
7月にツアーが再開されると早々にKPMG全米女子プロゴルフ選手権、8月にはエビアン・チャンピオンシップ、ディフェンディングとして出場する全英AIG女子オープン、9月にANAインスピレーション、そして12月には全米女子オープンとメジャー大会が目白押し。まずはメジャー大会にスポット参戦で“スマイリング・シンデレラ”を再び見られる日は遠くなさそうだ。
7月にツアーが再開されると早々にKPMG全米女子プロゴルフ選手権、8月にはエビアン・チャンピオンシップ、ディフェンディングとして出場する全英AIG女子オープン、9月にANAインスピレーション、そして12月には全米女子オープンとメジャー大会が目白押し。まずはメジャー大会にスポット参戦で“スマイリング・シンデレラ”を再び見られる日は遠くなさそうだ。
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