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    打打打坐 第9回【早朝ゴルフで浄化される】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2020年6月12日 06時00分

    • ゴルフライフ
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    夏至が近づくと思いだす

    新型コロナウィルスの流行で、世界中が混乱している中でも、暦は粛々と進んでいきます。6月になると、ゴルフをする人として意識するのが『夏至』です。

    夏至は、夏に至ると書く文字のごとく、その日から夏ですよ、という日もことです。2020年は6月21日が夏至です。一般的には、1年で昼の時間が最も長い日、ということになっています。

    僕は何度か熱中症で深刻な状態になって、ERに運び込まれたりもした結果、夏場のゴルフはドクターストップになっています。仮に医師が、やっても良い、と許可を出したとしても、真夏の炎天下の中ではハーフもできないと思います。熱中症は一度重症化すると、耐性がついて強くなるのではなく、逆に短時間で一気に重症化することが多くなるので注意が必要だからです。

    それも、秋の新製品の試打ラウンドは夏に行うので、夏でもゴルフコースには出かけていきます。できるだけ早くスタートして、涼しい内に一気に回ってしまうという作戦です。重宝するのが、日の出ゴルフとか、早朝ゴルフです。

    例えば、2020年の夏至の日の東京の日の出は4時25分です。日の出後、10分もすればボールは見えるようになりますので、スタート可能になります。スイスイと素早くプレーすれば、一般のスタート予約時間前の6時台にハーフターンできますので、9時前にラウンド終了となります。

    日の出ゴルフが可能なコースは、限られていますが、日の出直後のコースは清々しくて気持ちの良いものです。一緒の朝を迎えた、まだ隣で寝ている恋人を先に起きて見守るときの愛おしさのような、僕だけが知っている顔があるという充実感をゴルフに持ち込める貴重なシーンを未経験なのはもったいないです。

    夏至が近づくと、日の出ゴルフの季節が来たと、ワクワクしてしまいます。

    良いことばかりじゃないから面白い

    日の出ゴルフが可能なコースは、普通のスタート時間のプレー代よりも、日の出ゴルフのほうが安く設定されていることが多いです。まさに一石二鳥じゃないか、ということで、日の出ゴルフファンが激増しているかというと…… 日の出ゴルフは経験してみると、好き嫌いがハッキリと分かれるものでもあるのです。

    一つは、早起きの得手不得手です。遠いコースに行く場合は、家を出るのは早朝ではなく、真夜中にカテゴライズされる時間になります。

    もう一つは、濡れることです。早朝のゴルフコースは、どこもかしこも朝露で溢れているのです。地面に触れる全てのものを、ビショビショにします。雨でもないのに、ゴルフシューズは濡れて、防水機能が劣るシューズなら靴下までぐっしょりです。

    また、朝露でボールは転がりが悪くなります。グリーンには、足跡とボールの転がった跡が残ります。ちなみに、僕は「老若男女、濡れてこそ華!」という訳のわからないスローガンを掲げて、非日常的なゴルフの極みであると面白がってプレーすることにしています。

    最後の一つは、二つの鉄則があることです。まずは、プレーが速いことがマストであることです。それはハーフ120分以内とかの標準記録的な話ではなく、前の組に離されずに、プレー速度を調整できるか? というレベルの話です。前の組に離されて、後ろ組をシーンごとに待たせている場合は、スマートにパスさせる技量も不可欠です。

    ゴルフは心配りを根幹にして成り立っているゲームですから、簡単な話なのですが、井の中の蛙になっていて、自分のプレーが本当に速いのかがわからない人が多いのです。

    そして、メンテナンス作業の邪魔をしない、という決まりを守ることです。日の出ゴルフの場合、グリーンの芝刈りやバンカー均しなどのメンテナンス作業をしている時間にプレーしますので、スタッフが作業しているところを見たら、急かすことなく作業が終わるまで、その場で待機しなければなりません。待たされるのが苦痛で嫌だという人も、少なからずいるのです。

    まあ、百聞は一見にしかず。未経験の方は、一度やってみることをオススメします。

    良いことばかりではないところが、日の出ゴルフの魅力でもあるのです。

    蛇足ですが、ゴルフコース写真の多くは、日の出直後と日の入り前のものが多いのです。理由は低い太陽の位置だから見える長い影が、コースをより立体的に美しく見せるからです。早起きは三文の得、と言います。感動するシーンは、プライスレスです。

    夏ゴルフも修行だと思えば楽になる

    早朝ゴルフは、日の出ゴルフより少し範囲が広くなり、一般のスタート時間の前にプレーするという定義になります。物理的に無理があるので、ハーフのみと決められていることも多々あります。

    夏ゴルフは暑くて、体にも良くないので、秋ゴルフが始まるまでゴルフはお休みだと決めている人もいます。逆に、元野球少年だったりする昭和生まれのゴルファーは、夏ゴルフこそが、死ぬほど汗をかく快感に溢れていると歓迎するケースもあります。

    夏ゴルフとよく冷えたジョッキの生ビールが連動している人にとって、レストランの機能に制約があるところが多い2020年の夏ゴルフは残念だったりするのかもしれません。

    「あなたにとって、ゴルフとは何でしょうか?」

    と聞かれることがあります。

    「修行です」

    と回答します。

    自らを高めるためにやっていると信じ込まなければ、やりきれない理不尽にゴルフは溢れているからです。何があっても腐らず、特別なことがあっても浮かれず、ただひたすらに淡々とボールを打って進んでいくのが、自分の理想のゴルフのスタイルです。

    夏ゴルフだけではなく、凍えてプレーする真冬ゴルフも、よくよく考えれば、何の得にもならずに、お金と時間を使って遊んでいるだけの狂気なのです。修行だと開き直らずに、正気を保つのは無理です。ゴルフは自らを高めるための修行だと考えれば、全てのことに我慢ができるような気がしてきます。

    夏至の頃から、9月ぐらいまでが、早朝ゴルフや日の出ゴルフの季節です。三密とは無縁のゴルフは、感染のリスクが少ない数少ないレジャーだと言えます。早朝ゴルフも、日の出ゴルフも、最小限のスタッフしかいませんから、より安全なゴルフということになります。

    僕は日の出ゴルフをするたびに、自分が浄化されたような気分になります。朝露で濡れて、ビッショリになりながらプレーし続けて、昇る朝日の中であの世と現世の狭間のような光景を見て、夢中になってボールを打ち進めた先に何もない虚しさに気が付かないフリをして、それでも、もしかして、という自分の中にある、ほんの少しの希望を自覚することができるからです。

    暑さから逃れた先にあった日の出ゴルフができる期間は、あっという間に過ぎていきます。チャンスを逃さないことは、ゴルファーとしても幸福になる第一歩なのです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
    連載

    ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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