打打打坐 第10回【雨天決行は伝説となりけり】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時:2020年6月19日 06時00分
24時間、戦えますか?
関東が梅雨入りしたと思われるという曖昧な宣言が出た週末。土砂降りの中でゴルフをしました。帰宅後、思い立って、調べてみると、過去1年に届いたゴルフコンペのお誘いは、41通ありました。
想定した通りでした。41通の中で、『雨天決行』と明示されているものは6つだけで、4通は『小雨決行』となっていました。そして、11通には、わざわざ、『雨天中止』とはっきりと書かれていました……
昭和終わり頃、雨だからゴルフをやめるという選択肢は、存在はしていましたが、選択できないものでした。ゴルフの約束は、何があっても守られるものであり、雨ぐらいでキャンセルするような人間は信用できない自己中心的な輩だと判断されたからです。逆に言えば、そのぐらいの覚悟がある人たちだけに、ゴルフの門戸は開かれていたとも言えます。
社用族が主役でしたから、個人の主張や考えよりも、企業を代表してゴルフしているというプライドと責任を背負っていたのです。高度成長期からバブルに向かっていく中で、猛烈サラリーマンは、まさに正義の味方でした。テレビCMの“24時間戦えますか?”というコピーが流行語になった時代です。現在であれば、ブラック企業というレッテルを貼られるような働き方に、誰も疑問を抱かなかったのです。
それらの背景を考えれば、ゴルフは雨天決行が当たり前! という常識は、特別厳しいものではありませんでした。
令和2年の梅雨。新型コロナウィルスの自粛ムードは、まだまだ有効なこともあって、雨天のゴルフコースでプレーしているゴルファーはまばらでした。その半数ぐらいが、かつて猛烈サラリーマンと呼ばれたであろうオールドゴルファーだったのです。
土砂降りをものともせずに、4人一組でプレーしているオールドゴルファーたちを見ながら、なんともいえない気分になって、雨天決行について考えてみることにしました。
想定した通りでした。41通の中で、『雨天決行』と明示されているものは6つだけで、4通は『小雨決行』となっていました。そして、11通には、わざわざ、『雨天中止』とはっきりと書かれていました……
昭和終わり頃、雨だからゴルフをやめるという選択肢は、存在はしていましたが、選択できないものでした。ゴルフの約束は、何があっても守られるものであり、雨ぐらいでキャンセルするような人間は信用できない自己中心的な輩だと判断されたからです。逆に言えば、そのぐらいの覚悟がある人たちだけに、ゴルフの門戸は開かれていたとも言えます。
社用族が主役でしたから、個人の主張や考えよりも、企業を代表してゴルフしているというプライドと責任を背負っていたのです。高度成長期からバブルに向かっていく中で、猛烈サラリーマンは、まさに正義の味方でした。テレビCMの“24時間戦えますか?”というコピーが流行語になった時代です。現在であれば、ブラック企業というレッテルを貼られるような働き方に、誰も疑問を抱かなかったのです。
それらの背景を考えれば、ゴルフは雨天決行が当たり前! という常識は、特別厳しいものではありませんでした。
令和2年の梅雨。新型コロナウィルスの自粛ムードは、まだまだ有効なこともあって、雨天のゴルフコースでプレーしているゴルファーはまばらでした。その半数ぐらいが、かつて猛烈サラリーマンと呼ばれたであろうオールドゴルファーだったのです。
土砂降りをものともせずに、4人一組でプレーしているオールドゴルファーたちを見ながら、なんともいえない気分になって、雨天決行について考えてみることにしました。
世界中で雨は降るけれど
ゴルフが育ったスコットランドは、1日に四季があると言われます。これは、お天気が変わりやすいという環境をカッコイイ表現をして、伝えている一文です。
ゴルフだけではなく、サッカーやラグビーなど、イギリスで育ったゲームが、雨天決行なのは、コロコロと変わる天候に振り回されては、やっていられないからです。
日本は先進国の中で、ダントツで年間雨量が多い国です。本場のスコットランドから来日した人が、雨が一日中降ることが珍しくないことに驚くのは、本場では雨の多くは、通り雨のように短時間で済むものだからです。
アメリカでは、雨量が多いエリアにゴルフコースを作りません。一般的なゴルフコースは、原則として、雨天になるとクローズにしてしまうので、雨中でプレーする習慣がなく、雨量が多いエリアにゴルフコースを作っても経営が成り立たないからです。
日本のコースは、雨が降ってもプレーできるように、コースの土台に高度な排水機能を持たせます。これは、日本独特の文化です。2019年に国内で初めて行われた米ツアー“ZOZO チャンピオンシップ”が、連日の豪雨で、アメリカ本国なら競技が不成立になるような状態なのに、一部のホールが水没しただけで、最終的に競技が成立したことが、賞賛されました。
歴史を紐解いたり、世界中の事情を調べて、ゴルフの雨天決行についての是非を問うのは本意ではありません。自らが審判であるゲームであることは、ゴルフの誇りです。現在の自分で判断できるという環境を意識して、雨天決行か、雨天中止か、それぞれが決めれば良いのです。
ゴルフだけではなく、サッカーやラグビーなど、イギリスで育ったゲームが、雨天決行なのは、コロコロと変わる天候に振り回されては、やっていられないからです。
日本は先進国の中で、ダントツで年間雨量が多い国です。本場のスコットランドから来日した人が、雨が一日中降ることが珍しくないことに驚くのは、本場では雨の多くは、通り雨のように短時間で済むものだからです。
アメリカでは、雨量が多いエリアにゴルフコースを作りません。一般的なゴルフコースは、原則として、雨天になるとクローズにしてしまうので、雨中でプレーする習慣がなく、雨量が多いエリアにゴルフコースを作っても経営が成り立たないからです。
日本のコースは、雨が降ってもプレーできるように、コースの土台に高度な排水機能を持たせます。これは、日本独特の文化です。2019年に国内で初めて行われた米ツアー“ZOZO チャンピオンシップ”が、連日の豪雨で、アメリカ本国なら競技が不成立になるような状態なのに、一部のホールが水没しただけで、最終的に競技が成立したことが、賞賛されました。
歴史を紐解いたり、世界中の事情を調べて、ゴルフの雨天決行についての是非を問うのは本意ではありません。自らが審判であるゲームであることは、ゴルフの誇りです。現在の自分で判断できるという環境を意識して、雨天決行か、雨天中止か、それぞれが決めれば良いのです。
レインウェアで笑え!
快晴の下でスタートしたのに、途中で天候が変わって、雨ゴルフになることもあります。雨天中止にする人でも、ある程度ゴルフをしているのであれば、ゴルフ用のレインウェアを持っているべきだと言われるのは、突然の雨に対応することも、ゴルフの腕前と考えられているからです。
国産のゴルフメーカーのレインウェアの性能は、世界一です。また、シューズの防水機能などは、比較にならないレベルで優秀です。ゴルフの経験値や熟練度が明白になるシーンは、たくさんありますが、雨ゴルフへの対応ほど多弁なものはないかもしれません。見た目や、見栄で選択したアイテムが、実用に耐えなければ、なんともカッコ悪く、滑稽になってしまうからです。
信頼できる機能を発揮する雨グッズがあれば、雨が降るのが楽しみになると、強がることも、あながち、やせ我慢だけとは言えなくなるというものです。
雨のゴルフでなければ経験できないこともたくさんあります。雨中のゴルファーを助けるために整備されたゴルフルールを使いこなすことは、ゴルフが頭のゲームであることの証明になります。
梅雨の季節の雨上がりの美しさは格別です。緑になった木々が、雨で汚れを落として、水滴をピカピカさせるシーンを愛でる余裕があるゴルファーは、スコアにかかわらず上級です。レインウェアなどのグッズの機能は、スコアに直接、関係してきますので、研究して、準備することも腕前の一部になります。
個人的には、ゴルフは雨天決行、と言い切りたいのですが、新製品の試打ラウンドは撮影もあるので雨天だと、スケジュール変更になるのです。つまり、雨天決行を貫けなくなっています。雨天決行を声高に主張すれば、新しいゴルファーが逃げてしまうという心配の声もよく耳にします。新型コロナウィルスの影響がなくとも、ニューノーマルなゴルフは更新され続けています。
最後に一つ。
僕の親しいゴルフ仲間で、憧れていた最高機能のレインウェアをやっと購入して、その後、4年間、ゴルフのたびに雨が一滴も降らなかったという特別な経験をしていた男がいました。
「隠れ機能で、持っていれば雨が降らないというレインウェアだと思えば、本当に最強のアイテムじゃん」
と感心していた矢先、朝から雨が降る雨ゴルフになったのです。彼のレインウェアのデビューだと思っていたら、普通のウェアのままで笑いながら、彼はロッカーから出てきたのです。
「レインウェア、家に忘れてきちゃったよ」
仲間で大笑いをしました。それから、更に2年が経ちましたが、彼は究極の晴れ男として君臨しているのです。
国産のゴルフメーカーのレインウェアの性能は、世界一です。また、シューズの防水機能などは、比較にならないレベルで優秀です。ゴルフの経験値や熟練度が明白になるシーンは、たくさんありますが、雨ゴルフへの対応ほど多弁なものはないかもしれません。見た目や、見栄で選択したアイテムが、実用に耐えなければ、なんともカッコ悪く、滑稽になってしまうからです。
信頼できる機能を発揮する雨グッズがあれば、雨が降るのが楽しみになると、強がることも、あながち、やせ我慢だけとは言えなくなるというものです。
雨のゴルフでなければ経験できないこともたくさんあります。雨中のゴルファーを助けるために整備されたゴルフルールを使いこなすことは、ゴルフが頭のゲームであることの証明になります。
梅雨の季節の雨上がりの美しさは格別です。緑になった木々が、雨で汚れを落として、水滴をピカピカさせるシーンを愛でる余裕があるゴルファーは、スコアにかかわらず上級です。レインウェアなどのグッズの機能は、スコアに直接、関係してきますので、研究して、準備することも腕前の一部になります。
個人的には、ゴルフは雨天決行、と言い切りたいのですが、新製品の試打ラウンドは撮影もあるので雨天だと、スケジュール変更になるのです。つまり、雨天決行を貫けなくなっています。雨天決行を声高に主張すれば、新しいゴルファーが逃げてしまうという心配の声もよく耳にします。新型コロナウィルスの影響がなくとも、ニューノーマルなゴルフは更新され続けています。
最後に一つ。
僕の親しいゴルフ仲間で、憧れていた最高機能のレインウェアをやっと購入して、その後、4年間、ゴルフのたびに雨が一滴も降らなかったという特別な経験をしていた男がいました。
「隠れ機能で、持っていれば雨が降らないというレインウェアだと思えば、本当に最強のアイテムじゃん」
と感心していた矢先、朝から雨が降る雨ゴルフになったのです。彼のレインウェアのデビューだと思っていたら、普通のウェアのままで笑いながら、彼はロッカーから出てきたのです。
「レインウェア、家に忘れてきちゃったよ」
仲間で大笑いをしました。それから、更に2年が経ちましたが、彼は究極の晴れ男として君臨しているのです。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
連載
ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”