夏ゴルフは命懸けだけど……
2020年夏。東京にオリンピックは来ませんでした。
記録的に長かった梅雨が明けたら、いきなり猛暑がやってきました。もし、オリンピックが予定通り行われていたら、梅雨の悪天候の中で始まって、終盤はうだるような高温多湿の中で命懸けのメダル争いになっていたのかもしれません。
お盆休みは、コロナ禍で普段とは違う様子になったと言われています。お盆休みの初日にゴルフコースに行きましたが、コースは満員と比較すると6割ぐらいの予約だったようです。確認してみると、三連休は同じような予約状況なのに、連休が明けた平日は満員御礼でキャンセル待ちの日もあるとのことでした。
お盆休みは「特別なお休み」なのかと推測していましたが、せっかくのお休みだからこそプレー代が安い平日にゴルフをしようという「よくあるお休み」と同じ心理で行動するゴルファーが多いことに驚きつつ、少しホッとしました。
連休明けの関東地方は、今年の夏一番になるかもしれないという記録的な暑さを記録した場所が複数ありました。コロナウィルスに厳重注意しているのに、想定外の熱中症で救急搬送なんということになっていないのか?
心配をしながら、「ゴルフは命懸けでするものではない!」と僕を叱った先輩ゴルファーのことを思いだしたのです。
その先輩は。梅雨入りと同時にゴルフをお休みして、9月の終わり頃に復活するのです。つまり、夏ゴルフは一切やらない人でした。
夏ゴルフをしないゴルファーのことを、30代前半まで個人的に否定していました。自分の都合でゴルフをする季節を選ぶなんて、自己中心的で、傲慢だと考えていたからです。公言せずに、さり気なく夏ゴルフをしない人は少なからず存在しますが、その先輩はそれを一切隠さずに、声高に正しいと主張していたのです。否定を通り越して、軽蔑に値する言動だと憤りました。僕も若かったので、軽い言い争いになりました。先輩が言い放ったのが、先程の台詞でした。
「ゴルフは命懸けでするものではない!」
『洒落臭せぇ! ゴルフは命懸けじゃい!』と心の中では叫びましたが、周囲にいたゴルファーの空気が、その通りだ、という雰囲気になったので、引き下がりました。
時は流れて、その先輩と同じ年代になった自分は、意地で夏ゴルフをしていますが、命を粗末にするような無理はせず、安産第一の夏ゴルフを楽しんでいるのです。
記録的に長かった梅雨が明けたら、いきなり猛暑がやってきました。もし、オリンピックが予定通り行われていたら、梅雨の悪天候の中で始まって、終盤はうだるような高温多湿の中で命懸けのメダル争いになっていたのかもしれません。
お盆休みは、コロナ禍で普段とは違う様子になったと言われています。お盆休みの初日にゴルフコースに行きましたが、コースは満員と比較すると6割ぐらいの予約だったようです。確認してみると、三連休は同じような予約状況なのに、連休が明けた平日は満員御礼でキャンセル待ちの日もあるとのことでした。
お盆休みは「特別なお休み」なのかと推測していましたが、せっかくのお休みだからこそプレー代が安い平日にゴルフをしようという「よくあるお休み」と同じ心理で行動するゴルファーが多いことに驚きつつ、少しホッとしました。
連休明けの関東地方は、今年の夏一番になるかもしれないという記録的な暑さを記録した場所が複数ありました。コロナウィルスに厳重注意しているのに、想定外の熱中症で救急搬送なんということになっていないのか?
心配をしながら、「ゴルフは命懸けでするものではない!」と僕を叱った先輩ゴルファーのことを思いだしたのです。
その先輩は。梅雨入りと同時にゴルフをお休みして、9月の終わり頃に復活するのです。つまり、夏ゴルフは一切やらない人でした。
夏ゴルフをしないゴルファーのことを、30代前半まで個人的に否定していました。自分の都合でゴルフをする季節を選ぶなんて、自己中心的で、傲慢だと考えていたからです。公言せずに、さり気なく夏ゴルフをしない人は少なからず存在しますが、その先輩はそれを一切隠さずに、声高に正しいと主張していたのです。否定を通り越して、軽蔑に値する言動だと憤りました。僕も若かったので、軽い言い争いになりました。先輩が言い放ったのが、先程の台詞でした。
「ゴルフは命懸けでするものではない!」
『洒落臭せぇ! ゴルフは命懸けじゃい!』と心の中では叫びましたが、周囲にいたゴルファーの空気が、その通りだ、という雰囲気になったので、引き下がりました。
時は流れて、その先輩と同じ年代になった自分は、意地で夏ゴルフをしていますが、命を粗末にするような無理はせず、安産第一の夏ゴルフを楽しんでいるのです。
意外と知らないゴルフと熱中症
ゴルフコースで、熱中症になるゴルファーは想像以上に多いのです。
倒れなくとも、熱中症になっているケースがあります。注意しなければならないのは、熱中症は症状から回復することで耐性ができて、強くなるのではなく逆に同じようなケースで症状が重くなって、重症化しやすくなる傾向があることです。
ゴルフコースで重症化し、急死しなくとも症状が落ち着いたと安心して、家に帰ってから疲れて寝て翌朝に冷たくなっているというパターンも少なからずあるそうです。「前の日は普通にゴルフをしていたのに……」というような話の場合、直接の死因は心不全とかになっていても、本当の死因は熱中症だったということもあるのです。
熱中症は熱が身体の中に籠もって色々な器官が不調になる症状です。最初のサインは、顔のほてりや立ちくらみです。腹痛が起きたり、音が変なふうに聞こえる人もいます。次に、筋肉の痙攣や足がつったりします。更に進むと身体に力が入らなくなったり、吐き気、強烈な頭痛が出ます。そして、汗をかく器官がおかしくなり、異常に汗が出たり、逆に汗が止まったりします。皮膚に湿疹が出たり、鳥肌が立ったりする人もいます。尿意があるのに、トイレに行っても一滴もおしっこが出ないということもあります。
それらを見逃すと、とうとう真っ直ぐに歩けなくなったり、声をかけても意識がもうろうとして返事ができなくなったりします。こうなると、重度の熱中症で、救急搬送が必要になります。自分で水が飲めなくなって、意識を失うというのが最後の症状です。
熱中症が怖いのは、この代表的な症状が順序通りに出ない人がいることです。特に若い頃から屋外の運動で鍛えているような人は、序盤を通り越して、いきなり重度な症状になることが多いので注意が必要です。
僕は何度も症状が出ていたのに、丈夫な身体を過信して、無視をしたせいで、40代半ばで、とうとう救急のお世話になりました(ゴルフコースではありませんでしたが)。死んでもおかしくなかったと、後になって、勉強をして知りました。
それからは、十二分に注意していますが、前段階の症状はすっ飛ばして、いきなり、汗が変になるところから症状が始まって、尿意がおかしくなって、暑いのに全身に鳥肌が立ったりします。高温多湿の中だと20分ぐらいで、それらの重度な症状が出てしまうのです。すぐプレーはやめて、カートに乗って、歩かないようにしながら、冷たい飲み物を飲んだり(身体の中から冷やす効果がある)、氷嚢などで身体を冷やすようにしています(夏ゴルフのときはフルに準備をしています)。
こまめな水分補給、程良い塩分が予防として有名ですが、実は大切なのが睡眠です。睡眠不足だと熱中症になるリスクが激増します。
一昔前までは、冷たい飲み物は吸収が悪いからNGという対処法もあったようですが、最新の対処法では、水筒に入れて氷で冷やしたスポーツドリンクや麦茶を推奨しています。お腹が冷えてしまう人は、行儀が悪いですが、口の中で少しとどめて、ぬるくしてから飲むようにすると良いのです。首と頭の付け根にある小脳が熱暴走することで、重度な症状になるので、位置的が近い口内を冷やすのは効果があるのです。
ゴルフコースの芝生の上は、いわゆる天気予報で使う気温よりも高温になります。天気予報で計測するのは日陰の数値です。日向の芝生の上は、気温30度のエリアでも40度近くなることもあります。「予報の気温が低いから今日は大丈夫」というのは危険なのです。
一番安全なのは危険な日にゴルフをすることを避けることです。
どうしてもやらなければならないとしても、無理せずに、少しでもおかしいと感じたらプレーをそこでやめる、という素早い決断ができなければダメなのです。
倒れなくとも、熱中症になっているケースがあります。注意しなければならないのは、熱中症は症状から回復することで耐性ができて、強くなるのではなく逆に同じようなケースで症状が重くなって、重症化しやすくなる傾向があることです。
ゴルフコースで重症化し、急死しなくとも症状が落ち着いたと安心して、家に帰ってから疲れて寝て翌朝に冷たくなっているというパターンも少なからずあるそうです。「前の日は普通にゴルフをしていたのに……」というような話の場合、直接の死因は心不全とかになっていても、本当の死因は熱中症だったということもあるのです。
熱中症は熱が身体の中に籠もって色々な器官が不調になる症状です。最初のサインは、顔のほてりや立ちくらみです。腹痛が起きたり、音が変なふうに聞こえる人もいます。次に、筋肉の痙攣や足がつったりします。更に進むと身体に力が入らなくなったり、吐き気、強烈な頭痛が出ます。そして、汗をかく器官がおかしくなり、異常に汗が出たり、逆に汗が止まったりします。皮膚に湿疹が出たり、鳥肌が立ったりする人もいます。尿意があるのに、トイレに行っても一滴もおしっこが出ないということもあります。
それらを見逃すと、とうとう真っ直ぐに歩けなくなったり、声をかけても意識がもうろうとして返事ができなくなったりします。こうなると、重度の熱中症で、救急搬送が必要になります。自分で水が飲めなくなって、意識を失うというのが最後の症状です。
熱中症が怖いのは、この代表的な症状が順序通りに出ない人がいることです。特に若い頃から屋外の運動で鍛えているような人は、序盤を通り越して、いきなり重度な症状になることが多いので注意が必要です。
僕は何度も症状が出ていたのに、丈夫な身体を過信して、無視をしたせいで、40代半ばで、とうとう救急のお世話になりました(ゴルフコースではありませんでしたが)。死んでもおかしくなかったと、後になって、勉強をして知りました。
それからは、十二分に注意していますが、前段階の症状はすっ飛ばして、いきなり、汗が変になるところから症状が始まって、尿意がおかしくなって、暑いのに全身に鳥肌が立ったりします。高温多湿の中だと20分ぐらいで、それらの重度な症状が出てしまうのです。すぐプレーはやめて、カートに乗って、歩かないようにしながら、冷たい飲み物を飲んだり(身体の中から冷やす効果がある)、氷嚢などで身体を冷やすようにしています(夏ゴルフのときはフルに準備をしています)。
こまめな水分補給、程良い塩分が予防として有名ですが、実は大切なのが睡眠です。睡眠不足だと熱中症になるリスクが激増します。
一昔前までは、冷たい飲み物は吸収が悪いからNGという対処法もあったようですが、最新の対処法では、水筒に入れて氷で冷やしたスポーツドリンクや麦茶を推奨しています。お腹が冷えてしまう人は、行儀が悪いですが、口の中で少しとどめて、ぬるくしてから飲むようにすると良いのです。首と頭の付け根にある小脳が熱暴走することで、重度な症状になるので、位置的が近い口内を冷やすのは効果があるのです。
ゴルフコースの芝生の上は、いわゆる天気予報で使う気温よりも高温になります。天気予報で計測するのは日陰の数値です。日向の芝生の上は、気温30度のエリアでも40度近くなることもあります。「予報の気温が低いから今日は大丈夫」というのは危険なのです。
一番安全なのは危険な日にゴルフをすることを避けることです。
どうしてもやらなければならないとしても、無理せずに、少しでもおかしいと感じたらプレーをそこでやめる、という素早い決断ができなければダメなのです。
夏ゴルフは遠足と同じ!
若気の至りをもう一つ紹介します。
僕は30代の半ばまで「ゴルフコースで死ねれば本望」と本気で考えていました。
老人になった僕が、最終ホールで長いパットを決めて、同伴者が賞賛する中で、パターを杖にするようにしてあの世に…… みたいな妄想をしていましたが、あるとき、ゴルフコース関係者に、コースで死亡者が出るというのは、スタッフにも迷惑がかかるし、家族も迷惑がかかるし、行政にも多大な迷惑になると、現実を突きつけられたのです。
自分勝手な妄想をしていたことを指摘されて、息が止まるぐらいの衝撃を受けました。猛省して、それ以降は一切に口にしないようにしましたし、そんな妄想は忘れる、と誓ったのです。
話を夏ゴルフに戻します。
暑さと上手に付き合う夏ゴルフの方法として、早朝ゴルフを以前オススメしましたが、自然との闘いという意味で人は無力です。科学力を駆使しても、限界の低さを知るだけで、いかに上手に逃げるかというハウツーを学ぶことになるのです。暑さから逃げる方法として、早朝ゴルフは最適な選択肢です。
ゴルフの素敵な魅力の一つは、自然の大切さと偉大さを体感できることです。ゴルファーなんて自然の前ではちっぽけな存在に過ぎません。
ゴルフは、ある意味で我慢のゲームです。夏ゴルフは我慢を鍛え、試すのには最適かもしれません。しかし、命の危険を冒してまでゴルフをする意味はないのです。
子供の遠足のときの先生の台詞を思いだしましょう。
『安全第一。無事に帰宅するところまでがゴルフです!』
夏ゴルフの優先順位は色々ですが……
ちなみに、ランチで飲むビールは、水分補給としてはマイナスです。一瞬は、身体を冷やしますが、利尿作用があるので、水分不足を加速してしまうからです。
真夏にコースデビューをしてから、43回目の夏が来ました。何度かの猛省と改心を繰り返した僕の結論はコレです。
『楽しくなければゴルフじゃない!』
夏ゴルフも安全に配慮すれば、楽しいものにできます。主治医からは、夏の間のゴルフは禁止と言われ続けて約10年。早朝ゴルフは、夏ゴルフではない例外なのだ、と言い訳しつつ、今年の夏も過ぎていくのです。
僕は30代の半ばまで「ゴルフコースで死ねれば本望」と本気で考えていました。
老人になった僕が、最終ホールで長いパットを決めて、同伴者が賞賛する中で、パターを杖にするようにしてあの世に…… みたいな妄想をしていましたが、あるとき、ゴルフコース関係者に、コースで死亡者が出るというのは、スタッフにも迷惑がかかるし、家族も迷惑がかかるし、行政にも多大な迷惑になると、現実を突きつけられたのです。
自分勝手な妄想をしていたことを指摘されて、息が止まるぐらいの衝撃を受けました。猛省して、それ以降は一切に口にしないようにしましたし、そんな妄想は忘れる、と誓ったのです。
話を夏ゴルフに戻します。
暑さと上手に付き合う夏ゴルフの方法として、早朝ゴルフを以前オススメしましたが、自然との闘いという意味で人は無力です。科学力を駆使しても、限界の低さを知るだけで、いかに上手に逃げるかというハウツーを学ぶことになるのです。暑さから逃げる方法として、早朝ゴルフは最適な選択肢です。
ゴルフの素敵な魅力の一つは、自然の大切さと偉大さを体感できることです。ゴルファーなんて自然の前ではちっぽけな存在に過ぎません。
ゴルフは、ある意味で我慢のゲームです。夏ゴルフは我慢を鍛え、試すのには最適かもしれません。しかし、命の危険を冒してまでゴルフをする意味はないのです。
子供の遠足のときの先生の台詞を思いだしましょう。
『安全第一。無事に帰宅するところまでがゴルフです!』
夏ゴルフの優先順位は色々ですが……
ちなみに、ランチで飲むビールは、水分補給としてはマイナスです。一瞬は、身体を冷やしますが、利尿作用があるので、水分不足を加速してしまうからです。
真夏にコースデビューをしてから、43回目の夏が来ました。何度かの猛省と改心を繰り返した僕の結論はコレです。
『楽しくなければゴルフじゃない!』
夏ゴルフも安全に配慮すれば、楽しいものにできます。主治医からは、夏の間のゴルフは禁止と言われ続けて約10年。早朝ゴルフは、夏ゴルフではない例外なのだ、と言い訳しつつ、今年の夏も過ぎていくのです。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。