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    打打打坐 第23回【2人ゴルフの傾向と対策】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2020年9月18日 06時00分

    • ゴルフライフ
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    2人ゴルフが常識になる時代に

    やっと残暑を気にしなくともゴルフが出来る季節が来ました。秋のゴルフコースは、美しさで人々を魅了します。コロナ禍で、世界中は混乱の最中ですが、通常は春に開催されるマスターズが、史上初めて、11月開催になったので、紅葉して美しいオーガスタナショナルが中継されることが予想されるので、楽しみでしかたがありません。

    先日、土砂降りの高速道路を走って、ゴルフコースに行きました。コースに着く直前に、雨が上がって、雲間から朝日が昇りました。雨を覚悟でコースに来たことをゴルフの神様から褒められているような神秘的な体験でした。

    「天気予報も悪かったので、今日はキャンセルが多いと思いますから、空いてて楽にプレーできますね」

    コースのスタッフが笑顔で話すのを聞きながら、手放しでは喜べない複雑な気持ちになりました。

    結果として、たくさんのゴルファーが来場して、コースはスタッフの予想よりも混みました。雨天の予報でも、キャンセルせずにコースに来た人たちが多かったわけです。僕は、たくさんのゴルファーが集っているゴルフコースを眺めるのもゴルフの内だと考えていて、時間さえあればいつまでも、テラスなどで、椅子に座ってゴルファー観察をしています。

    『4人の組が多いなぁ』と思いました。コロナ禍の新しい常識の中でプレーするゴルフでは、密を避ける意味で、一人ゴルフを始めとして、できるだけ少ない人数でのゴルフを奨励しています。コースによっては、明確に、2人ゴルフをメインとして、4人1組やコンペの予約も受付も当面はしない、としているケースもあります。

    ゴルフコースの経営サイドから見れば、4人×組数という最も効率が良い売り上げパターンが、二人ゴルフでは半分になってしまうのですから、大変な決断です。その苦悩が理解できるので、4人の組が多くとも、密の危険も顧みず大人数で、楽しげに騒いでいるゴルフコンペの参加者たちがいても、誰も非難する気持ちにはなれません。

    4人のゴルフを維持するために、乗用カートの座席を透明シートで四分割して安全性をアピールしているコースもあります。風刺のパロディを見ているようです。コロナ禍の世界は、非現実的すぎて受け入れるのが怖くなります。

    何を選ぶのか? 判断するのは、ゴルフをする本人たちで、色々なゴルフコースやプランが選択肢としてあることは素晴らしいことだと考えるのが正解なのだと思います。

    この国では、法律で縛られることなく、国民一人一人の自覚と決断でコロナから身を守る自由が優先されています。ゴルフコースの新常識も、流動的でありながら、徐々に固まっていくのだと思います。個人的には、二人ゴルフをマストにしなくとも、奨励するという流れになっていくのだと予測しています。

    プロのこだわりの光と影

    ゴルフは4人1組が伝統なのだ、と初心者に教えている老人がいました。ゴルフの長い歴史を考えれば、4人1組が基本になったのは20世紀以降で、最近のことです。本当の意味で、伝統を持ち出すのであれば、2人ゴルフこそが正当なのです。

    世界最古のトーナメントである“全英オープン”の決勝の二日間を見ればわかるはずです。2人1組でプレーするトーナメントは他にもありますが、まさに伝統に敬意を払っている証拠でもあります。

    21世紀になって、修正されてしまいましたが、20世紀までは、ゴルフ規則の第一章エチケットにも、プレーの優先権という項目で、2人でプレーする組が最優先される旨が明記されていました。

    バブル期には、4人1組でなく、3人だと1人分のキャンセル料を払う必要があるコースもありました。4人1組で、キャディー付きの歩きプレーが、その頃の常識だったのです。

    しかし、その頃でも、唯一、クラブ競技などのマッチプレーで二人ゴルフをすることがありました。1日で36ホールプレーする形式のコースもありましたから、朝から館内放送などで

    「本日はクラブ競技を開催しているために、プレーの中断をお願いすることがあります。ご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。スタッフの指示に従っていただくようにお願いいたします」

    というような注意とお願いが何度も流れるのです。

    ヘルメットのカバーを普段は使わない赤い布にした赤帽と俗称で呼ばれる特別なキャディーがついた2人の組が来たら、他の全てのプレーヤーは、そのホールのプレーを中断して、コースのプレーを譲るのです。独特の緊張感と、憧れの視線の中で、名誉の2人の組は通り過ぎていきます。プレーしているほうも大変です。最近では、ほとんど見かけなくなりましたが、今でも、同様の優先権でクラブ競技をしているコースもあります。

    そういう経験をしていれば、バブルを経験した昭和からのオールドゴルファーだとしても『4人1組が伝統』という表現は使わないような気がします。単純に、経営サイドのことも考えて、できるだけ4人1組にするように努力するオールドゴルファーも多いので、そういう流れで、伝統と勘違いしてしまったのかもしれません。

    究極の2人ゴルフとは?

    僕もゴルフデビュー以来、4人1組でプレーすることが当たり前だった1人です。平成になって、2人ゴルフが市民権を得ていく様子を横目で見ながら、時代の流れに戸惑っていた期間もありました。

    4人ないし、3人でプレーするのを伝統だとは思っていませんでしたが、正当だと考えていたのだと思います。2人でプレーすることには罪悪感がありましたし、平気で2人でプレーしている人たちを見ると、常識がない人か、仲間がいなくて可哀想な人たちだと軽蔑していたような気がします。

    告白すると、2人ゴルフに抵抗がなくなったのは、つい10年ほど前です。ゴルフコースの経営者に、キャンセルがあって2人ゴルフになってしまったことをお詫びをしたところ、次のように言われたのです。

    「2人でも来ていただくことも嬉しいんですよ。人数が揃わないからゴルフをしないというより、2人で遠慮しないで、どんどんコースに来てください」

    社交辞令かもしれない、と警戒もしましたが、どうやら本音で言ってくれているのだとわかりました。風景が変わって見えた気がしました。“気軽に、気負わずに、2人ゴルフをして良いのだ。これが大衆化したゴルフシーンなのだ”と、自らのバージョンアップのきっかけになったのです。

    実際にプレーしてみると、3人でのゴルフがペースなどを考えると一番好きなのですが、2人ゴルフの良い点もたくさん実感できました。相手と親密な時間を過ごせることや、同伴者が1名で可能なのでお手軽に予定が組めること、何よりも、プレー時間が圧倒的に速くなることは魅力でした。愛妻とも2人ゴルフをする機会が増えて、間違いなく愛が深まったこともメリットです。

    令和2年目の現在、僕らはかつてない選択肢を選ぶゴルフをしています。様々なゴルフスタイルから、自分に合ったものをTPOで選べるゴルフができるなんて、昔は夢のまた夢でした。

    最後に、2人ゴルフで注意していることについて紹介します。

    速くプレーすることなど、当たり前のことは、ネットなどのハウツーを見ても学べますが、それでは、普通の2人ゴルフにしかなりません。注意するのは、シンプルなことです。出来るだけ多くコースに行くようにすることです。2人ゴルフの罪悪感は、4人1組で得られるはずの売り上げが見込める枠を半額で使っているという現実です。でも、月1回のゴルフを、月2回にすれば、一応、月に4人分の売り上げに貢献できます。罪悪感も半減です。倍を基準にして考えるようになって、本当に気が楽になりました。

    コースに、倍、行ければ、メリットばかりです。スコアは、よほどの遠回りの要素がなければ、ラウンド数に応じて良くなるものですし、ゴルフの経験が増えることで、スコア以外のランクアップも実感できます。僕の中で、究極の2人ゴルフの絶対条件は、恩返しは倍返しだ! なのです。

    2人ゴルフが基本になる新常識の検討をしている内に、コロナウィルスの危機が去ってしまう未来が待っているのかもしれませんが…… だとしたら、尚更のこと、今のこの瞬間を逃すのはもったいないのです。自分なりの2人ゴルフを極めてみて欲しいと思います。秋ゴルフに倍行けば、季節の移ろいも楽しめるはずです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
    連載

    ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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