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打打打坐 第25回【マスク or ノーマスク】

打打打坐 第25回【マスク or ノーマスク】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

配信日時:2020年10月2日 15時00分

マスクゴルフの実態

マスクをすることを拒否して、飛行機から強制的に降ろされたというニュースが少し前に何度かありました。ゴルフの各団体が、たっぷりと時間をかけて、後出しじゃんけんのように公開した『新常識のゴルフマニュアル』では、ほぼ例外なく「マスクをしてください」と明記されています。

意見を求められれば、プレー中はマスクを強制しない旨を明記すべきだと、強く主張してきました。広々とした屋外で、同伴者などの一部の人としか接触ないゴルフ中にマスクをするのは、ただの苦痛に過ぎないと考えたからです。実際に、夏ゴルフでマスクをしてプレーしていたゴルファーが、何人も熱中症で倒れたそうです。

この国の“お上”(おかみ)は、法律で縛ることもせず、命令もせず、ただひたすらお願いをするという奇妙な方針で、コロナ禍の混乱をやり過ごそうとしています。マスクにかんしても、基本的には、個人の自由という見解のようです。

しかし、末端に行けば行くほど、現場である企業や団体は、自由という裁量に委ねることが出来ないから強制することになります。ゴルフの各団体の後出しじゃんけん的マニュアルも、それらの状況に安心して、マスクを強制することを明記できたというわけです。

秋ゴルフが始まって、ゴルフコースも満員御礼という日もあるようになってきました。既に何度か、渋滞気味で普段の倍の時間がかかるラウンドも経験しました。コロナ禍の中でも、ゴルフは安全に楽しめる、ということが証明されつつあるようだと安堵しています。

面白いのは、ゴルフコース来場者のマスク利用実態です。クラブハウス内では7割〜8割ぐらいの人がマスクをしています。プレー中を観察すると、若いゴルファーは6割ぐらいがマスクをしていて、年を取るほどマスク率は下がり、高齢者はほぼノーマスクです。

マスクをしてプレーする20代の若いゴルファー数名に、「マスクしてゴルフをするのはキツくないか?」と聞いてみました。異口同音に、こんな答えでした。

「コロナ禍の前から、けっこうマスクして外を歩いたりしていましたから」

調べてみると、若い世代は、顔が小さく見えるとか、顔の輪郭を隠せるとかいう理由で、高校生ぐらいから移動中にマスクする文化があるようです。

季節がマスクを求める

夏ゴルフでは危険すらあったマスク着用ですが、季節の移ろいで、少し事情が変わりつつあるようです。

少し前から、ゴルフメーカーが、メーカやブランドのロゴが入ったマスクを試験的に作っています。コロナ禍が長期化することを見越したことと、後出しじゃんけんのゴルフ関連団体のマニュアルが出たことで、動きが出てきたようです。

「冬ゴルフをする人にとっては、マスクは防寒のアイテムになりますよね?」

そんなふうに話を振られて、頭の中でゴルフメーカーの試作品のマスクが浮かびました。

僕はゴルフ中のマスク否定派の一人ですから、基本的には、マイナス要素を探してしまうという傾向がりますが、とにかく、分厚いマスクが多いという違和感があったのです。何度も洗って使えるものだから、厚めなのかと思っていたのですけれど……

厚いマスクは、冬対応ということであれば、納得ができます。一気に色々なことが頭の中で繋がりました。

寒くなってきたら、マスクは防寒アイテムになります。そもそも、防寒用のアイテムとして、マスクのようなものは既に商品化されていて、シーズン商品としてそれなりに売れています。

ゴルファーのマスク率は一気に上がるのかもしれません。コロナ対策と、防寒グッズの一石二鳥のアイテムというわけです。自分の好きなゴルフメーカーの限定品とかであれば、さらに、プラスポイントになる可能性があります。

ノーマスクで修行したい

真冬の期間は、ゴルフをしないという人もたくさんいます。僕にとって、真冬ゴルフは修行です。もう何十年も、そうして真冬ゴルフを乗り越えてきました。

真冬ゴルフの楽しさの一つは、進化する防寒アイテムで武装することです。少しでも快適さが増せば、それだけで、ゴルフが上手くなったような気分になれます。

秋という季節は通り過ぎるものなので、あっという間に冬になります。マスク率が上がった冬ゴルフ、真冬ゴルフを経験することになりそうです。

僕はどんなに防寒アイテムとして優れたマスクが出現しても、ノーマスクでゴルフをし続けます。

理由は二つです。

一つは、白内障の進行を和らげるためにUVカットのサングラスをしてゴルフをしているので、マスクをするとレンズが曇って、面倒臭いということ。

もう一つは、口元が見えないと、表情がわかりづらいので、コミュニケーションに問題が生じそうな気がすること。

今でも、接客業の多くはは、マスク&透明シールドで対応してくれますが、口元は見えないと無愛想に見えて、微妙な気持ちになることがあります。

マスクの効果は理解しているつもりなので、必要に応じてマスクをすることを否定はしません。でも、安全なシーンでもマスクを強制されるのはご免です。

マスクで顔を隠してもカッコ良く見せたいという若者の気持ちはわかりませんが、文化としては理解ができます。マスクが感染予防として効果があることも理解しています。

ゴルフは、自ら審判で、使用する用具も、ボールまで自分選ぶという極めて珍しい特徴を持っています。最低限のエチケットやルールを守れば、あとは自由というのがゴルフの神髄です。安全なシーンであればノーマスクもありですし、マスクをしたままゴルフをするのもありです。自分で選んで、楽しむことこそ、ゴルフの醍醐味なのです。

数ヶ月後、防寒アイテムとして、マスクをする人が大多数になったとします。ノーマスクの僕は、不思議そうに質問されるのです。

「どうして、マスクをしないの?」

口角を上げた満面の笑みで、答えます。

「修行ですので」

相手がドン引きしたのは、マスクで隠れて見えないと思いますが、修行に孤高はよく似合うのです。

ノーマスクだからと飛行機から強制的に降ろされるようなことが、密閉空間ではないゴルフシーンで起きないことを祈りつつ、念のため、バッグにマスクを潜ませて、まずは、秋ゴルフを堪能するのです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
連載

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