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    打打打坐 第28回【秋ゴルフは全力で逃げる】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2020年10月23日 06時00分

    • ゴルフライフ
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    秋はパットが楽しい

    10月になると、ショップに来年の手帳やカレンダーが並びます。年をとるごとに、1年の過ぎる速度は加速度的に上がっていきますが。今年はコロナ禍で、空白の時間がある人が多いので、1年の過ぎる速度が人によって違うことが多いようです。

    やっと数的に証明できるデータが揃ったようで、色々なところで。ゴルフコースに人が戻ってきて、ゴルフ用品の売り上げも好調だというニュースやコラムを目にするようになってきました。特に20代、30代の新規参入ゴルファーが増えてきていることや、40代、50代のゴルファーの回数の増加の傾向などが顕著だということです。何とも頼もしいです。

    「あまり景気の良いことを書くと、君ではなくゴルフそのものが反発を受けるから、控えるようにしたほうが良いよ」

    ゴルフ業界にとって、コロナ禍の今こそがチャンスだ、と主張し続けて、先見の明があると褒めてもらえることがある反面、忠告していただけるケースもあります。素直に注意しなければ、と反省するのですが……

    3ヶ月でくくって、四季に当てはめると、暦の上では9月、10月、11月が秋になります。秋は、コロナ禍に関係なく、最高のゴルフシーズンなのです。「ゴルフをやらないのはもったい!」と大声で叫びたい気分を抑えられません。

    秋ゴルフは、景色を楽しむものだと思いがちですが、これは春のソメイヨシノの満開を楽しめるのが一瞬のように、紅葉もピークは長くとも10日ぐらいですし、落ち葉の処理が大変なので、ゴルフコース内の全てのホールで紅葉が楽しめるゴルフコースは、実は、ほぼないのです。つまり、秋ゴルフを目で愛でるのは、運次第のような幸運なことなのです。

    秋ゴルフの本当の楽しみは、グリーンでのパッティングです。

    秋のゴルフコースのグリーンのメンテナンスは、1年の中で最も充実しているからです。良い時期だからこそ、穴を開けてメンテナンスをすると季節でもありますが、その直前と、しばらくしてからのベントグリーンは、過酷な夏を越えて、痛んだ部分を修復して、最高のボールの転がりを楽しめるのです。

    冬芝と呼ばれる芝種のグリーンは、暑いと育成が悪くなって、春と秋が成長が最も良くなります。春は夏を乗り越える準備があるので、転がりの良さを最優先できませんが、秋はそのような障害がないので、転がりの良さを最優先できるというわけです。

    秋ゴルフコンペは楽しい

    暑くもなく、寒くもないということで、ゴルフコースの芝生の状態など無関係に、秋はゴルフの季節だと考える人のほうが多いようです。間違いではありません。半袖で汗をかかずにプレーできる時期というのは、本当に短いのです。秋になると、自然とゴルフコースに足が向くというゴルファーもたくさんいます。

    9月の終わり頃から、明らかにゴルフコンペで集まっているゴルファーたちをゴルフコースで見かけるようになってきました。コロナウィルスの影響で、ゴルフコンペの予約は受け付けないところもあるようですが、感染リスクに注意すれば大丈夫だと考えるゴルファーもいます。

    一口にゴルフコンペといっても、コースを貸し切って行うイベントゴルフコンペから、仲間内の2組のゴルフコンペまで、様々な規模と目的があるものです。そういう中でも、気の合う仲間同士で、ライバルもいたりするようなゴルフコンペは格別です。

    予定が決まってから、それに合わせて練習をしたり、コースに行って調子を整える人もいますし、新しいクラブという新兵器を投入して上位を狙う人もいます。そういうゴルフコンペは、当日だけではなく、準備から始まっていますし、終わったあとでも、仲間で反省会をしたりして、長い期間、楽しめるのです。

    個人的に、秋ゴルフのコンペで気合いが入るのは、賞品が食べ物関係のときです。春は春で色々と美味しいものがありますが、秋は美味しいものが比較にならないほど多いからです。新米、栗、芋、ブドウ、梨、牡蠣、松茸、キノコ、山芋…… この数年の秋ゴルフコンペで、食品が賞品だったときの戦利品は、次々に思いだせます。美味しい記憶も蘇り、涎が出てしまいます。

    ゴルフの楽しみ方は十人十色ですが、自らが楽しみだと思えるゴルフコンペがあるゴルフ人生と、ゴルフコンペの楽しさがわからないゴルフ人生では、後者はもったいないと思うのです。

    コロナ禍でゴルフコンペが減少しているからこそ、該当する人は、ゴルフコンペに参加したり、仲間と新たなコンペwp作ったりするチャンスです。一緒に回る人だけではなく、繋がって複数の組でプレーしても、ゴルフは面白いのです。ゲームとしての奥行きに感動できるはずです。

    儚いからこその秋ゴルフ

    9月は残暑が厳しくて、ゴルフ日和と呼べる日がほとんどありませんでした。熱中症で具合が悪くなったという人もたくさんいたようです。台風も何度も来て、ゴルフコースがクローズすることもありました。

    10月は、東京は30年に一度という記録になるぐらいの日照時間の少なさが話題になっています。秋晴れが恋しい、という声をこんなに耳にした秋は珍しく、記憶にありません。2020年の秋ゴルフは、半ばを過ぎて、あまりお天気には恵まれていないのです。でも、本当の意味で最高の秋ゴルフのシーズンは、これからなのです。(はずなのです)

    夏芝である高麗芝のフェアウェイが休眠して緑を失う直前に、遠くの山並みとコース内の落葉樹が紅葉するタイミングが交差するときが、秋ゴルフのピークです。この数年、暦での秋の後半に、その瞬間が来ています。今年も同じだと思われます。

    落ち葉が舞い散る中で、高くなった秋空に白球を放ったゴルフをしたことがあるゴルファーは、全てのゴルファーの中に何%ぐらいいるのでしょうか?
    独特の寂しさを伴った美しさは、コントラストで生まれます。泣きたくなるような美に触れる瞬間が、ゴルフというゲームの背景としてあるのは自分だけに訪れる奇跡です。

    狙って体験できるものではないところも、秋ゴルフのピークの儚さで、ゴルフの神様の存在を意識せずにはいられません。僕は勝手に思っているのです。望みさえすれば、特別な瞬間を体験できる順番が書かれた番号札は知らぬ間にキャディバッグに入れられていると。

    あとは、順番が来たときに、ゴルフコースにいれば良いだけです。小さな秋や美味しい賞品や仲間との時間まで含めて、ゴルファーの数だけ儚いゴルフシーンが用意されているのが、秋ゴルフなのです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
    連載

    ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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