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打打打坐 第37回【2020年のゴルフは?】

打打打坐 第37回【2020年のゴルフは?】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

配信日時:2020年12月25日 15時00分

ニューノーマルなゴルフを忘れない

今年の漢字は、大方の予想通りの『密』でした。三つの蜜を避けましょう、というスローガンは、耳にタコができるほど聞きました。

新型コロナウィルスは、春の非常事態宣言という一生のうちに一回あるか、ないか、という経験をさせてくれました。『ステイホーム』で、不要不急の外出は避けるように、という世の中の空気で、名門と呼ばれるような経営に余裕があるコースは、クローズしたりしました。

僕は、こういう時こそゴルフ、だと、ゴルフに行きまくりました。工夫し、注意をすれば、ゴルフほど安全なレジャーはない、と欧米のゴルフコース関係者は訴え続けました。事実、ゴルフの感染リスクが低いことは、時間の経過と共に証明されました。感染リスクが低いことは注目されて、世界中で、新しいゴルファーが増えたのです。

ニューノーマルなゴルフが提唱されました。お一人様ゴルフが出来るようになったゴルフコースもありました。スルーで18ホールを一気にプレーするゴルフも見直されています。

ツルツルしたモノを共有しないように、という流れで、ピンフラッグにできるだけ触れない工夫で、浅底のカップが流行したり、バンカーレーキがコースから撤去されて、自らの足でバンカーを均すことが奨励されたりもしました。

ゴルフトーナメントも、無観客で行われました。声援がないことで、力が発揮できなかったというプロゴルファーもいますが、静寂の中でショット音だけが響くゴルフも悪くないと感じたファンもいたようです。

こういう事態が来ることを予測していたように、2019年のゴルフルールの大改正が、色々なシーンで活かされました。例えば、ピンフラッグをホールに挿したままパットができるということも、2018年には考えられませんでした。ニューノーマルなゴルフが、抵抗なくできるようになったのは、奇跡的なタイミングの良さがあったのです。

年の瀬になってから、新型コロナウィルスのワクチンの接種が始まりました。この国でも、2021年に前半には多くの国民が接種できるようになると言われています。先のことはわかりませんが、これで、コロナ禍騒動が収束したとしても、十年後、二十年後、どんなに時間が経っても、2020年を忘れないような気がします。ニューノーマルなゴルフなんて言って、こういうこともしたんだ、なんて笑って話せる未来を想像すると、少し楽しみです。

自粛中でもゴルフは

春の非常事態宣言以降、ゴルフのプレーを自粛して、ゴルフコースには一切行っていないという人もいます。万が一、ゴルフに出かけて、コロナウィルスに感染してしまったら、会社にも言い訳できないし、ゴルフコースにも、一緒に行った仲間にも大迷惑になると想像したら、どんなにゴルフが好きでも、自粛という選択肢を選ぶしかない、と言います。こういう想像力を発揮して、完全な危機管理ができることは素晴らしいことです。

その反面、他のレジャーが軒並み感染のリスクが高く、鈍った身体を動かす方法として、前々から興味のあったゴルフを選択して、やり始めた若者たちもいました。推定で、約20万人ほどの若者が、今年、ゴルフを始めたそうです。ゴルフ業界にとっては、不幸中の幸いでした。

ゴルフ用品業界も、コロナ禍の影響を受けました。量販店型のショップを筆頭に、フラッグシップショップとして飛ぶ鳥を落とす勢いだった都心にあるお店が、一時休業を経て、夏から秋にかけて、閉店する例が相次ぎました。企業の多くが出社せずに、テレワークになったからです。僕も取材で、緊急事態宣言の最中に、大手町や新宿に行きましたが、特に新宿は無人な街になっているシーンが何度もあって、SF映画ような非現実感があって驚かされました。

ゴルフ用具の売り上げも落ち込んだかというと……
その分、居住区に近い郊外店の売り上げが記録更新という感じで大健闘した結果、前年月比3倍なんていうショップもあったようです。全体で見ても、ゴルフ用品は夏以降、かなり売れたようです。

ゴルフを自粛した結果、コースで使うつもりだった予算を用具に回したゴルファーもいたことや、10万円の給付金で新しいクラブを買ったゴルファーもいたようです。ゴルフに行くことを自粛していたゴルファーも、用具を新しくすることで、ゴルフをした気分になるということもあったと聞きます。

コロナ禍で、とんでもない世界が目の前に広がっていますが、ゴルフにかんしては、なかなか面白い現象があちこちで起きていて、良い感じに動いているようなのです。2020年は、ゴルフの底力を教えてくれたような気がします。

色々なゴルフを嗜む年末年始

ゴルフは基本的には、プレーするものですが……

プロのトーナメントのファンの場合には、観るゴルフが存在します。ゴルフスイングを極めたい人には、学ぶゴルフもあるでしょう。自分のスイング論を広めたいお節介には、教えるゴルフもあります。飛距離命のゴルファーには、飛ばすゴルフもあり得ます。こうして、ゴルフエッセイを読んでくれている場合は、読むゴルフです。

僕の場合は、特殊ですが、書くゴルフが、プレーするゴルフと並列するように存在しています。ゴルフというゲームの奥深さは、ゴルファーの数だけゴルフの楽しさが用意されているところで、それが、ゴルファーたちを虜にする要因の一つだといえます。

教わるにしても、読むにしても、何にしても、出来るようにしておくと、ゴルフの世界が広がるのが、話すゴルフです。ゴルフ談義という言葉ありますが、個人的には、ゴルフ談義が出来て、ゴルファーは一人前になると考えているのです。

一方的に自分の好きなことや主張だけを声高に叫ぶのは、ゴルフ演説で、ゴルフ談義にはなりません。ゴルフ談義は、打順を待つように相手の話を聞き、自分の話もして、互いにゴルファーとして高め合う時間を過ごそうと意識することが楽しむコツです。聞いて、話すことで、自分の中でよりゴルフへの理解が深まるのがゴルフ談義の素晴らしいところです。

話すゴルフのレベルが上がれば、ゴルフ談義をより楽しむことが出来ます。まずは、色々な聞くゴルフを体験することです。聞くゴルフの蓄積は、話すゴルフのレベルアップに欠かせません。読むゴルフでも、話すゴルフにプラスになりますが、聞くゴルフのほうが即効的な効果が高いと思われます。

2020年のゴルフ界は、通常では考えられないことがたくさん起きました。この体験をしたゴルファーは、ある意味で、とても幸運なのです。自分の体験を、または、見聞きした様々なものを伝えるゴルフ談義を何回も繰り返して、ブラッシュアップして、後世のゴルファーに生きた情報として伝えるのも、ゴルフの内です。

ゴルフは、話すゴルフの伝聞で重要な記憶を繋いできた歴史があります。2020年の生き証人として、まだ、終わっていないコロナウィルスの影響で起きたことを伝えるために、まずは、しっかりと見るゴルフと、聞くゴルフを充実させましょう。

まずは、自分の2020年のゴルフを振り返って、整理することから始めることがオススメです。ゴルフでは正しく自らを見つめることが出来る者が常に勝者になります。一石二鳥どころか、何鳥にもなることは間違いありません。年末年始で、プレー以外の色々なゴルフを嗜むのは、ゴルファーとして最高の過ごし方です。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。

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ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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