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打打打坐 第47回【誰も気がつかない春の大叩きの秘密】

打打打坐 第47回【誰も気がつかない春の大叩きの秘密】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

配信日時:2021年3月12日 15時00分

桜が咲く直前によく見るシーン

3月になりました。
暦の上では春到来です。

梅が咲いたと喜んでいたのも束の間、桜(ソメイヨシノ)の開花日の予想がカウントダウンされています。

春はゴルフのハイシーズンです。ゴルフコースに来場するゴルファーが徐々に増えて、5月頃にピークになるのが例年のパターンです。今年は、昨年に続きコロナ禍が続いていますので、少し様子が違うかもしれませんが、そんなことはお構いなしで、季節は移ろい、ゴルフに恋したゴルファーたちは浮かれてコースに出る…… はずです。

「もう芝生は緑になりましたか?」
冬の間はゴルフをしない人から、先日、聞かれました。

「まだまだですよ。春が早く来るようになったとは言え、フェアウェイが緑になり始めるのは、北関東ではゴールデンウィーク前後ですね」
と返答しました。

「あと一ヶ月半ですか……」
残念そうに呟いていていたので、ゴルフにご一緒しませんか? と、誘ったのですけれど

「半袖しかゴルフウェアを持っていないから」
とやんわり拒絶されました。

すべてのゴルファーに、平等に春は訪れます。

地球温暖化の影響かどうかは、よくわかりませんが、桜が咲く頃になると、日中のお天気が良ければ、半袖のシャツでゴルフをすることが可能です。

SNSを見ていても、今年初の半袖報告がアップされていたり、春ゴルフの雰囲気が盛り上がってきました。そういう中で、毎年、面白い傾向があることに気が付いている人はほとんどいません。SNSに投稿している本人も、忘れてしまっているのです。

まあまあ以上の腕前のゴルファーに起きる現象。“春の大叩き”です。

普段は大叩きなどしないと自他共に認めるようなゴルファーが、その年のワーストスコアを記録したり、年に数えるほどしか打たないトリプルボギーをハーフで複数打ったりしているのが、春の大叩きなのです。

この珍事は、全てのゴルファーに大なり小なり起きていますが、大叩きが当たり前のゴルファーにはわかりにくいのです。とはいえ、その原因を知っていれば、少しは春ゴルフでスコアを崩す悪夢を回避できる可能性が上がります。

大叩きしたことを春の珍事と言われる実力に自らのゴルフのレベルを引き上がるためにも、春の珍事を考えてみるのが今回のテーマです。

脱皮した直後が一番やわらかい

季節の変わり目のゴルフは、基本的には難しいものです。
その一つ目の理由は、服装が替わることです。

日本には四季があります。寒暖に合わせて、服装を変えながらゴルフをするのは、この国のゴルファーの宿命です。

ゴルフウェアは、日進月歩でゴルフスイングを阻害しないように進化をしていますが、それでも、真冬のゴルフは着膨れしてしまうものです。秋から冬に向けて、着膨れしても、スイングできるようにゴルファーは、意識したり、無意識だったりしながら、調整して冬ゴルフに慣れていくのです。

やっと慣れてきたと自信を持った頃に、春は来ます。着膨れよりも、脱いでいく脱皮のほうが調整が難しいのです。動きにくくなった部位を動かすことは意識できますが、急に動きが良くなった部位を止めるという調整をするのが困難なことは、少しゴルフをしたことがある人ならわかるはずです。

脱皮直後のゴルファーは、脱皮直後の蟹が柔らかくて美味しいように、やわらかいのです。ゴルフにおいて、固すぎるのと同様に、やわらかすぎるのもプラスには働きません。服装の変化は、特に春になっていく季節のゴルファーの大叩きの原因になるのです。

その他に、ボールの飛距離が変わることも挙げられます。冬場は飛距離が落ちて、夏場は伸びます。番手で1番手というケースが多いですが、タイプによっては、2番手も距離が変わるゴルファーもいます。

距離感に自信が持てないと、レベルが高いほど、ゴルフはガタガタになります。大叩きの原因に十分になるのです。

沈んだボールも実力次第

先程まで書いたことは、別に秘密とは言えません。確認事項に過ぎませんでした。

春ゴルフ独自の秘密があるのです。
大叩きする原因は、芝生です。

この国のほとんどのゴルフコースのフェアウェイとラフは、夏芝の高麗芝か野芝です。芝生は緑になりましたか、と気にする人がいるように、夏芝は冬の間は休眠して枯れたようになっています。茶色の世界の背景になっているわけです。

休眠中の芝生は、成長しませんので、秋のコースメンテナンスで芝刈りをやめます。これを刈り止めと呼びます。その時の芝生の長さのまま、冬を超すのですが…… 数ヶ月の間に、芝生は少しずつ薄くなっていくのです。

厳密に言えば、薄くなっていくのではなく、勢いを失って、密度が落ちるのですが、結果として、その上にあるボールは、夏場と比べると最大で5mmぐらいは沈むようになるのです。夏芝は茎が強く、葉も強いので、ボールを浮かせるようなライになる傾向がありますが、冬を越えた春先は、その傾向が最も弱くなるというわけです。

ボールが沈み気味になっているライは、なかなか思い通りにジャストミートするのが難しいことは、ゴルファーならわかるはずです。

問題なのは、見た目では、ボールが沈んでいることがわかりづらいことです。茶色なだけで、きれいに見えるフェアウェイの芝生の上のボールは、夏場と変わりなく見えるのです。だから、ミスショットをする確率が上がっていくわけです。

このことに敏感になって、ストロークの前に沈み具合に注意することで、大叩きを回避できる可能性が上がります。

ただし、それは実力が伴ってのことです。沈んでいるから、プランBだと、選択肢を変えたり、意識してボールを拾って打ったり…… 上級者のゴルフは楽しいものです。

3月のゴルフコースは、ゴルファーを誘うものです。特に、桜が咲くと、手招きされるようにコースに行きたくなるのがゴルファー心理です。多くのゴルファーが知らないのですが、そこは1年の中で、最も大叩きしやすい罠が張られているのです。

このエッセイを読んだことで、余計に意識して春ゴルフを難しくしてしまうゴルファーも少なからずいると想像できます。沈んだボールの打ち方なんて存在しません。ジャストミートするように、普通に打つしかありません。

大叩きはゴルファーを絶望させますが、悩むことはないのです。夏芝が芽生えて、元気になれば、沈んだボールは特殊なケースでしか遭遇しなくなります。あっという間に、そういう季節が訪れます。

四季があることで気分転換できるし、季節を愛でることができるのだと開き直って、春ゴルフを楽しみましょう。

罠をすり抜けて、または、上手に利用すらして、そういうコンディションでも、ベストスコアを更新するゴルファーだっているところが、ゴルフの面白さなのです。

どちらにせよ、ゴルフコースに行かなければ、何も始まらないのです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。

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