打打打坐 第57回【旗色をうかがってゴルフ】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時:2021年5月21日 06時00分
フラッグに注目する
遠くからでもグリーンの位置やホールの位置がわかるように旗竿があるのが、ゴルフでは絶対のシーンです。図形化してゴルフをデザインする際も、旗竿はよく使われます。
2019年のルールの大改革で、旗竿をホールに挿したまま、グリーンでパットすることができるようになりました。当初は戸惑いがあり、抜く派と抜かない派の論争などもありましたが、プロレベルの競技では基本は抜き、一般的なレベルのゴルフでは、抜かないままでプレーするというスタイルが定着しつつあります。
「ピンの位置が」とか、「ピンフラッグはそのままで」とか、表記していますが…… 正式なゴルフ用語では、旗竿です。日本語版のゴルフ規則には、ピンという用語は一切出てきません。最終的には英語版規則が有効になる決まりがあるので、そちらを確認してみると「Flagstick」、フラッグスティックが正式な呼び名だとわかります。
とは言っても、ゴルフの専門誌でも、ピンやピンフラッグという単語は使用しています。理解しやすいからです。同じことを書くにも、フラッグスティックという単語を使えば、読み手は、そこで、一瞬、止まってしまうだろうと推測します。
そもそも、ピンと呼ぶ慣習は、ゴルフの近代史まで遡ります。ホールとティー(当時は一緒だった)の目印にポールを立て始めて、目立つように布をフラッグのようにつけた工夫が、まず広まりました。ティーとグリーンがそれぞれ独立するタイミングで、一部のゴルフコースが、フラッグが風で飛んでしまったり、すぐに傷んでしまうことから、風が抜けて、長持ちするからとポールの頭にフラッグの代わりにカゴを付けたのです。
カゴが乗ったポールは、まち針のように見えたのでピンと呼ぶようになって、それが広まったという説が有力です。現在でも、ごく少数のゴルフフコースがカゴを付けた旗竿を採用しています。
プレー後に、そのコースの旗の話をしても、ちんぷんかんぷんだったりするものです。少なくとも18回は見つめて、近距離で観察もしたはずなのに、何色だったか? コースのロゴがプリントされていたか? 質問しても、答えられないのが普通かもしれません。しかし、フラッグに注目することは、ゴルフの面白さを増すのです。無視し続けるのは、もったいない話です。
2019年のルールの大改革で、旗竿をホールに挿したまま、グリーンでパットすることができるようになりました。当初は戸惑いがあり、抜く派と抜かない派の論争などもありましたが、プロレベルの競技では基本は抜き、一般的なレベルのゴルフでは、抜かないままでプレーするというスタイルが定着しつつあります。
「ピンの位置が」とか、「ピンフラッグはそのままで」とか、表記していますが…… 正式なゴルフ用語では、旗竿です。日本語版のゴルフ規則には、ピンという用語は一切出てきません。最終的には英語版規則が有効になる決まりがあるので、そちらを確認してみると「Flagstick」、フラッグスティックが正式な呼び名だとわかります。
とは言っても、ゴルフの専門誌でも、ピンやピンフラッグという単語は使用しています。理解しやすいからです。同じことを書くにも、フラッグスティックという単語を使えば、読み手は、そこで、一瞬、止まってしまうだろうと推測します。
そもそも、ピンと呼ぶ慣習は、ゴルフの近代史まで遡ります。ホールとティー(当時は一緒だった)の目印にポールを立て始めて、目立つように布をフラッグのようにつけた工夫が、まず広まりました。ティーとグリーンがそれぞれ独立するタイミングで、一部のゴルフコースが、フラッグが風で飛んでしまったり、すぐに傷んでしまうことから、風が抜けて、長持ちするからとポールの頭にフラッグの代わりにカゴを付けたのです。
カゴが乗ったポールは、まち針のように見えたのでピンと呼ぶようになって、それが広まったという説が有力です。現在でも、ごく少数のゴルフフコースがカゴを付けた旗竿を採用しています。
プレー後に、そのコースの旗の話をしても、ちんぷんかんぷんだったりするものです。少なくとも18回は見つめて、近距離で観察もしたはずなのに、何色だったか? コースのロゴがプリントされていたか? 質問しても、答えられないのが普通かもしれません。しかし、フラッグに注目することは、ゴルフの面白さを増すのです。無視し続けるのは、もったいない話です。
フラッグは多弁である
現在、ほとんどのコースのフラッグは、四角形です。
と書いたのは、まだゴルフの大衆化が進んでいなかった昭和初期の日本のコースでは、フラッグは三角形のペナント型が主流だったからです。現在も、歴史があるコースなどで、期間限定で古いフラッグを復活させるイベントをしています。
三角形のほうが風に敏感に反応するから採用されたという説もありますが、僕が当時製造していた企業の方に取材したときは、三角形のほうが四角形よりも面積が小さい分、安く出来たからだと聞きました。
ゴルフの大衆化が進んでいく中で、高級感を出すためにフラッグが四角形になっていった、という説を採用したいと思います。
昭和の終わりのバブル期に突入していく中で、ゴルフコースは爆発的に増加します。
多くのコースが名門になろうと努力をして、隣のコースに負けないように頑張ったというたくさんの物語が生まれましたが、この頃、四角形のフラッグには、コースのロゴがプリントされていました。また、フラッグの素材も、帆布のような丈夫な布から樹脂で加工されたより持ちが良いものに変わりました。竿の部分は、1フィートごとに白と黒に塗り分けられていたクラシックなものが流行しました。
令和のゴルフコースでは、フラッグは無地であるのが当たり前になり、竿も一色なのが普通です。
旗竿は消耗品で、雨風に晒されて、新品にしてもすぐに傷むのです。コースによって違いますが、半年から1年がフラッグの寿命だと言われています。消耗品に余計なお金をつぎ込むのは、ゴルファーへのサービスとしてはNGだという風潮は、いつの間にかスタンダードになったような気がします。
風を読む上級ゴルファーには、適当に馴染んだフラッグが好まれます。新品のフラッグは、固いので、風に鈍感だからです。
風になびくフラッグは、見えないはずの風が見える情報源の一つです。風を読む上級ゴルファーに、プレー後にフラッグの質問をすると、例外なく、詳細な答えが返ってきます。スタートホールでフラッグが固めだと気が付いたとか、色が青いと遠く見えるので嫌だとか、これだけでゴルフ談義が出来ます。
旗竿のフラッグは多弁なのです。
と書いたのは、まだゴルフの大衆化が進んでいなかった昭和初期の日本のコースでは、フラッグは三角形のペナント型が主流だったからです。現在も、歴史があるコースなどで、期間限定で古いフラッグを復活させるイベントをしています。
三角形のほうが風に敏感に反応するから採用されたという説もありますが、僕が当時製造していた企業の方に取材したときは、三角形のほうが四角形よりも面積が小さい分、安く出来たからだと聞きました。
ゴルフの大衆化が進んでいく中で、高級感を出すためにフラッグが四角形になっていった、という説を採用したいと思います。
昭和の終わりのバブル期に突入していく中で、ゴルフコースは爆発的に増加します。
多くのコースが名門になろうと努力をして、隣のコースに負けないように頑張ったというたくさんの物語が生まれましたが、この頃、四角形のフラッグには、コースのロゴがプリントされていました。また、フラッグの素材も、帆布のような丈夫な布から樹脂で加工されたより持ちが良いものに変わりました。竿の部分は、1フィートごとに白と黒に塗り分けられていたクラシックなものが流行しました。
令和のゴルフコースでは、フラッグは無地であるのが当たり前になり、竿も一色なのが普通です。
旗竿は消耗品で、雨風に晒されて、新品にしてもすぐに傷むのです。コースによって違いますが、半年から1年がフラッグの寿命だと言われています。消耗品に余計なお金をつぎ込むのは、ゴルファーへのサービスとしてはNGだという風潮は、いつの間にかスタンダードになったような気がします。
風を読む上級ゴルファーには、適当に馴染んだフラッグが好まれます。新品のフラッグは、固いので、風に鈍感だからです。
風になびくフラッグは、見えないはずの風が見える情報源の一つです。風を読む上級ゴルファーに、プレー後にフラッグの質問をすると、例外なく、詳細な答えが返ってきます。スタートホールでフラッグが固めだと気が付いたとか、色が青いと遠く見えるので嫌だとか、これだけでゴルフ談義が出来ます。
旗竿のフラッグは多弁なのです。
旗色を見極める
その昔、野戦といわれる合戦では、大将は高い場所から戦場を見下ろして指示を出しました。各部隊の決められた兵士はそれぞれの旗を背中に刺して戦い、部隊の位置を明確にするための幟を掲げる役割の兵士もいました。大将は旗を見ながら戦況を見極めました。
状況が上手くいっていないことを、旗色が悪いと表現するのは、昔の戦が語源です。
セルフプレーが当たり前の時代になって久しいですが、現在のこの国のゴルフコースの何割かは、フラッグの色でピンの位置を知らせるようにしています。赤いフラッグだと、ホールの位置は手前。白いフラッグだと、ホールの位置は真ん中。青いフラッグだとホールの位置は奥。というのが多いと言われています。
フラッグの色が変わると気が散る、と嫌がるゴルファーもいます。僕は、このサービスに助けられていますので、大歓迎です。
マッスルバックのアイアンを使用していた頃は、赤いフラッグだとテンションが上がりました。マッスルバックはスピンコントロールがしやすいのが特徴ですので、止めるシーンは得意でした。今は、ぶっ飛び系アイアンを使用しているので、以前ほど得意という意識はありませんが、相変わらず、赤いフラッグが好きです。
苦労するのは青いフラッグです。青いフラッグは、他のフラッグと比べると距離感が鈍くなるような気がするからです。無理をせずに、確実に真ん中で、と考えたりします。
意外に、白いフラッグが好きだというゴルファーが多いのは、白が目立つことと、慣れだと思われます。個人的には、白旗は諦めたときに振るものというイメージがあって、白いフラッグは油断ならない、と考えたりします。
フラッグのカラーでホールの位置を示す多くのコースが、バランス良くホールの位置を決めています。手前6、中央6、奥6というような感じです。しかし、特別な競技の日などは、ホールロケーションを難しくする意味もあって、バランスを無視していることもあります。「今日は、赤ばかりだなぁ」とかいうようなことがあるわけです。
難しいコンディションほど、嬉しくなって、楽しめるようになれば、立派なゴルファーになっている証拠だという説もあります。それはそれとして、ゴルフを楽しめば良いのです。
旗竿を意識すれば、色々なことが見えてきます。個人的には、風がないときのシナッとして動かないフラッグの旗竿が好きです。安心します。
ゴルフはプレーすることだけではなく、用具を新調したりするような準備から始まっていると僕は考えています。調子に乗ってゴルフに行きすぎて、家人の機嫌が悪くなるという旗色が悪いなんてことを含めれば、ゴルファーはコース以外でも、旗竿を見て、様々な情報を得ていることになるのです。
ピンと言い慣れている旗竿。フラッグに注目して、ポール部分にも注目してみることをオススメします。旗竿は色々なことをゴルファーに伝えます。旗竿を見て、ピンときたら…… お後がよろしいようで。
状況が上手くいっていないことを、旗色が悪いと表現するのは、昔の戦が語源です。
セルフプレーが当たり前の時代になって久しいですが、現在のこの国のゴルフコースの何割かは、フラッグの色でピンの位置を知らせるようにしています。赤いフラッグだと、ホールの位置は手前。白いフラッグだと、ホールの位置は真ん中。青いフラッグだとホールの位置は奥。というのが多いと言われています。
フラッグの色が変わると気が散る、と嫌がるゴルファーもいます。僕は、このサービスに助けられていますので、大歓迎です。
マッスルバックのアイアンを使用していた頃は、赤いフラッグだとテンションが上がりました。マッスルバックはスピンコントロールがしやすいのが特徴ですので、止めるシーンは得意でした。今は、ぶっ飛び系アイアンを使用しているので、以前ほど得意という意識はありませんが、相変わらず、赤いフラッグが好きです。
苦労するのは青いフラッグです。青いフラッグは、他のフラッグと比べると距離感が鈍くなるような気がするからです。無理をせずに、確実に真ん中で、と考えたりします。
意外に、白いフラッグが好きだというゴルファーが多いのは、白が目立つことと、慣れだと思われます。個人的には、白旗は諦めたときに振るものというイメージがあって、白いフラッグは油断ならない、と考えたりします。
フラッグのカラーでホールの位置を示す多くのコースが、バランス良くホールの位置を決めています。手前6、中央6、奥6というような感じです。しかし、特別な競技の日などは、ホールロケーションを難しくする意味もあって、バランスを無視していることもあります。「今日は、赤ばかりだなぁ」とかいうようなことがあるわけです。
難しいコンディションほど、嬉しくなって、楽しめるようになれば、立派なゴルファーになっている証拠だという説もあります。それはそれとして、ゴルフを楽しめば良いのです。
旗竿を意識すれば、色々なことが見えてきます。個人的には、風がないときのシナッとして動かないフラッグの旗竿が好きです。安心します。
ゴルフはプレーすることだけではなく、用具を新調したりするような準備から始まっていると僕は考えています。調子に乗ってゴルフに行きすぎて、家人の機嫌が悪くなるという旗色が悪いなんてことを含めれば、ゴルファーはコース以外でも、旗竿を見て、様々な情報を得ていることになるのです。
ピンと言い慣れている旗竿。フラッグに注目して、ポール部分にも注目してみることをオススメします。旗竿は色々なことをゴルファーに伝えます。旗竿を見て、ピンときたら…… お後がよろしいようで。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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連載
ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”