打打打坐 第60回【褒め言葉とゴルファー】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時:2021年6月11日 06時00分
ゴルフは沈黙が基本
ゴルフは孤独なゲームです。基本的には個人戦ですし、キャディ以外と相談することは規則で禁止されていますし、全てが自分の責任になるからです。
同じ組の同伴者は、その日、その時の運命共同体のメンバーです。仲間でもあり、目の前の敵でもあり、観戦者でもあります。孤独なゲームだからこそ、同伴者は切り離すことが出来ない特別な存在になります。
書くまでもなく、ゴルフはなかなか思い通りには行きません。様々なミスが出て、それに運と不運がからまって、ゴルフというゲームを面白くしています。
ゴルフが偉大なゲームになった理由の一つが、失敗した仲間を沈黙で励ますという文化を取り入れたことです。思い通りに行かなかったストロークを見れば、慰めたくなったり、ときにはアドバイスをしたくなったりするのが人情ですが、ゴルファー同士であれば、沈黙でエールを交わすことができるのです。
ミスをしたことで、悔しくて、動揺しているのは誰よりも本人です。喜怒哀楽が入り交じって、マイナスの興奮状態にある人には、どんな言葉も暴力になってしまう可能性があるのです。
しかし、黙々とサイレントのままプレーしているだけは、ゴルフは孤独で寂しいだけのゲームになってしまいます。良いストロークは、賞賛するという慣習があるからこそ、沈黙のエールが活かされて、ゴルフは成立します。
上級ゴルファーとして、リスペクトされる人は、例外なく、この沈黙の励ましと賞賛が上手です。逆に、初級レベルのゴルファーにとって、沈黙の励ましはすぐに出来ても、賞賛のかけ声を発するのはかなり難易度が高く、戸惑ってしまうようです。ゴルフ歴20年ぐらいでも、そのレベルで迷路に入ったままの人もいます。
ゴルフは時として、未熟を晒す悪魔のゲームになるのです。
同じ組の同伴者は、その日、その時の運命共同体のメンバーです。仲間でもあり、目の前の敵でもあり、観戦者でもあります。孤独なゲームだからこそ、同伴者は切り離すことが出来ない特別な存在になります。
書くまでもなく、ゴルフはなかなか思い通りには行きません。様々なミスが出て、それに運と不運がからまって、ゴルフというゲームを面白くしています。
ゴルフが偉大なゲームになった理由の一つが、失敗した仲間を沈黙で励ますという文化を取り入れたことです。思い通りに行かなかったストロークを見れば、慰めたくなったり、ときにはアドバイスをしたくなったりするのが人情ですが、ゴルファー同士であれば、沈黙でエールを交わすことができるのです。
ミスをしたことで、悔しくて、動揺しているのは誰よりも本人です。喜怒哀楽が入り交じって、マイナスの興奮状態にある人には、どんな言葉も暴力になってしまう可能性があるのです。
しかし、黙々とサイレントのままプレーしているだけは、ゴルフは孤独で寂しいだけのゲームになってしまいます。良いストロークは、賞賛するという慣習があるからこそ、沈黙のエールが活かされて、ゴルフは成立します。
上級ゴルファーとして、リスペクトされる人は、例外なく、この沈黙の励ましと賞賛が上手です。逆に、初級レベルのゴルファーにとって、沈黙の励ましはすぐに出来ても、賞賛のかけ声を発するのはかなり難易度が高く、戸惑ってしまうようです。ゴルフ歴20年ぐらいでも、そのレベルで迷路に入ったままの人もいます。
ゴルフは時として、未熟を晒す悪魔のゲームになるのです。
賞賛して、賞賛されて
「ナイスショット」問題というものがあります。これをこじらせると、多岐にわたる呪いのような言葉になってゴルファーを苦しませます。
初心者から見れば、ちゃんとボールが飛ぶだけでナイスショットに感じてしまうものです。ここだ! とナイスショットと声をかけたら、ボールはググッと曲がってOBに消えていくこともあります。打った人から睨まれて、空気が悪くなるなんてことがあると、次からは声が出せなくなり、「良いショットの時はちゃんと声を出しなさい」なんて説教をされる始末……
打ってすぐに、声をかけなくとも良いのです。結果を見て、もしくは、他の同伴者の様子を見てから、「ナイスショットです」と声をかけても全く問題はありません。そんなふうに教われば、経験値を上げながら、賞賛のかけ声が上手くなっていけるのですが、睨むような先輩には、実は自分に余裕がないのです。反面教師として、その存在に感謝しましょう。
また、ナイスショットは和製英語だから、そもそも間違いということで、言わなくとも良い、というふうにこじれてしまう人もいます。確かに、ナイスという英語には運が良かったというニュアンスがあり、実力ではないという馬鹿にした用語になるという説がありますが、目の前の同伴者が、悪意なく使用しているかどうかは、わかるはずです。英語のニュアンスなんて関係なしに、ナイスは用語として定着しているの使用して良いのです。
賞賛する快感もありますし、賞賛されることも快感です。できれば、上手に使用し合って、ゴルフを何倍も楽しめるようにするのが正解です。
無理をしない範囲で、使える賞賛のかけ声を増やしましょう。
ナイスショットは、ほぼ全てのショットに対応可能です。
ナイスオンは、グリーンに乗った結果を見て使えます。ただし、TPOでピンに近い場合だけに使うという閉鎖的な文化もあります。普通は乗ればナイスオンで問題ありません。
ナイスアウトは、バンカーから脱出したり、林の中から上手く出せた場合に使用します。
アプローチが上手くいったときに、ナイスアプローチを使用できます。
主にグリーン上で、距離感が良いときにナイスタッチというかけ声が使えます。本当に近いときだけに限定したほうが、経験値が上がるまでは無難かもしれません。
パットの出来が良い場合などは、ナイスパットも使います。
ナイスインは、ボールがホールに入ったときに使います。これは、明確にわかることなので、失敗がないかけ声です。逆に、その時にかけ声を発しないと目立つこともあるので、小さな声でも良いので相手に聞こえるように発声します。
ナイスパー、ナイスバーディーは、ナイスインの代わりに使えるかけ声です。ホールアウト後のインターバルで、スコアを確認したときに、後出しで発声してもOKです。
目上の同伴者には「ナイスショットです」と、です、を付ける文化が、体育会ゴルフ部出身者を中心として広まっています。相手によりますが、余裕があれば「です付き」を使用するのもアリです。
ゴルファー同士の潤滑油が、賞賛のかけ声です。多すぎてドロドロにならないように、少なすぎてギスギスしないように、自分らしい適量を覚えましょう。賞賛し合うことで、ゴルファーの絆はより深くなっていくのです。
初心者から見れば、ちゃんとボールが飛ぶだけでナイスショットに感じてしまうものです。ここだ! とナイスショットと声をかけたら、ボールはググッと曲がってOBに消えていくこともあります。打った人から睨まれて、空気が悪くなるなんてことがあると、次からは声が出せなくなり、「良いショットの時はちゃんと声を出しなさい」なんて説教をされる始末……
打ってすぐに、声をかけなくとも良いのです。結果を見て、もしくは、他の同伴者の様子を見てから、「ナイスショットです」と声をかけても全く問題はありません。そんなふうに教われば、経験値を上げながら、賞賛のかけ声が上手くなっていけるのですが、睨むような先輩には、実は自分に余裕がないのです。反面教師として、その存在に感謝しましょう。
また、ナイスショットは和製英語だから、そもそも間違いということで、言わなくとも良い、というふうにこじれてしまう人もいます。確かに、ナイスという英語には運が良かったというニュアンスがあり、実力ではないという馬鹿にした用語になるという説がありますが、目の前の同伴者が、悪意なく使用しているかどうかは、わかるはずです。英語のニュアンスなんて関係なしに、ナイスは用語として定着しているの使用して良いのです。
賞賛する快感もありますし、賞賛されることも快感です。できれば、上手に使用し合って、ゴルフを何倍も楽しめるようにするのが正解です。
無理をしない範囲で、使える賞賛のかけ声を増やしましょう。
ナイスショットは、ほぼ全てのショットに対応可能です。
ナイスオンは、グリーンに乗った結果を見て使えます。ただし、TPOでピンに近い場合だけに使うという閉鎖的な文化もあります。普通は乗ればナイスオンで問題ありません。
ナイスアウトは、バンカーから脱出したり、林の中から上手く出せた場合に使用します。
アプローチが上手くいったときに、ナイスアプローチを使用できます。
主にグリーン上で、距離感が良いときにナイスタッチというかけ声が使えます。本当に近いときだけに限定したほうが、経験値が上がるまでは無難かもしれません。
パットの出来が良い場合などは、ナイスパットも使います。
ナイスインは、ボールがホールに入ったときに使います。これは、明確にわかることなので、失敗がないかけ声です。逆に、その時にかけ声を発しないと目立つこともあるので、小さな声でも良いので相手に聞こえるように発声します。
ナイスパー、ナイスバーディーは、ナイスインの代わりに使えるかけ声です。ホールアウト後のインターバルで、スコアを確認したときに、後出しで発声してもOKです。
目上の同伴者には「ナイスショットです」と、です、を付ける文化が、体育会ゴルフ部出身者を中心として広まっています。相手によりますが、余裕があれば「です付き」を使用するのもアリです。
ゴルファー同士の潤滑油が、賞賛のかけ声です。多すぎてドロドロにならないように、少なすぎてギスギスしないように、自分らしい適量を覚えましょう。賞賛し合うことで、ゴルファーの絆はより深くなっていくのです。
秘技を使い熟そう
ゴルフをする人たちは、十人十色です。ナイスショット一つ取っても、最高の当たりが狙い通りな場所に止まらなければ駄目という完璧主義の人もいれば、OBだとしても、素晴らしい弾道が打てたことに満足できる人もいます。前者へのナイスショットは気を使いますし、後者も同様で、考え出すと面倒臭くなってきてきます。
応用編として、秘儀を教えたいと思います。
美しい弾道のショットや、ショットして素晴らしいという意味で「ビュート(beaut beautifulの略)」は使えます。米国の友人が使うので、ニュアンスを確認して使うようになりました。中学英語ぐらいが理解できれば、何となく褒められたとわかるので、相手を選びません。
ショットを賞賛するときに「ナイスボール」も使います。良い球だね、というニュアンスは、ほぼ伝わります。
オールマイティーなかけ声としては、「グッ!」も使います。GOODです。イイネという全てのシーンで使えますし、意味も通じます。親しい間柄であれば、親愛も込めてサムアップをしながら目を合わせて「GOOD」とかけ声をかけます。
弾道を確認できないときなどは、「良い音だね!」も使います。いわゆる打音は、ボールやクラブによって違いますが、少し慣れれば芯に当たった響きが良い打音は聞き取れます。仮にOBにボールが行ってしまったとしても、音を褒めているので不正解にならないのです。結果は無関係に、ショットの内容に満足するタイプのゴルファーには、最上級の褒め言葉として機能します。
最終ホールを終えて、単純に良いスコアだったとか、強風や雨などのバッドコンディションなのに大叩きはしなかった場合になどに「ナイスプレー」を使います。よく知っている相手であるほど、その日のゴルフの内容の善し悪しはわかるので、さり気なく褒めたいときに、重宝するのがナイスプレーです。
普通の言葉で賞賛することもあります。
「よく我慢したね」
「(乗らなかったけど)距離ピッタリ」
勇気が必要なストロークや、パットなどでしっかり打ち過ぎてオーバーしたときには「ナイストライ」
誰にでも通じて、万能な褒め言葉はありません。褒めたつもりで不快な思いをさせないために、静かにしているというのも一つのハウツーではありますが、いつかは使い熟す必要がある15本目のクラブだと考えて、恐れずに挑戦したほうが、ゴルフライフは充実します。
最後は気持ちです。ゴルフは良くも悪くも、人を剥き出しにするものです。気持ちを伝えようとする心意気があれば、失敗しても、ちゃんと伝わります。
最も駄目な例は、スコアも立派で、持ち物も立派なのに、同伴者を褒めることが、それらと全く比例せずに下手なことです。その中でも、全く声をかけられないのは、最低です。伝わらない気持ちは、時として悪意になってしまうからです。
努力をすれば、自分をわかってもらえるところも、ゴルフの素晴らしい副産物です。褒め言葉のかけ声を使い熟す難易度は、9番アイアンを使い熟すよりも少し簡単なレベルです。
たかが褒め言葉。されど、褒め言葉なのです。
応用編として、秘儀を教えたいと思います。
美しい弾道のショットや、ショットして素晴らしいという意味で「ビュート(beaut beautifulの略)」は使えます。米国の友人が使うので、ニュアンスを確認して使うようになりました。中学英語ぐらいが理解できれば、何となく褒められたとわかるので、相手を選びません。
ショットを賞賛するときに「ナイスボール」も使います。良い球だね、というニュアンスは、ほぼ伝わります。
オールマイティーなかけ声としては、「グッ!」も使います。GOODです。イイネという全てのシーンで使えますし、意味も通じます。親しい間柄であれば、親愛も込めてサムアップをしながら目を合わせて「GOOD」とかけ声をかけます。
弾道を確認できないときなどは、「良い音だね!」も使います。いわゆる打音は、ボールやクラブによって違いますが、少し慣れれば芯に当たった響きが良い打音は聞き取れます。仮にOBにボールが行ってしまったとしても、音を褒めているので不正解にならないのです。結果は無関係に、ショットの内容に満足するタイプのゴルファーには、最上級の褒め言葉として機能します。
最終ホールを終えて、単純に良いスコアだったとか、強風や雨などのバッドコンディションなのに大叩きはしなかった場合になどに「ナイスプレー」を使います。よく知っている相手であるほど、その日のゴルフの内容の善し悪しはわかるので、さり気なく褒めたいときに、重宝するのがナイスプレーです。
普通の言葉で賞賛することもあります。
「よく我慢したね」
「(乗らなかったけど)距離ピッタリ」
勇気が必要なストロークや、パットなどでしっかり打ち過ぎてオーバーしたときには「ナイストライ」
誰にでも通じて、万能な褒め言葉はありません。褒めたつもりで不快な思いをさせないために、静かにしているというのも一つのハウツーではありますが、いつかは使い熟す必要がある15本目のクラブだと考えて、恐れずに挑戦したほうが、ゴルフライフは充実します。
最後は気持ちです。ゴルフは良くも悪くも、人を剥き出しにするものです。気持ちを伝えようとする心意気があれば、失敗しても、ちゃんと伝わります。
最も駄目な例は、スコアも立派で、持ち物も立派なのに、同伴者を褒めることが、それらと全く比例せずに下手なことです。その中でも、全く声をかけられないのは、最低です。伝わらない気持ちは、時として悪意になってしまうからです。
努力をすれば、自分をわかってもらえるところも、ゴルフの素晴らしい副産物です。褒め言葉のかけ声を使い熟す難易度は、9番アイアンを使い熟すよりも少し簡単なレベルです。
たかが褒め言葉。されど、褒め言葉なのです。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”