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    打打打坐 第64回【誰でもできるレディゴルフ】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2021年7月9日 06時00分

    • ゴルフライフ
    目次 / index
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    スロープレーは沈黙の難病

    ゴルフの最高に面白いポイントでもあり、最大のウィークポイントでもあるのが、ゴルフコースの広大さです。東京ドーム数十個分の土地を独り占めするようにしてプレーする快感は、ゴルフ以外では体験できません。しかし、広大な面積全てがゴルフコースを作るのに適しているという幸運は、ごく少数しかないので、ゴルフコースは黎明期より土地不足という宿命を負っています。

    王様でもない限り、ゴルフコースを独り占めするのは無理です。たくさんの人で、共有して、諸々の費用を割り勘にすることで、ゴルフコースは成り立っています。そのゲームの特性上、一カ所を占有するのではなく、列を作って並んで、順番に端から端までプレーするのがゴルフだと言えます。

    列を作ってレールの上を進んでいくわけですから、レール上で事故があれば、そこで詰まってしまって、渋滞してしまいます。スロープレーが嫌悪されるのは、列がスムーズに動かなくなって、あらゆる人の時間を無駄に奪うことになるからです。

    スロープレーが怖いのは、自覚症状がない病気のように、知らずにどんどん重症化することです。誤解を恐れずに書きますが、ゴルフをしている人の半分ぐらいは、軽症も含めたスロープレーヤーです。
    「オレは、ハーフ2時間ぐらいではプレーできるから違うね」
    と思った人は、黄色信号で、ちゃんとした検査が必要です。

    ゴルフ規則を読むと、時間について触れているのは、ストロークの1人の持ち時間は40秒だということぐらいです。自分の番になったら40秒以内に打ちましょう、ということなのですが、まず、これを毎ショットオーバーしている人がたくさんいます。自分の番になってから、クラブを選んで、ボールの所に行って、素振りをして、方向を確認して、アドレスに入って…… 打つ前に40秒経過でアウトです。

    ハーフを2時間でプレーしてください、というスローガンは、色々なところで目にする一つの基準ですが、こういう基準は『最低限』だったりするのです。ゴルフ規則では、前の組に離されることなくプレーするように、と書かれていて、時間については書かれていません。

    前の組を追い抜くことは、原則としてできませんので、前の組がハーフ3時間かかれば、続く組も3時間かかってしまいます。しかし、1時間半でプレーする前の組に追いつかなければ、2時間だからセーフとかではなく、正式には2時間であろうが、前の組に遅れている組ということになり、スロープレーの要素があると指摘されても反論は出来ません。列になって進んでいくというゴルフの宿命を考えれば、速度アップに限界があるゴルフは、上級レベルではありません。3時間かかっても、1時間半で回れても、ペースに影響されずに、同じようにプレーできるのが上級レベルのゴルフです。

    走らなくともプレーは早くなる

    自分の順番になったら40秒で打つ、というところで挫折して、耳を塞ぐことで知らなかったフリをする悪人に、ゴルフの神様は微笑みません。

    例えば、オートティーアップ式の練習場の場合、1分間に3球ぐらいのペースで多くのゴルファーがボールを打っています。約20秒に1球。素振りはせずに、ボールをセットしたら、打つ、という単純なペースで練習をしています。コースだからと、打つのに何十秒もかければ、練習場のテンポやペースと違いすぎるので、再現するのは難しいくなることは明らかです。無駄なく20秒程度で打つことで、練習場で得た実力が発揮しやすくなるのです。

    カートに乗るときに、使っていたクラブをバッグに戻して、手ぶらでカートに乗ることが習慣になっている人がいます。自分が乗ればカートが動かさせるのだとしたら、クラブを持ったまま、カートに乗ることで時短になります。たった数十秒ですが、クラブを戻している時間は、後ろの組の人を待たせている無駄な時間です。そんな無駄を、1ホールで何度かやらかしていることもありますし、18ホールで何度もやってしまうことを計算すれば、あっという間に10分ぐらいの時間になります。塵も積もれば山となる、のです。

    次のショットのクラブを選択するときに、前のショットで使ったクラブを戻すようにすれば、2回の動作が、1回で済みます。時短の意識を持てば、それ以外にも、1回で済むのに非効率に余計な往復をしているような動作を減らそうという発想が出てきます。気が付いて、効率の良い動作を採用していくことで、プレーの無駄な時間を減らすことでペースアップができます。

    これぐらいは良いだろう、という無駄は、どんどん重なって、スロープレー病を重症化させていくのです。スロープレーのプレーヤーは、どんなにスコアが良くとも、偉い人であっても、自己中心的で一緒にゴルフをしたくないというレッテルを貼られる可能性が上がってしまうのです。甘えを自覚して、戒めることができれば、ゴルフは易しくなりますし、仲間も増えるというものです。

    レディとは準備することなり

    レディゴルフは、世界中で奨励されています。準備ができた人から、どんどんプレーして、プレー時間を短縮しましょう、という提案です。
    レディは、準備するという意味です。

    遠方先打にこだわらず、打てる人から打っても良いですよ、というのは、準備もさることながら、飛ばない人、または、前の組がいるところまで届かない人から打ってしまえば、その時間が時短になるという発想です。

    自分の順番になってから準備をするのではなく、その前に、準備を済ませて、すぐに打てるようにしておくのがレディゴルフの基本です。

    素振りをたくさんしないと不安になる人は、準備中に素振りをしておくのです。自分の打つ順番が来てからやる無駄を排除しつつ、やりたいことをしっかりとしておくのは、自分にとっても、他の人たちにとってもWinWinということになります。

    先手先手でゴルフをすることに慣れてくると、素早くプレーできるだけではなく、余裕を作ることも出来るようになってきます。それは、時間的なものというよりも、精神的なものです。

    考えてみるとわかりますが、前の組は見えなってしまって、後ろの組は、毎ショット自分たちのプレーを見ながら待っているというシーンが続くのは、普通の神経であれば、強烈なプレッシャーを感じて、平常心は保てないものです。楽しいゴルフには、なかなかなりません。

    急いでいるつもりとはいっても、同じ組に目上のスロープレーヤーがいたりすると、注意も出来ずに、速度も上がりません。精神的なスタミナがどんどん減って、燃料切れのゴルフになってしまうのがオチなのです。

    レディゴルフを意識して、しっかりと身につけましょう。

    前の組が遅くて、待ち時間が避けられない宿命であれば、その待ち時間を上手く利用するのが正解です。自分が準備完了になったら、あとは自分の時間として使えると考えれば、かなりの贅沢だとわかるはずです。

    効率的な所作でゴルフをすることは、例外なく好印象を得ることに繋がります。

    レディゴルフの良いところは、ゴルフの所作が洗練されることで、上手なゴルファーに見えるようになり、実際にスコアアップも出来てしまうところです。ゴルフは気持ちでやるという部分が大なり小なりあります。その気持ちを作る意味でも、レディゴルフは有効なのです。

    自分が前の組に待たされているときに、よく観察して、反面教師を探しましょう。前の組に問題がなく、被害者だったりすることもありますが、スロープレーヤーには、遅くなる原因となる無駄な動きや奇妙な癖が、必ずあることを知りましょう。

    “ゴルフは自分以外が全て先生になるから面白い”という格言がありますが、謙虚に学び続けることはゴルフの醍醐味です。学んだことを実践できるという意味でも、レディゴルフは簡単で、効果もすぐに出ます。とにかく、レディゴルフをスルーするのはもったいないのです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
    連載

    ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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