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    世界一のドラコン王を「目指す人」と「サポートする企業」 豊永智大プロと株式会社ライトカフェの「航海」は、これからが本番

    文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト) 写真/相田克己

    配信日時:2021年7月13日 06時00分

    • ゴルフライフ
    目次 / index
    株式会社ライトカフェに所属する豊永智大プロ
    株式会社ライトカフェに所属する豊永智大プロ
    • シャフトがしなりすぎて見えない豊永プロの驚愕スイング
    この記事の写真 13 枚を見る
    ゴルフの世界には、スコアではなく飛距離を競い合うロングドライブの大会もある。

    とはいえ、飛距離のみではなく、方向性や正確性も同時に問われる。会場には左右45〜50Y幅の「グリッド」がラインで示され、グリッドを捉えられなければファウルとされて、どんなに飛ばしても記録にはならない。トライできるのは6球のみだ。

    数年前のあるとき、飛ばしに飽くなき魅力を感じてロングドライブの大会にアマチュアとして挑み続けてきた一人のミドルエイジのビジネスマンが、一人の30歳前後の見慣れない選手の飛ばしっぷりを見て心が震え、無限の可能性を感じ取ったそうだ。

    「ウチの会社でキミをサポートしよう」

    それが、ロングドライブ日本一、豊永智大プロと、ウェブやスマホのアプリ開発を手掛ける株式会社ライトカフェの「航海」の始まりだった。声をかけたのは同社の柴田剛人取締役副社長。2019年初夏の船出だった。

    【「挫折」から「日本一」へ】

    シャフトがしなりすぎて見えない豊永プロの驚愕スイング

    シャフトがしなりすぎて見えない豊永プロの驚愕スイング

    長崎県壱岐市出身の豊永プロは現在33歳。立派な体格は国体出場を経験した両親から受け継いだアスリートのDNAの賜物だ。「中学3年のとき、父親と一緒に練習場に行ったのがきっかけでゴルフを始めた」

    放課後、球拾いをさせてもらいながら練習を重ね、めきめき腕を上げた。地元の壱岐高校を卒業後、奈良県のグランテージゴルフ倶楽部の研修生になり、ツアープロを目指した。「飛距離では誰にも負けたことが無かった。パターも得意だった」。

    しかし、研修生生活6年目にアプローチ・イップスを発症。目の前のグリーンになかなか乗せられなくなった。それでも諦めず、食い下がること、それから4年。「7度目の挑戦だったプロテスト2次試験の3日目、グリーンのすぐ手前からトップしてグリーンをオーバーし、4回連続でミスを重ねてテストに落ちた」

    ツアープロへの夢を断念し、10年間の研修生生活にもピリオド。給料をもらって働くサラリーマン・ゴルフインストラクターの道へ方向転換したのは28歳のときだった。

    週休2日の生活は土日の自由が手に入った。15歳でゴルフクラブを握ったその日から、振れば飛んだ自身の能力を試そうと、土日を利用してロングドライブの大会に挑み始めた。

    ごく普通の45インチの市販のドライバーを引っ提げて赴くと、周囲からは奇異の目を向けられた。しかし、身長190センチ、体重120キロの立派な肉体から打ち放たれる豪打には、誰もが目を見張った。
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    初戦でベスト8入り、2試合目で堂々優勝。翌月、中国で開催されたビッグ大会ではベスト16入りを果たした。そして2019年「ゴルフダイジェスト・ロングドライブ・チャンピオンシップ」を402ヤードで制覇し、あれよあれよという間に日本一に輝いた。

    ライトカフェの柴田副社長からサポートをオファーされたのは、そのときだった。

    【世界の大海原へ】

    ツアープロであれ、ロングドライブのプロであれ、夢を追う過程で最大のネックになるのは、練習やトレーニング、転戦にかかる経費や道具代といった経済面だ。「ライトカフェのオファーは心底ありがたかった。2020年からはライトカフェ所属のプロとなり、平日は社員の立場でゴルフレッスンなどの業務に就き、夜はジムでトレーニング、土日は試合に挑んでいます」

    ツアープロへの想いは今でも胸にある。だが、ロングドライブにはロングドライブの魅力があるのだと豊永プロは目を輝かせる。「体格がいいから飛ぶというわけではなく、飛ばしは奥が深いんです。クラブスピードやボールスピード、スピンレイト、いろんな要素が全部噛み合わなければ飛距離は最大化されない。試合では相手を意識した途端、力んでグリッドを捉えられなくなる。ファウルが続けば、プレッシャーは増す。とてもメンタルなゲームなんです」

    2019年に日本一に輝いた後、米テキサス州で開催された世界大会に出場。世界の舞台では打てる球数が8球に増え、グリッド幅は日本よりワイドな55ヤードだった。「一目見て、広いなあと思った。でも、緊張して打席に立ったら、グリッドはめちゃめちゃ狭かった。日本人初の予選通過ができたことは自信になった。でも、ベスト32進出をかけたプレーオフではグリッドを一度も捉えられず、全球ファウルで敗退。悔しかった」

    世界の壁の高さと厚さを思い知らされた一方で、世界のロングドライブの魅力に、すっかり憑りつかれた。「夜空の下、大きなモニターに選手が打ったボールが落下する場面が次々に写し出され、それまでの最高記録を示す赤いラインを越えて新記録が出た瞬間、大歓声が沸き起こる。その場面が忘れられない絵となって僕の頭の中に残っている。自分もあそこで勝ちたい、ギャラリーを沸かせたい。そう思って毎日、クラブを振っています
    柴田副社長も想いは同じだ。「人々の心を震えさせる本物のロングドライブのプロは、日本には数えるほどしかいない。豊永プロはその一人です。飛ばすだけではなく、人々に感動を与えられるドラコン王に育てたいし、支えたい。世界の舞台に立たせてあげたい。日本一は世界の舞台でそのまま通用するものじゃない。世界に出て、世界一の日本人ドラコン王になってほしい

    日本の海から、世界の大海原へ。航海は、まだ始まったばかりだ。ロマン溢れる彼らの航海記を、ときどき覗いてみようと思う。
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