打打打坐 第67回【真夏のドレスコード問題】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時:2021年7月30日 06時00分
ドレスコードって何?
ルールブックに記載されている公式なルール以外に、ゴルフには開催コースや実行委員会などが定めることが出来るローカルルールがあります。色々ありますが、代表的なものがドレスコードです。
服装規定ということなのですが、ゴルフのドレスコードと最も近いのは、学校の校則で決められている服装規定です。制服が定められている学校でも、式典などがある特別な日以外は、ネクタイはしなくとも良いとか、白であれば指定のシャツでなくとも良いとか、簡素にすることが認められている学校もあります。制服がない学校でも、私服についての決まりがあることのほうが普通です。これらは、ユニフォームの概念と同じで、一目でその学校の生徒であることがわかることを目的としています。
ゴルフコースのドレスコードも、基本的には同様です。仲間、つまり、ゴルファーであることの証明として存在するのです。
日本は洋服の国ではなかった分、文化として、ゴルフのドレスコードは少し奇妙な感じになってしまっていますが、それは愛嬌ということで、今後の課題だと思われます。例えば、洋服のフォーマルは、男性は最終的には縫い目や継ぎ目を見せない服装になっていきますが、女性は逆に露出が多い服装になります。これは、紳士にはやせ我慢の美学を強いて、どんなに女性が魅力的でも興奮せずに、平常心を保てるという文化がベースになっています。
欧米では、この文化をベースにゴルフコースのドレスコードを作っているので、男性には厳しめですが、女性はドレッシーに首元が開いたシャツでも問題ない、ということになっているのです。男性と同じ基準を女性に押しつけている日本のドレスコードは、グローバルな視点では、「おかしな慣習」と見ている賢者は多いのです。
中身は別として、ゴルフコースは、全く面識がない人たちが集まって、その日一日は、運命共同体で前に習えと言わんばかりに列になってコースを共有するのですから、まずは、服装で互いをチェックして、基礎的な信頼関係を築いていこうというのがドレスコードの心なのです。
日本には四季がありますので、ドレスコードは、季節ごとに変化します。季節ごとのドレスコードを余裕で楽しむぐらいでなければ、ゴルフをディープに楽しむのは難しいかもしれません。
服装規定ということなのですが、ゴルフのドレスコードと最も近いのは、学校の校則で決められている服装規定です。制服が定められている学校でも、式典などがある特別な日以外は、ネクタイはしなくとも良いとか、白であれば指定のシャツでなくとも良いとか、簡素にすることが認められている学校もあります。制服がない学校でも、私服についての決まりがあることのほうが普通です。これらは、ユニフォームの概念と同じで、一目でその学校の生徒であることがわかることを目的としています。
ゴルフコースのドレスコードも、基本的には同様です。仲間、つまり、ゴルファーであることの証明として存在するのです。
日本は洋服の国ではなかった分、文化として、ゴルフのドレスコードは少し奇妙な感じになってしまっていますが、それは愛嬌ということで、今後の課題だと思われます。例えば、洋服のフォーマルは、男性は最終的には縫い目や継ぎ目を見せない服装になっていきますが、女性は逆に露出が多い服装になります。これは、紳士にはやせ我慢の美学を強いて、どんなに女性が魅力的でも興奮せずに、平常心を保てるという文化がベースになっています。
欧米では、この文化をベースにゴルフコースのドレスコードを作っているので、男性には厳しめですが、女性はドレッシーに首元が開いたシャツでも問題ない、ということになっているのです。男性と同じ基準を女性に押しつけている日本のドレスコードは、グローバルな視点では、「おかしな慣習」と見ている賢者は多いのです。
中身は別として、ゴルフコースは、全く面識がない人たちが集まって、その日一日は、運命共同体で前に習えと言わんばかりに列になってコースを共有するのですから、まずは、服装で互いをチェックして、基礎的な信頼関係を築いていこうというのがドレスコードの心なのです。
日本には四季がありますので、ドレスコードは、季節ごとに変化します。季節ごとのドレスコードを余裕で楽しむぐらいでなければ、ゴルフをディープに楽しむのは難しいかもしれません。
真夏の怖いドレスコード伝説
2021年。日本には、約30年振りのゴルフブームが来ているという分析があります。確かに、色々なシーンで、ゴルフブームが来ている雰囲気があるように感じます。
バブル期のゴルフブームも経験しています。あのときのほうが、もっと露骨で、パワーがあって、少しお下劣だったような気がします。それと比較すると、令和のゴルフブームは、とてもお上品で、真面目に見えます。
最も違う点は、昔のほうがゴルフコースが強くて、ドレスコードは、今とは比較にならないぐらい厳しいものだったことです。そういう厳格な雰囲気があったからこそ、伝説的な怖い事件がいくつも起きました。
某県にある真夏のゴルフコースでのこと。僕らの組は、トップスタートでハーフを回り、お昼の休憩を終えて、後半のスタートに向かいました。カートが2台止まっていて、予定よりも少し遅れているのだということがわかったのですが、そこで待っている人たちの雰囲気がおかしかったのです。
ティーの周辺まで行くと、すれ違うようにキャディさんがキャディマスター室に血相を変えて走って行きました。待っている人たちは、そのホールの2打目地点を全員が凝視していたのです。普通は、自分たちのスタート前の準備などで、前の組をじっくりと見ているなんてあり得ません。
「いきなり、シャツを脱いでさ。キャディさんが止めたんだけどね」
「肉体労働者みたいな日焼けするのが嫌! とか言っちゃってさ」
ニヤニヤと、少し嬉しそうに話してくれたのは、現在の僕ぐらい年齢のおじさんたちでした。フェアウェイを見てみると、2名の若い女性が、上半身は水着でゴルフをしていました。
今とは違って、夏は日焼けを楽しむ季節でした。健康的な女性は日焼け止めではなく、きれいに肌を日焼けさせるクリームを塗って海水浴をするのが普通の時代でした。半袖型に日焼けするのが嫌だから、水着でプレーしたい。クラブハウスではシャツを着るけど、プレー中なら、別に水着でも問題ないでしょう。というような希望や主張があることは知っていましたが、本当に実行しているのを見るのは初めてでした。
この翌年。別のコースで、男性が海パン一丁で、プレーしているのをコースのマーシャルが注意して、すぐにウェアを着るように促しているのを別のコースで見ました。バブル期ならではの自由奔放な事件でしたが、この手の事件を僕は、何度も見かけたのです。
近年では、屋外型の練習場で、日焼けしたいからと若い男性がシャツを脱いでゴルフの練習をしようとして、注意されたという話を聞いたり、館内放送で「シャツを脱いでの練習はお断りしております」という注意喚起があるのを耳にしていますが、ゴルフコースでは聞いていません。
ちなみに、水着でプレーしたりすることを含むドレスコード違反をした場合、昔は、その場で違反でない服装を着なかった場合は、退場処分でした。「お帰りください」と退場処分を食らった人は、些細なことまで含めると何十人も見ました。水着の人たちは、注意されると、すぐに、ちゃんとしたウェアを着て、その後は何もなったようにゴルフをしていました。
バブル期のゴルフブームも経験しています。あのときのほうが、もっと露骨で、パワーがあって、少しお下劣だったような気がします。それと比較すると、令和のゴルフブームは、とてもお上品で、真面目に見えます。
最も違う点は、昔のほうがゴルフコースが強くて、ドレスコードは、今とは比較にならないぐらい厳しいものだったことです。そういう厳格な雰囲気があったからこそ、伝説的な怖い事件がいくつも起きました。
某県にある真夏のゴルフコースでのこと。僕らの組は、トップスタートでハーフを回り、お昼の休憩を終えて、後半のスタートに向かいました。カートが2台止まっていて、予定よりも少し遅れているのだということがわかったのですが、そこで待っている人たちの雰囲気がおかしかったのです。
ティーの周辺まで行くと、すれ違うようにキャディさんがキャディマスター室に血相を変えて走って行きました。待っている人たちは、そのホールの2打目地点を全員が凝視していたのです。普通は、自分たちのスタート前の準備などで、前の組をじっくりと見ているなんてあり得ません。
「いきなり、シャツを脱いでさ。キャディさんが止めたんだけどね」
「肉体労働者みたいな日焼けするのが嫌! とか言っちゃってさ」
ニヤニヤと、少し嬉しそうに話してくれたのは、現在の僕ぐらい年齢のおじさんたちでした。フェアウェイを見てみると、2名の若い女性が、上半身は水着でゴルフをしていました。
今とは違って、夏は日焼けを楽しむ季節でした。健康的な女性は日焼け止めではなく、きれいに肌を日焼けさせるクリームを塗って海水浴をするのが普通の時代でした。半袖型に日焼けするのが嫌だから、水着でプレーしたい。クラブハウスではシャツを着るけど、プレー中なら、別に水着でも問題ないでしょう。というような希望や主張があることは知っていましたが、本当に実行しているのを見るのは初めてでした。
この翌年。別のコースで、男性が海パン一丁で、プレーしているのをコースのマーシャルが注意して、すぐにウェアを着るように促しているのを別のコースで見ました。バブル期ならではの自由奔放な事件でしたが、この手の事件を僕は、何度も見かけたのです。
近年では、屋外型の練習場で、日焼けしたいからと若い男性がシャツを脱いでゴルフの練習をしようとして、注意されたという話を聞いたり、館内放送で「シャツを脱いでの練習はお断りしております」という注意喚起があるのを耳にしていますが、ゴルフコースでは聞いていません。
ちなみに、水着でプレーしたりすることを含むドレスコード違反をした場合、昔は、その場で違反でない服装を着なかった場合は、退場処分でした。「お帰りください」と退場処分を食らった人は、些細なことまで含めると何十人も見ました。水着の人たちは、注意されると、すぐに、ちゃんとしたウェアを着て、その後は何もなったようにゴルフをしていました。
ドレスコードなんていらないの?
ドレスコードが存在しないゴルフコースは、実は、かなり昔からリゾートエリアにはありました。TシャツとGパンでゴルフが出来るのですけど、出来るのにやる人はほとんどいないという実態がありました。
21世紀になってから、ドレスコードを廃止するゴルフコースは、数年に1つという感じで出現しています。実質的に、ドレスコードが無視されて、注意もしないので、廃止されたのと同じになっているコースは、正確にはわかりませんが、かなりたくさんあるといわれています。
ドレスコード不要論を主張するゴルフ業界の人たちは少なくありません。面倒臭いゴルフのイメージの象徴であるドレスコードがなければ、若い人たちがゴルフを始めるようになるというのです。個人的には、そういう効果を狙ってのものであれば、あまり意味がないと考えています。
普通に暮らしていても、ゴルフをするしないにかかわらず、自然に服装のTPOは身についています。意識もしているのです。初めてのデートには、それなりの服を着るものですし、高級フレンチを食べるならキチッとした服装で出掛けるものなのです。ゴルフでも、基本的には同じだと思うのです。ケースバイケースで、周囲の雰囲気を壊さないように配慮できる人のほうが、圧倒的多数なのです。
一昔前まで、服装を見るとゴルファーの情報が色々と推測できたものです。着慣れていない雰囲気の初級者は、一目でわかりました。しかし、令和の若いゴルファーたちにそれは当てはまりません。彼らは、ベテランのゴルファー以上に、ゴルフブランドの最新のウェアを着こなしている例が多いからです。この現象には、多くのゴルフ関係者が度肝を抜かれています。
まず、見た目から、ということのようですが、クラブはボロボロの中古の更に中古のようなものなのに、キャディバッグは、高額な最新のレプリカモデルだったり、ウェアも上から下まで揃えると数万円もする雑誌に出ているようなブランド一押しのものだったりするなんて、今までの常識では考えられません。ゴルフの楽しみ方の優先順位が変わってきているのだと、思い知らされるのです。
最初の話に戻りますが、私服で通学できる学校の生徒の過半数は、制服を購入して通学するようになるというデータがあります。デパートの制服売り場に行くと、どこの学校の制服か表記していない制服が何種類も並んでいるそうです。制服がない学校の生徒用に売っているのです。
ゴルフコースのドレスコードが廃止されても、多くの来場者は、ごく普通のゴルフウェアでプレーをしているそうです。
ドレスコードなんて要らない、という意見も理解できますが、僕はTPOでそれらの決まりは残すべきだと思っています。それもコースを楽しむ基準になっていくと思うからです。
ジャケットなしではレストランには入れない最上級のコースも、5000円で揃えられる最小限のウェアでプレーできるコースも、そこで行われているのはゴルフなのです。プラスアルファを、どのように楽しむかの選択肢が多いことは、間違いなく幸せなことです。
「ゴルフウェアって、何枚ぐらい持っていますか?」
と、先日、質問されました。夏用だけで、シャツは20枚ぐらいありますし、パンツも10本はあります。でも、よく着る組み合わせは、5、6通りだと気が付きました。涼しくて、動きやすいことを優先して選んでいるのです。
どれを選択しても、最上級のドレスコードをクリアできますが、価格は安価なものばかりです。こういう所にも、ゴルファーの気質のようなものが出ます。ドレスコードを残したほうが良いと考えるのは、少しの不自由があるほうが、それぞれの気質は逆に目立つことを知っているからなのです。
21世紀になってから、ドレスコードを廃止するゴルフコースは、数年に1つという感じで出現しています。実質的に、ドレスコードが無視されて、注意もしないので、廃止されたのと同じになっているコースは、正確にはわかりませんが、かなりたくさんあるといわれています。
ドレスコード不要論を主張するゴルフ業界の人たちは少なくありません。面倒臭いゴルフのイメージの象徴であるドレスコードがなければ、若い人たちがゴルフを始めるようになるというのです。個人的には、そういう効果を狙ってのものであれば、あまり意味がないと考えています。
普通に暮らしていても、ゴルフをするしないにかかわらず、自然に服装のTPOは身についています。意識もしているのです。初めてのデートには、それなりの服を着るものですし、高級フレンチを食べるならキチッとした服装で出掛けるものなのです。ゴルフでも、基本的には同じだと思うのです。ケースバイケースで、周囲の雰囲気を壊さないように配慮できる人のほうが、圧倒的多数なのです。
一昔前まで、服装を見るとゴルファーの情報が色々と推測できたものです。着慣れていない雰囲気の初級者は、一目でわかりました。しかし、令和の若いゴルファーたちにそれは当てはまりません。彼らは、ベテランのゴルファー以上に、ゴルフブランドの最新のウェアを着こなしている例が多いからです。この現象には、多くのゴルフ関係者が度肝を抜かれています。
まず、見た目から、ということのようですが、クラブはボロボロの中古の更に中古のようなものなのに、キャディバッグは、高額な最新のレプリカモデルだったり、ウェアも上から下まで揃えると数万円もする雑誌に出ているようなブランド一押しのものだったりするなんて、今までの常識では考えられません。ゴルフの楽しみ方の優先順位が変わってきているのだと、思い知らされるのです。
最初の話に戻りますが、私服で通学できる学校の生徒の過半数は、制服を購入して通学するようになるというデータがあります。デパートの制服売り場に行くと、どこの学校の制服か表記していない制服が何種類も並んでいるそうです。制服がない学校の生徒用に売っているのです。
ゴルフコースのドレスコードが廃止されても、多くの来場者は、ごく普通のゴルフウェアでプレーをしているそうです。
ドレスコードなんて要らない、という意見も理解できますが、僕はTPOでそれらの決まりは残すべきだと思っています。それもコースを楽しむ基準になっていくと思うからです。
ジャケットなしではレストランには入れない最上級のコースも、5000円で揃えられる最小限のウェアでプレーできるコースも、そこで行われているのはゴルフなのです。プラスアルファを、どのように楽しむかの選択肢が多いことは、間違いなく幸せなことです。
「ゴルフウェアって、何枚ぐらい持っていますか?」
と、先日、質問されました。夏用だけで、シャツは20枚ぐらいありますし、パンツも10本はあります。でも、よく着る組み合わせは、5、6通りだと気が付きました。涼しくて、動きやすいことを優先して選んでいるのです。
どれを選択しても、最上級のドレスコードをクリアできますが、価格は安価なものばかりです。こういう所にも、ゴルファーの気質のようなものが出ます。ドレスコードを残したほうが良いと考えるのは、少しの不自由があるほうが、それぞれの気質は逆に目立つことを知っているからなのです。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
連載
ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”