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    打打打坐 第69回【ゴルファーの檜舞台】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2021年8月13日 06時00分

    • ゴルフライフ
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    花道の歩き方

    同伴者によって、自分のゴルフに影響が出るようでは競技ゴルファーとして三流だ、という教えと、どんな人にも迷惑をかけずにプレーできるエチケットとマナーを鍛えるという方針で、初ラウンド以後のゴルフでは、父と叔父と一緒の組でプレーすることがほぼなく、いつも初めての人ばかりの組に入れてもらってゴルフをしていました。しかし、祖父だけは別で、一緒にゴルフをしながら、色々なことを教えてくれたのです。

    初めて祖父とプレーしたときに、教えてもらったことがあります。

    「花道は胸を張って歩くこと」

    花道は、元々、歌舞伎で舞台に繋がった客席を貫く細い通路のことです。ゴルフ用語としての花道とは、グリーンの手前の通り道のように整備されたエリアです。左右にバンカーがあって、花道が絞られている、というような使い方をします。

    「僕はね、ボールを止められないから、花道を狙って打って、転がり上げるんだよ」

    祖父は最も飛ぶクラブでも150ヤードしか飛ばないオールドゴルファーでしたので、その分、戦略が必要でした。それもゴルフの面白さなのだと教えてくれました。

    「花道には、歌舞伎での意味以外にも、脚光を浴びて歩む、華やかな最後の場面という意味もあるからね。ゴルフの花道も、結果にかかわらず、そのホールを正々堂々とプレーしました、と胸を張って歩くようにしなければダメだ」

    当時は歩きのゴルフですから、大きなミスをせずにグリーンに乗れば、フェアウェイから花道を通ってグリーンに上がります。祖父は、『スコアによって、しょぼくれて、小さくなることはない。ゴルファーとして恥じることなくプレーしたのであれば、それだけで十分だ』と、花道は胸を張って歩くものだと、僕に教えたのです。

    父や叔父からは、主にスコアメイクを教わりましたが、ゴルファーとしての心掛けや、心意気は、祖父から教わることが圧倒的に多かったのです。祖父はゴルフの本をたくさん持っていたので、それらの本を読むことで、読むゴルフも教わりました。

    86歳のゴルフの楽しみ方

    祖父は明治生まれで、86歳までゴルフをプレーしていました。結果的に最後になったゴルフをした翌月。日課の喫茶店でコーヒーを飲んでいる最中に脳梗塞の発作を起こし、搬送されました。運良く、大きな後遺症もなく、2ヶ月で退院しましたが、ゴルフは医師から止められました。

    「コースは当分ダメだけど、練習場なら良いって許可が出た」
    と勇んで、練習場のレッスンに通うようになって、
    「米寿(87歳の年)にして、レッスンで教えてもらって、ハイボールでボールを止めるピッチショットが打てるようになった。ゴルフは諦めない限り、向上できるところが素晴らしい。早くコースで試したい」
    と嬉しそうに話していましたが、それは、かないませんでした。

    祖父は、一緒に回ると、勝手にスコアカードに色々な○×を記入していました。その1つは、『孫とドラコン』でした。ドライバーで打ったホールで、祖父の2打目が、僕のボールを越えられれば○で祖父の勝ち、越えられなければ×で負けというルールだったようです。僕が運転できるようになると、帰りの車の中で、最初に、その成績を発表するのです。

    「本日の特別ドラコンは、9勝5敗で、僕の勝ちでした!」

    記憶にある中で、最も負けた回の数字です。基本的には僕が勝つことが圧倒的に多かったので、たまに祖父が勝つと、本当に嬉しそうにするのです。賭け事ではなかったのですが、祖父が勝つと、どういう訳か、ご祝儀と言って500円をくれました。僕が勝ったときに、真似をして500円を渡そうとしたら、馬鹿者、と叱られました。粋であることにこだわった祖父らしい思い出です。

    「唯一、本気で勝負できるのはグリーン上だ」

    パワーではなく、テクニックの勝負ということで、祖父はパットには尋常ではなく真剣でした。マナー違反やルール違反が、何よりも嫌いで、許せなかったのに…… 祖父の特注のパターはネックがフェースのヒールとトウの2カ所から繋がっている違反クラブでした。

    祖父は、冷静に振り返っても、名人クラスにパットが上手でした。ラウンドで1パットを9回で引き分け、10回以上なら自分が勝ちというゲームも1人でしていました。その結果も、車中で発表して、善し悪しにかかわらず、自己分析をして反省をしていました。グリーン上のパット数では、僕のほうが負けることが多かったのです。ラウンドの半分で1パットを狙うゴルフは、逆にパーオンと決別してこそ可能なわけですから、鼻から勝負になりませんでした。

    ちなみに、先日、誕生日が来て父は84歳になりました。祖父が86歳までゴルフをしていたのは知っていますので、それに並ぶか、抜くまではゴルフをするのだと豪語しています。父は大学で体育会ゴルフ部の主将をしていた本格派ですので、あの頃の祖父と比べると飛距離も出ますし、スコアにこだわるドロドロした部分も、だいぶ薄まった気はしますが、健在です。

    80代のゴルフの楽しみ方も、色々なのだと思います。乗用カートが普及したことで、昔よりも、ゴルファーの寿命は延びたはずですし、クラブやボールも進化したので楽にゴルフが出来るようになっているはずです。もし、祖父が、今の環境でゴルフが出来たら、90代で亡くなるまで、プレーしていたと思うのです。

    檜舞台で誰でも主役

    中学の部活は、運動部ではなく、演劇部でした。幼い頃から演劇を見るのが好きで、脚本家志望だったからです。指導者にも恵まれて、中学レベルとは思えないハイレベルな演劇を作っていました。

    だからというわけではないと思いますが、祖父は何度も何度も、
    「ティーとグリーンは、ゴルファーの檜舞台だからね」
    と僕に言い聞かせていました。

    檜舞台は、檜で床を張った一流の大劇場の舞台のことですが、転じて、自らの手腕を発揮する晴れの場所、という意味でも使われます。

    同じ場所に、登場人物が勢揃いして、順番に見せ場を演じる、と考えると、ティーショットとグリーン上は、まさに、ドラマのクライマックスだといえます。それ以外の2打目、3打目のシーンは、個々のスピンオフ的なストーリーが展開するというわけです。

    全18回の連続ドラマです。冒頭はティーでの全員劇。そして、最後の結末も全員劇。ゴルファーにとって、ティーとグリーンは、まさに檜舞台そのものです。それぞれ、順番に鍛えてきた手腕を披露できる見せ場です。稽古不足を待ってくれないという意味でも、演劇ととても似ています。

    ゴルフの大きな魅力の1つに、誰も主役になれる、ということを挙げるケースがあります。檜舞台は、主役であるゴルファーを待っているというわけです。

    ティーとグリーンは、メンテナンスという意味でも、コーススタッフの腕の見せ所です。最高に仕上がるように準備されているのです。
    悪意がなくとも、プレー中にティーイングエリアやグリーンを傷つけてしまうこともあります。祖父は、ティーやグリーンを粗末に扱う人を見ると、特に激しく注意したり、抗議をしていました。

    「檜舞台だという自覚があれば、ツバを吐いたり、汚したまま放置したり、乱暴に扱うなんてありえないのだ」

    ということも、何度も何度も聞かされました。

    ゴルファーにとって、ティーとグリーンは檜舞台である、という精神は、ジュニアや初心者を指導するときに、祖父から僕に引き継がれて、伝えて続けています。後になってから、檜舞台という考え方に助けられた、と感謝されたこともあります。

    主役ほど、舞台を大事にするものです。大事に扱うのは当たり前。ディボット跡は目土をして、ボールマークも直します。ポケットに修復する用具がないなんて、言語道断です。

    檜舞台で、スポットライト浴びて、一世一代の大見得を切る…… これこそゴルフの醍醐味です。檜舞台を意識した瞬間、あなたが主役のゴルフストーリーは動き出すのです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
    連載

    ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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