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    打打打坐 第71回【アイウェアでゴルフ】

    打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

    配信日時:2021年8月27日 06時00分

    • ゴルフライフ
    目次 / index
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    アイウェアとはなんぞや?

    「サングラスをしていないからわからなかったです」

    と言われることが、時々あります。試打レポートで顔出しをする際に、サングラスをしているからです。

    ゴルフのラウンド中や運転中などは、基本的にサングラスをするようになって、10年以上経ちました。今では、雨などで裸眼でゴルフをすると、新鮮というか、軽い違和感すら感じるほど、当たり前になっています。ゴルフ中の集合写真とかでは、意識してサングラスを外しますが、試打撮影のときは普通のラウンド中なので、余裕がなく、そのままの姿で顔出しするので、サングラスをしている顔が印象に残るのだと思われます。

    「アイウェアって、ゴルフのオシャレの一部ですよね」

    と素敵女子ゴルファーに言われると、調子に乗っているように見られないように意識しつつ、相槌を打ったりします。サングラスのことをゴルフ用品業界でアイウェアと呼ぶようになったのは21世紀になってからです。それまではサングラスは、サングラスでした。

    サングラスをし始めた頃、複数の厳しい先輩方に注意をされたことがありました。

    「ガラが悪くみえるからやめなさい」
    「目が見える薄いカラーの物以外は、目上の前では外すのがマナーだろ?」
    「何かを隠したいとか、後ろめたいものがあるように見えるのでマイナスだよ」

    確かに、21世紀になる前後の時期の日本のゴルフコースで、サングラスをしてゴルフをしているゴルファーは特別で、目が不自由か、顔を隠したいか、自分を強く見せたいかぐらいしか、その理由も浮かばなかったのです。ゴルフ用品業界で、サングラスの名称を変えて、オシャレなアイテムにしたいという流れが生まれるのは必然だったのです。

    アイウェアは、眼鏡からコンタクトレンズまで目や目元を飾る物の総称です。ファッション用語をスポーツ業界が転用したと思っている人が多いですが、その逆で、目を保護する必要があるスポーツ競技で使うゴーグルなどをアイウェアを呼ぶようになったのが、広く浸透して、現在のように使われるようになったそうです。

    サングラス=不良みたいなイメージは、ゼロにはなっていませんが、現在では、アイウェアもゴルフアイテムだという市民権は得られたと思われます。

    僕は20年間で100本ぐらいのサングラスを購入して、使いましたが、流石に“人として誤解されるからやめなさい”というようなお叱りは受けなくなりました。

    手術するのが怖いからマジになった

    35歳のときに、眼科検診を受けて、医師から言われました。

    「まだ治療は必要ないですが、ごく軽い白内障です。紫外線が悪化の原因になるので、屋外に長時間いるときにはUVカットのサングラスをして予防してください」

    嫌だなぁ、と直感的に思って、聞いたのです。

    「ゴルフとかで、サングラスをしないでプレーするのはダメですか?」
    「最悪です」
    「もし、今のまま予防しないと、どうなりますか?」
    「40代で初期症状が始まって、目薬とかで進行を遅らせても、50歳で“手術”するという感じですかね」

    注射が嫌いなのは、身体に異物が入る感覚が気持ち悪いからです。手術というワードの恐怖は、強烈でした。サングラスをしてゴルフをしよう、と決意をしたのです。

    ここからが大変でした。20年前のゴルフ用のサングラスは、スポーツ用に目を覆うようなゴーグル型ばかりでした。曲面になったレンズは、物を近く見せます。アドレスして、ボールを見ると、少しだけ大きく見えるのです。視角も変で、左右の見え方が違うのです。

    練習場でボールを打ってみると、ボールとの距離感が狂うので、トップのミスが出やすくなり、それを意識すると厚く入り過ぎたり、何より動画で確認すると、アドレスで、首の前傾する角度が変わっていました。

    練習を繰り返す打ちに、フルショットは慣れるのですが、ショートゲームがパットまで全くダメになってしまうことが判明しました。感覚に違和感があると、感性で使うクラブは上手に使えないのです。

    ショットのときには、サングラスを外して裸眼。それ以外のときはサングラスをするという解決策を発見して、4年ぐらいは、本当にそうしていました。しかし、お気に入りの高価なサングラスほど、ショットのときに落ちて、傷が付いてしまって短命だったりする衝撃を何度も経験し、汗をかく暑い季節は面倒になってサングラスをしなかったりもしました。つまり、サングラスをしてゴルフをすることは、なかなか定着はしなかったのです。

    裸眼でゴルフをするたびに、その気持ち良さと心強さに感動しては、帰り道に白内障の悪化の恐怖に猛省するという日々が続きました。

    40代になって、意外なことで、サングラスをしてゴルフをすることが当たり前になります。

    幼い頃から皮膚が弱く、皮膚科に断続的に通っていました。40代になって、若い頃から日焼けを繰り返してきたツケが回ってきたのです。シミを始めとして、シワ、色素沈着、ざらつきなどが目立つようになりました。

    「皮膚がんのリスクがあるから、日焼けのケアはちゃんとしないとダメ」

    と信頼している医師から言われて、1年中、日焼け止めをしてゴルフをするようになりました。そして、目からは入った紫外線がメラニン色素を活性化するという話を聞き、UVカットサングラスは日焼け防止にも役立つと教わったのです。

    日焼け止めクリームだけのときと、サングラスを併用したときとでは、明らかに後者の日焼けが少ないことがわかると、自然とサングラスをしてゴルフをすることに抵抗が薄れていったのです。

    ゴルフを末永く楽しむために

    最近は、裸眼でゴルフをするほうが違和感があるようになっています。裸眼でゴルフをするのは雨のときだけなので、単純に比較は出来ませんが、平均スコアはラウンドで3打ぐらいサングラスをしたゴルフのほうが良いです。

    ゴーグル型で目を覆うほうが紫外線カットの効果が高いですが、平面のレンズの普通のサングラスと比較するとその違いは多く見積もっても1割程度とのことです。僕は、現在は、平面レンズの普通の形の物だけを愛用しています。

    誤解している人が多いですが、真っ黒いレンズより、クリアなレンズのUVカットサングラスのほうが紫外線を防ぐ意味で優秀です。視界が暗くなると、瞳孔が開いて目の中に入る紫外線が多くなってしまうからです。最近は、薄いカラーのサングラスが流行しているので、本当に助かります。

    そして、レンズのUVカットの加工には寿命があることを理解して、サングラスを使用することも重要です。UVカット加工には表面的な物と、シートを挟むような構造的なものがありますが、どちらも出来上がった瞬間から劣化していくのです。仮に未使用で、密封されていても、2年ぐらいで、その効力は3割から4割も減ってしまいます。

    製造してから2年ぐらいで、UVカットを目的としたサングラスとしても使用は限界が来るのです。僕は、お気に入りの物でも1年で引退させるようにしています。逆に毎年、または、夏に関係なしに、色々と新しい物を使えることを楽しんでいるのです。

    一般的な生活をしている場合、長時間、紫外線に晒されることは稀です。しかし、ゴルフは最低でも数時間は紫外線を浴びながらプレーします。ちなみに、曇っていても紫外線は雲を通り抜けて降り注いでいますので、注意が必要です。

    白内障になっても、手術すれば簡単に治ります。一瞬の我慢で済むのに、何年間もUVカットのアイウェアで苦労するのは馬鹿らしい、という考え方もあります。

    僕は苦労をして、アイウェアでゴルフをする気持ち良さを知ったうちの1人です。ゴルフコースを見渡したときに、真夏でもサングラスゴルファーは少数派です。

    白内障や日焼けの予防的な対策としてアイウェアをオススメしていますが、実は、もっと別のポイントがあります。アイウェアはお守りなのです。

    サングラスをしたら、自分は変われると信じるのです。実際に、裸眼とは違いますので、変わるのです。僕の場合は、欲張りな自分を抑える力があると信じて、サングラスをします。ゴルフは欲との戦いですから、戒めとして、これはかなり効力があります。

    サングラスを頻繁に変えます。そのたびに、新しいお守りを試すような気分になります。効果が強いものもあれば、弱いものあります。お守りはそういうもので、楽しいのです。

    最後になりますが、僕がゴルフで使用するサングラスは、思いっ切り安価なものと決めています。高くとも3千円。ファストファッションブランドもサングラスを出していますが、その半分ぐらいの値段ですが、驚くほど優秀で感心します。これなら、数ヶ月使えば十分に元が取れます。

    ゴルフで使うサングラスは、案外と傷むのです。落として、レンズに傷が付いたり、持ち運びの際に圧がかかって歪んでしまったり…… 安ければ、寿命だと諦めて、気持ちの切り替えも簡単です。

    通常のラウンドで、僕は2本か、3本のサングラスを持っていきます。普段使いものと撮影用を分けていることもありますし、何かあったときの予備ということもあります。また、調子が悪いときや、空気を変えたいときに、サングラスを替えることでスイッチとするという使い方も出来るからです。

    バカとはさみは使いよう、と昔から言います。僕にとって、アイウェアは使いようでゴルフを十倍楽しくするアイテムなのです。

    【著者紹介】篠原嗣典

    ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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