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    もしもゴルフ場で足首を捻挫したり、腰に違和感がでたら

    ラウンド中に起きがちな体のトラブル。突然起きるアクシデントに慌てることなく対処する方法を知っておこう。

    配信日時:2021年9月9日 10時00分

    • ゴルフライフ
    目次 / index
    ミドル世代のゴルファーは体に少なからず不安を抱えている。しかもゴルフ以外には運動をする機会が少ないのがあたり前。不慣れな早朝に出かけ、日常とは違った環境のゴルフ場でプレーをするとなると、今回取り上げる捻挫や腰痛といったトラブルに遭遇することが多くなっても不思議ではない。今回も引き続き、東海大学医学部付属病院医師・竹下啓先生に捻挫、腰痛への備えや対処法を教えてもらった。

    気持ちよくプレーしている最中、足をひねって捻挫したら

    プレー中に思いがけず陥ってしまう足首の捻挫。そもそも捻挫は外力が加わって発生するケガのうち、骨折や脱臼以外を指す。そして捻挫によって、足首の関節を支持する靭帯が傷むため痛みが生じることになる。よくスポーツ選手が靭帯を損傷して試合を長い間欠場するといったニュースを耳にするが、私たちがゴルフ場で遭遇する捻挫も、損傷の程度の違いこそあれ、同じ延長線上にあるものだという。

    捻挫はスポーツの最中に起こるもっとも多いケガのひとつ。ただゴルフの場合、ほかのスポーツとは捻挫の背景が少し違ってくる。「ゴルフはプレーすること自体で捻挫をするというより、ゴルフ場という日常生活とは違う、自然に近い環境が原因となって生じることが多いのが特徴です」。

    ではゴルフ場で足首を捻挫しやすいシチュエーションはどんなシーンだろう。自らプレーするシーンを思い返しながら、先生に例をあげてもらった。

    「排水溝のような窪地に足を踏み入れたとき、林などに打ち込んだボールを探すときに傾斜地を小走りするとき、ティグラウンドやクラブハウスの階段もリスクが潜むポイントです。またスイングのフィニッシュでの、左足のめくれ(右利きの場合)も捻挫につながることがあります。あとカートから降りるときも要注意。特にカートがきちんと止まる前に小走りで降りるときは危ないですね。カートが止まるまで待ちましょう」。

    足首の捻挫のほとんどは足関節を内側に捻じったことで生じる。そのため足関節外側の靭帯が損傷し、くるぶしの周囲を押すと痛み、患部が腫れてくる。「捻挫したあと足に体重をかけられない、腫れが強い、皮下出血があるといった場合は、早めに受診してください」。

    応急措置の基本はRICE処置といわれる。「R」はREST(安静)、「I」はICE(冷却)、「C」はCOMPRESSION(圧迫)、「E」はELEVATION(挙上…腫れた部分を上にあげること)。これらをすみやかに施すこと大切とされる。

    「足首を捻挫したらまずプレーをやめて安静にしてください。そしてビニール袋などに氷を入れて、それを局所にあてて冷やします。暑い日であれば、氷の入った氷嚢で冷やしたりすると効果的です。15〜20分程度冷やして、患部の感覚が鈍ってきたら外し、また痛み出したら冷やすことを繰り返します。また足を少し高くあげて休むのも効果的でしょう。テーピングや弾性包帯を使って、軽く圧迫しながら患部を固定するのも有効とされてはいますが、シロウト判断で行うのは禁物。必ず専門家の指導を受けてからにしてください」。

    とはいえ、このRICE処置を行うためのビニール袋か氷嚢、氷、弾性包帯、テープ、テーピングパッドなどすべてを持ち歩くというのは現実的とはいえない。そこで普段から捻挫に備えるにはどうしたらいいだろう。できることなら普段からのストレッチ、またスタート前には十分ウォーミングアップをし、足首をまわしたり、内外へ動かす運動も加えておきたい。

    「あと注意したいのはゴルフシューズです。足にフィットしないシューズをはくと、シューズの中で足が遊ぶことになり、捻挫のリスクは高まります。自分の足に合ったフィットするシューズを選んでください。ただ足首が安定するように思えるハイカットシューズをはくことや、靴紐やBOAをきつめに締めることが捻挫に有効であるという医学的なエビデンスはありません」。

    足首の捻挫は経験した人も多く、また軽度の場合ほどなく回復することもあり、骨折や脱臼などに比べて軽く見られがち。だが竹下先生はこう話す。

    「捻挫した翌日になっても痛みや腫れが治まらないようなら、必ず整形外科医の診療を受けてください。手術が必要となる場合もありえます。また頻繁に捻挫をするとか、左右の決まった足ばかり捻挫をするといった話もよく聞きます。これは足首が横からの力に弱くなって、変形性関節症などを患っているかもしれません。こんな場合も整形外科医の専門的なアドバイスを受けるべきです」。

    ズキッ、ジ〜ン、プレー中に腰の違和感が出たら

    腰に不安をかかえるゴルファーは多い。しかもスイング動作は下部腰椎や骨盤に負荷を与えるため慢性の腰痛につながる。ゴルフインストラクター100名へのアンケートによると、ゴルフによる障害でもっとも多かったのが腰痛だったという結果も出ている(田辺知宏、他:「ゴルフインストラクターのスポーツ障害」臨床スポーツ医学 11:166〜170.1994)。

    一般的なアマチュアゴルファーであれば、インストラクターほどたくさんスイングするわけではない。だが一方で腰痛の原因はスイングだけではなく、日常生活の中にも潜んでいる。つまり腰への不安はゴルフから生じているだけとは言い切れないことが多い。しかもゴルフは運動強度が高くないため、老若男女が同じルールで楽しめる。つまり誰でもできるスポーツであるがゆえに、腰に不安をかかえている人でもプレーができてしまうことになる。そこでゴルフ場での腰のトラブル、とりわけ突然生じる激しい腰痛(ぎっくり腰)ではなく、プレー中の瞬間に起こる軽いズキッとした痛みや、ラウンド後半に見舞われる腰が重くなる感覚への対処法を聞いてみた。

    腰のトラブルが生じやすいシチュエーションとして挙げてもらったのが、素振りを含めたスイング中、カップインしたボールを拾い上げるとき、ティグラウンドへティを刺すとき、カート乗降のときなど。

    「まず動けないほどの腰痛、足にしびれや麻痺が出ている場合、安静にしていても痛みが続き、これまで経験したことのないような痛みが出てきたり、胸痛や息切れなどの症状が出てきたら、すぐにプレーを止めて受診してください。もしかすると心臓や大動脈の病気である可能性もあります」。

    とはいえ多くの場合、瞬間、ズキッとなったあとは痛みが消えていくことも多い。そうなると腰を気にしながらもプレーを続けてしまうのだが、そんなときにはどんな対処をしたらいいのか。無理にプレーを続けてほしくないという竹下先生に、どうしてもとお願いして回答をいただいた。

    「患部は冷やすでも暖めるでもかまいません。腰の違和感がより和らぐ方法をとってください。またコルセットの感覚でベルトをきつく締めることに効果があるのかは、医学的なエビデンスはありません。それで安心感が生まれるのであれば試してもいいと思います。痛みがおさまったあとのストレッチは効果的ですが、伸ばして気持ちいい程度に。痛く感じるまで伸ばす必要はありません」。

    腰に不安があるゴルファーであれば、プレー前の準備運動は入念にするはず。それを前提に、ほかにも心がけたほうがいいことを聞いてみた。

    「ストレッチはスタート前だけでなく、昼食後にも行ってください。あとプレー中はカートで移動しながらも、多少なりとも歩いたほうがいいと思いがちですが、腰に不安があるならなるべく歩かないことをおすすめします。フェアウエイまでカートが乗り入れられるコースとかいいですね。あとちょっと違った視点にはなりますが、レッスンに通って、腰に負担をかけにくいスイングを身につけるというのもひとつの方策です」。

    あと今回は取り上げていないのだが、腰痛と並んで悩むゴルファーの多いゴルフ肘についても竹下先生からひとこと。「腰と同じようにスイングに関連するスポーツ障害にゴルフ肘があります。右利きの人であれば、右ヒジの内側に痛みがでます。ラフや林の中の、石や木の根があるところで叩きつけるようなスイングをすると発症します。ついつい夢中になってしまいがちですが、こうしたライでは無理をせず、同伴者に断ってリプレイスさせてもらいショットしてください」。

    教えてくれたのは

    竹下 啓(たけした・けい)医師

    東海大学医学部付属病院医師。医学博士、日本内科学会総合内科専門医。1993年、慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院内科研修医、北里研究所病院総合内科部長などを経て、2018年から現職。趣味はゴルフとおいしいものを食べること。

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