東京駅から東北新幹線に乗り2時間でコースに到着
稲見萌寧の晴れ着姿がかわいい【写真】
チェックポイントは、まずなんといってもゴルフ場に宿泊施設が備わってるコースであること、それを強く勧めます。宿泊料金が安いので、ラウンドと合わせた宿泊パックを使えば、驚くほどリーズナブルです。加えてコース内に宿泊施設があると、朝の支度がすごく簡単でいい。温泉なんかあったら、余裕で朝風呂に入り、室内着で朝食を食べれたりしますからね。家からコースに行くまでの道のりが遠くても、新幹線やクラブバスの連携がスムーズなら、さほど問題はないと思います。だから早朝に家を出れば、当日のラウンドも間に合ってしまう。せっかく行くのだから、欲張って1泊2ラウンドしたいと思う人もいるはずです。実に素敵な週末じゃないですか。
そんなリゾートゴルフの条件をすべて兼ね備えているのが、私も何度も行っている、白河高原カントリークラブ(福島県)です。今回行ったのは、ちょうど紅葉が始まった10月末でした。東京駅から東北新幹線に乗り、新白河駅まで約1時間20分。そこから無料のクラブバスを使い、25分ほどで到着。案外近いんだなと改めて感じます。朝の東京駅6時40分発の新幹線に飛び乗れば、なんと8時40分にコースに到着です。この行程なら日帰りラウンドも十分可能ですね。
開場は1963年。最初の経営母体は大成建設。その後、同じ芙蓉グループの東京建物に移り、東京建物リゾートが運営することに。シニア層に絶大な支持を受けており、取材日も沢山の熟年夫婦がクラブバスに乗っていました。
このコースは東北の名門として、バブル時は4500万円の値段がつきました。今もなお秩父宮杯という競技が行われており、優勝者の名前はカップに刻まれることに。今どき、宮様杯のあるコースなんて、そんなにありませんよ。そんな由緒ある名門コースですが、さらに注目すべきは、クラブハウスとコースです。
まずクラブハウスですが、これはレーモンド設計事務所が携わっています。それではレーモンドとは何か? 実は人の名前なのです。帝国ホテルを建設するときに招聘した設計家、フランク・ロイド・ライトという人物がおります。そのときに、スタッフとして働いていた設計技師がアントニン・レーモンド(1888年〜1976年・チェコ出身)なんですね。
レーモンドは帝国ホテル建設に携わり、その後、日本に居ついてしまう。そしてレーモンド設計事務所を立ち上げ、その事務所はレーモンド亡き後も残り現在に至るというわけ。レーモンド設計事務所の代表的なクラブハウス設計は、東京ゴルフ倶楽部の朝霞コース、門司ゴルフクラブに神戸ゴルフ倶楽部、調べればキリがないですが、当時のモダニズム設計の第一人者として脚光を浴びていたのは確かです。
そして白河高原CCのクラブハウスの設計に着手するのですが、これがなんと茅葺き屋根の合掌造りだからたまげます。誰が言い出したかは今となっては謎だし、アントニン・レーモンドがどれだけ関わったかも謎です。けど白河高原CCの空間造形の素晴らしさは、目を見張るものがあり、まさに傑作といえるでしょう。
とまあいろんなことを想像しながら、白河高原CC自慢のすき焼き鍋ディナーをクラブハウスで頂き、明日のラウンドを夢想するのでありました。
さて今度はコースのお話です。コース設計は富沢誠造で、総武カントリーや千葉カントリー川間コースなどの設計で有名な大先生です。設計したコースが異常に多く、息子の廣親氏と組んでなら100を越えていますからね。しかも、造ったコースはそこそこ出来がいい。栃木の某コースなんか何度もラウンドしましたが、アップダウンがあるのに、インターバルで解消したり、傾斜地に雛壇状にコースを配置し、平らコースに仕上げている。地形のマイナス要素を、プラスに転換する技術は日本一じゃないですか。
富澤誠造は滅多に依頼を断らないし、予算で文句をいった話しもほとんどないと聞きます。こんな立派な人格はどのようにして形成されたのか? 彼の生い立ちを探ってみましょう。
富沢誠造は14歳で武蔵野カントリークラブの六実コースのグリーンキーパーとして雇われます。その後、コース造成のパイオニア安達建設に入社します。そして1950年、川崎国際カントリー倶楽部の工事監督に任命。コース設計はいわずと知れた天才、井上誠一。富沢は井上誠一から設計のノウハウを学び、彼の実力から知名度、スケール感まで学習し、改めてその偉大さに感服するのです。
富澤誠造は井上誠一の背中を見ながら、井上誠一に頼めないような、予算も少なく、土地もイマイチだけどゴルフ場を造りたい人の願いを、自分は叶えてあげようと誓うのです。だから富澤誠造のゴルフ場は、周富徳の「冷蔵庫の中のあり合わせの食材で造るチャーハン」に似ているのです。なんでもそこそこまとめて、一丁上がりにする手さばきは見事としかいいようがありません。
以前来たときは、温泉に何度も入り、深夜まで麻雀もしました。そういうオヤジの遊びも完備。ホテルはシングルルームが多めにあり、コロナ明けの泊まりゴルフに最適な環境といえます。そんなわけでオヤジゴルフは、ラウンドだけが目的じゃない。移動、温泉、ディナー、そして紅葉のコースやシックなやクラブハウスを眺め、トータルで楽しまないと。残りの人生は、さほど長くないですよ。行きたいところを訪ね、好きなように生きましょうよ。
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
かざま鋭二
かざま・えいじ/1947年生まれ、東京都出身。多くのゴルフマンガを執筆。代表作「風の大地」(原作・坂田信弘)では小学館漫画賞を受賞。現在、エイジシュートに挑戦中。