ゴルファーだって油断できない高齢者に増加中のフレイル問題! 兵庫県の練習場が予防対策に一石を投じていた
ゴルファーだって油断できない高齢者に増加中のフレイル問題! 兵庫県の練習場が予防対策に一石を投じていた
配信日時:2022年1月28日 07時00分
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加齢にともなう心身の健康障害に練習場が待ったをかける
高齢者のフレイル対策に、ゴルフ練習場が大きな力を発揮する。「フレイル」とは加齢にともない心身が衰えていく状態のこと。いま医療・介護関係者の間では、団塊から上の世代の多くがフレイル状態から要支援・要介護の領域へと向かっていることが問題視されている。
青木功に見習って生涯ゴルフを楽しもう
この過程として、よく語られるのがフレイル・サイクル。定年退職後に周囲との関係性がなくなり、自宅にこもりがちになるのが、その入り口。この時点でデイサービスに一度は出かけてはみたものの、結局行かなくなるケースが少なくない。足が遠のく原因の一つとしてよく聞かれるのが「みんなで同じ体操をさせられたり、歌を歌わされたりして大人の幼稚園みたいだったから」。デイサービスに行っても、楽しくないのだ。
結果、一日中パジャマでの生活が続くことになる。そして加齢に起因する筋力や筋肉量の減少が拍車をかけることとなり活動・エネルギー消費量が低下していく。その状態では食欲が湧かないので食事の摂取量が減り、タンパク質をはじめとした栄養の摂取不足による低栄養の状態にもなる。これが続くと体重が減り、筋力や筋肉量がさらに減少。こうした悪循環がフレイル・サイクル。その先に転倒や骨折、あるいは慢性疾患の悪化が引き金となった要介護状態がある。フレイル・サイクルが招く最悪のパターンだ。
それだけに、フレイル・サイクルの入り口に立ったとき、何とか引き返すことが大事。そこに一石を投じる試みが、兵庫県のゴルフ練習場「多田ハイグリーン」でこの春スタートする。併設されているスパ&フィットネス棟にある岩盤浴施設を、ゲスト用のコミュニケーションサロンに大幅改造するというのだ。
キッカケは、野原和憲社長がよく目にしていた、フィットネスクラブ内の光景だった。「トレーニングに来ている方たちが、ストレッチマットで話に花を咲かせているんです。コーヒー1杯を飲みながら知り合いと話をするために、来てくれる方もおられるわけです。ならば、サロンのスペースを施設内に作ってしまおうとも思いたちました。『俺は、スポーツクラブに行ってんねん』という自覚が、お客様の元気のよりどころにもなっているようですし」。
そもそもここは「打ちっぱなし練習場」という概念をとっくに超越していた。「東京ドーム2〜3個分」という広大な土地に総天然芝300ヤード、トップトレーサー導入済みのドライビングレンジ121打席にはベント芝の練習グリーンも付設。このほか準硬式3打席、軟式6打席を備えたバッティングドーム、8面のテニスコート、フットサルコートも3面、とスポーツ施設は多岐にわたる。
青木功に見習って生涯ゴルフを楽しもう
この過程として、よく語られるのがフレイル・サイクル。定年退職後に周囲との関係性がなくなり、自宅にこもりがちになるのが、その入り口。この時点でデイサービスに一度は出かけてはみたものの、結局行かなくなるケースが少なくない。足が遠のく原因の一つとしてよく聞かれるのが「みんなで同じ体操をさせられたり、歌を歌わされたりして大人の幼稚園みたいだったから」。デイサービスに行っても、楽しくないのだ。
結果、一日中パジャマでの生活が続くことになる。そして加齢に起因する筋力や筋肉量の減少が拍車をかけることとなり活動・エネルギー消費量が低下していく。その状態では食欲が湧かないので食事の摂取量が減り、タンパク質をはじめとした栄養の摂取不足による低栄養の状態にもなる。これが続くと体重が減り、筋力や筋肉量がさらに減少。こうした悪循環がフレイル・サイクル。その先に転倒や骨折、あるいは慢性疾患の悪化が引き金となった要介護状態がある。フレイル・サイクルが招く最悪のパターンだ。
それだけに、フレイル・サイクルの入り口に立ったとき、何とか引き返すことが大事。そこに一石を投じる試みが、兵庫県のゴルフ練習場「多田ハイグリーン」でこの春スタートする。併設されているスパ&フィットネス棟にある岩盤浴施設を、ゲスト用のコミュニケーションサロンに大幅改造するというのだ。
キッカケは、野原和憲社長がよく目にしていた、フィットネスクラブ内の光景だった。「トレーニングに来ている方たちが、ストレッチマットで話に花を咲かせているんです。コーヒー1杯を飲みながら知り合いと話をするために、来てくれる方もおられるわけです。ならば、サロンのスペースを施設内に作ってしまおうとも思いたちました。『俺は、スポーツクラブに行ってんねん』という自覚が、お客様の元気のよりどころにもなっているようですし」。
そもそもここは「打ちっぱなし練習場」という概念をとっくに超越していた。「東京ドーム2〜3個分」という広大な土地に総天然芝300ヤード、トップトレーサー導入済みのドライビングレンジ121打席にはベント芝の練習グリーンも付設。このほか準硬式3打席、軟式6打席を備えたバッティングドーム、8面のテニスコート、フットサルコートも3面、とスポーツ施設は多岐にわたる。
この他にスパ&フィットネス棟もある。2階はウォーキングとランニング用のアクティブスペース、ウォーキング&スイミングができるガラス張りの温水プール、マシンがずらりと並ぶフィットネスジム、1階には露天風呂とテレビ付きサウナがある「ひらの湯」と岩盤浴施設の「HEALING SPA NAGOMI」がレイアウトされている。しかしコロナ禍となり、密閉性の高い岩盤浴は敬遠される傾向に。そこでここを「NAGOMI」の名をそのまま残したコミュニティラウンジへと改造するというのだが、その中身がスゴイ。レストランから食事や飲み物を運んでもらえるコミュニティラウンジ、仕事や勉強に使えるスタディワーキングスペース、地域コミュニティー用の貸し会議室としても使えそうなカルチャースタジオに分かれている。
このスペースを使えるのはシニアだけではない。ジュニア世代にも門戸は開かれるという。「今どきの子供たちは、放課後は塾の自習室で勉強している子も多い。近くには小・中・高と学校がありますから、施設内の自習室で集中して勉強をしてもらう。空いた時間にゴルフのレッスンというのもいいのでは」(野原社長)。
目を引くのは、シニアが集まるサロンのスペースと、自習室のスぺースがかなり接近していること。これによりジュニア世代とシニア世代のふれあいも、自然に行われる。シニア世代にしてみれば孫世代との会話は癒しになるし、多くの人々との交流はフレイル予防のメリットも当然ある。核家族化でシニア世代を知らずに育つ子供も多い中、高齢者を身近に感じることは、ジュニアたちの懐を深くしてくれる要素となる。
フィットネス棟の目の前にある天然芝のバーベキュースペースには、いま2台のキャンピングトレーラーが停車している。実はこれ、全国でレンタカー事業を展開する(株)ワンズネットワークと包括連携協定を結んだことにより、川西市が無償で借り受けることとなったキャンピングトレーラー10台のうちの2台。内部は落ち着いて仕事をするには、ちょうどいいスペース。疲れたらごろりと横になれるベッドもある。
多田ハイグリーンでは大きく分けて3つのプランを用意している。まずランチピクニック。レストランからトレーラーに食事をデリバリーするプラン。キャンピングカーとBBQ窯をセットで貸し出すサービスが2つ目。3番目が個人の書斎・勉強部屋や打ち合わせ用の会議室、あるいは催事会場での営業ブースなどとして活用するアイディアだ。プライバシーを保てるため、リモート会議や商談にも適していて、デスクワークにも集中できる。クラブハウスのレストランも近いし、温浴施設、温水プール、トレーニングジムも目の前。朝9時から夜9時までの「一日まるまる満喫プラン」(ひとり当たり中学生以上3980円、小学生以下2980円)はトレーラーとスポーツアクティビティ、入浴がセット。仕事と余暇を両立させる「ワーケーション」にも最適の施設といえそうだ。
スポーツ施設に行くことを習慣化するためには、そこが出かけて行きたくなる魅力的なものであることが大事。練習場だけでではない、多田ハイグリーンが持つ選択肢の多さは、フレイル予防のテーマにもマッチする。「シニアの分野では健康増進事業として、当施設に来店するとポイントが貰える健幸マイレージを行っています。健幸プログラムは、当施設への来場と利用がポイント化されまして、市からの支援(地域振興商品券)を受け取ることができます」と、前出の野原社長。練習場で、フレイル予防。それはこれから肥大化する一方の医療費、介護費の抑制にもつながるだけに、行政サイドも乗りやすいテーマであることは間違いない。(取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗)
このスペースを使えるのはシニアだけではない。ジュニア世代にも門戸は開かれるという。「今どきの子供たちは、放課後は塾の自習室で勉強している子も多い。近くには小・中・高と学校がありますから、施設内の自習室で集中して勉強をしてもらう。空いた時間にゴルフのレッスンというのもいいのでは」(野原社長)。
目を引くのは、シニアが集まるサロンのスペースと、自習室のスぺースがかなり接近していること。これによりジュニア世代とシニア世代のふれあいも、自然に行われる。シニア世代にしてみれば孫世代との会話は癒しになるし、多くの人々との交流はフレイル予防のメリットも当然ある。核家族化でシニア世代を知らずに育つ子供も多い中、高齢者を身近に感じることは、ジュニアたちの懐を深くしてくれる要素となる。
フィットネス棟の目の前にある天然芝のバーベキュースペースには、いま2台のキャンピングトレーラーが停車している。実はこれ、全国でレンタカー事業を展開する(株)ワンズネットワークと包括連携協定を結んだことにより、川西市が無償で借り受けることとなったキャンピングトレーラー10台のうちの2台。内部は落ち着いて仕事をするには、ちょうどいいスペース。疲れたらごろりと横になれるベッドもある。
多田ハイグリーンでは大きく分けて3つのプランを用意している。まずランチピクニック。レストランからトレーラーに食事をデリバリーするプラン。キャンピングカーとBBQ窯をセットで貸し出すサービスが2つ目。3番目が個人の書斎・勉強部屋や打ち合わせ用の会議室、あるいは催事会場での営業ブースなどとして活用するアイディアだ。プライバシーを保てるため、リモート会議や商談にも適していて、デスクワークにも集中できる。クラブハウスのレストランも近いし、温浴施設、温水プール、トレーニングジムも目の前。朝9時から夜9時までの「一日まるまる満喫プラン」(ひとり当たり中学生以上3980円、小学生以下2980円)はトレーラーとスポーツアクティビティ、入浴がセット。仕事と余暇を両立させる「ワーケーション」にも最適の施設といえそうだ。
スポーツ施設に行くことを習慣化するためには、そこが出かけて行きたくなる魅力的なものであることが大事。練習場だけでではない、多田ハイグリーンが持つ選択肢の多さは、フレイル予防のテーマにもマッチする。「シニアの分野では健康増進事業として、当施設に来店するとポイントが貰える健幸マイレージを行っています。健幸プログラムは、当施設への来場と利用がポイント化されまして、市からの支援(地域振興商品券)を受け取ることができます」と、前出の野原社長。練習場で、フレイル予防。それはこれから肥大化する一方の医療費、介護費の抑制にもつながるだけに、行政サイドも乗りやすいテーマであることは間違いない。(取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗)
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