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    おやじゴルフニュース「フェニックスオープンを見て思うゴルフのおおらかさ」

    ゴルフはそこそこそのキャリアを積んでいくと、マンネリや金欠、はたまた体の痛みなどさまざまな問題を抱えながら続けてゆくこととなります。そのとき感じているのは、ゴルフ道を極めようとガムシャラに目指していた目標を失う虚無感。ここらでひと息入れてみませんか。コラムニスト木村和久が、エンジョイゴルフの本質と核心、そしてこれからどうやってゴルフ生活を楽しんでいけばいいのかを提案し、マンガ家・かざま鋭二のイラストと共に旬なゴルフ情報をお届けします。

    配信日時:2022年3月15日 03時00分

    • ゴルフライフ
    イラスト・かざま鋭二
    イラスト・かざま鋭二
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    先日のフェニックスオープン(米国アリゾナ州)の試合を見ましたか? すごかったのが3日目の16番、名物ショートホールでのホールインワンでした。このホールはスタジアム化してあり、2万人収容の観客席がホールの周りをぐるっと取り囲んでいます。そこでサム・ライダー選手が、54度のウェッジを使い124ヤードの距離をショットすると、ボールはカップ近くに落ち、そこからポンと跳ねてから横にスピンしてカップイン。見事、ホールインワンを達成しました。

    フェニックスオープン 名物ホール16番に降り注いだビール缶【写真】

    2万人のギャラリーが地割れのような大歓声を上げ、ペットボトルの飲み物をシャワーのようにかけまくります。勢い余ったギャラリーは、ペットボトルや缶をグリーンやバンカーに投げ込み、一時、試合ができない状態になりました。

    いやあ〜、中には飲み物が少し入ってるのもあるじゃん。これじゃグリーンボコボコだろ、大丈夫か? いろいろ心配しましたが、ここでのホールインワンは7年ぶりなので、まあいいのかな。お祭りなんだからさ。これぞアメリカ、実にショーアップ化しているなと感激しました。今回はこのホールインワン話をきっかけに、トーナメントのショービジネス化について考えてみます。

    ■大相撲の座布団投げはお咎めなし■

    まずグリーンへのペットボトル投げ行為ですが、これは大相撲の座布団投げと似ているなと思いました。相撲は国技といわれ、しかも女性は土俵に上がれない。厳格なしきたりや作法があります。けど大番狂わせが起きた場合、座布団を投げてもお咎めなしとされています。

    女性はダメでも座布団は土俵に上がっていいんだ。これが相撲の懐の深さです。相撲は国技といいながら、いち早く外国人力士の参加を認めてます。高見山に始まり小錦、曙などが頑張り、今やモンゴル勢がいないと運営が成り立たない状況になっています。そういう門戸開放政策が今の隆盛を築いたのです。厳格なしきたりがありつつも、座布団は投げていい。そもそ枡席じゃ酒飲んで弁当を食べ、小宴会している状態です。なにしろ、お土産までついてますから。スポーツだけど、本来は興行です。お客さん目線で、いかに興行が盛り上がるかを考えている。だから盛り上がった結果の座布団投げはありなのです。

    そしてフェニックスオープンの熱狂ですが、部外者とはいえグリーンを傷つけることはどうなんでしょう。R&AおよびUSGAの厳しいルールに則りプレーは行われています。ホールインワンの後に打つ選手は、明らかにグリーンのコンディションが悪くなります。イレギュラーにボールが跳ねたり、曲がったりすることが生じる、その可能性はあります。

    そこはホールインワンのご褒美で目をつむっていただき、試合を盛り上げる方向にしようということですね。

    それにしてもこの、TPCスコッツデールスタジアムコースってギャラリーの多さに驚きますよね。1ホールで2万人収容するって、日本じゃ4日間通しのトーナメントでも、集められない数じゃないですか。過去にはコース全体で、1週間トータルの入場者が70万人越えだったのだから恐れ入ります。当然日本も見習うべきで、なんか工夫して欲しいですよね。

    ■冬季五輪では短時間でエキサイトさせてくれる競技が人気■

    日本の場合、トーナメント用に作られたコースというのはほとんど聞いたことがありません。だから試合のたんびに、足場を組んでやぐらを建て、観客席を作らねばならないのです。そろそろ交通の便がよいコースに狙いを定め、トーナメント用の常設コースとして改修すればいいのに。日本ツアーは男女とシニアがあるので最低年3回使えます。ほかイベントや下部ツアー開催などにも使えば、売り上げがアップすると思いますけど。

    もちろん試合に使わない日は、通常営業でアマチュアが利用すればいいのです。現在日本の男子ツアーは瀕死の状態で、ジャンボさんを始め沢山の人が、試合数減少を憂えています。これを復活させるのは、ツアーのショービズ化と、スター選手の育成しかないと思います。

    まずショービズ化ですが、冬季オリンピックを見ても分かるように、より短時間でエキサイトさせてくれる競技が人気です。昔はアルペン回転、大回転、滑降あたりが人気でしたが、今はスノーボードのハーフパイプや、フリースタイルスキーに代表されるように、スポーツだけど限りなく曲芸に見えるものがすごくウケてます。しかも短時間で見終えるのがミソ。これはテレビ画面を長時間見る集中力のない世代にぴったしなんですね。

    だからゴルフも5秒ぐらいで結果が分かる、スタジアムコースでのホールインワンが大ウケなのです。今後、プロアマのときでいいから実験的に、ニアピンコンテストや毎ホール誰か脱落していくサバイバルゲームなどを、やってみてもいいと思います。ネット観戦じゃギフトという投げ銭で選手を応援してもいいし、誰が勝つかを当てるゲームもありです。あくまでチャリティにして、当たった人の中から、抽選でノベルティをあげるとかね。これは例えばの話です。あんまり突っ込まないで下さいよ。

    何をやるにしても、必ず反対意見をいう人はいます。それに萎縮してると現状は悪化するのみ。失敗していいから、何か動かないと。そしてゴルフファーの層を厚くするという意味では、今から何十年もかけて植林みたいなことをやらないといけないと思います。つまり某ゴルフ強豪大学にばかりに頼ってないで、ちゃんとしたスポーツ学を教える学校で、理論的にゴルフを学び、プロを目指すとかね。そういうことをやって欲しいのです。

    ■野球の半分でいいから全国の中学高校にゴルフ部を!■

    甲子園を目指す高校は全国に沢山あり、それが大学野球、はてはプロ野球予備軍になって層の厚さとなるわけです。ゴルフも野球の半分ぐらいでいいから、各中学、高校にゴルフ部を作って活動しないと。地方で近くにゴルフ場のある学校はいっぱいあると思うんです。それは地の利があるわけで、そこで関係者の協力があれば、立派なゴルフ部が出来上がります。

    わたしは宮城県の沿岸部で育ちました。公立高校でしたが、ヨット部とボート部がやたら強くて、インターハイなどにもしばしば出場しています。ボートやヨットを買うのって、すごくお金がかかります。後援会の協力なくしてやってられません。

    ある日、ヨット部の生徒たちが練習の帰りになぜか、漁港に寄って接岸しようとしていました。多分、補給か修理だと思いますが。慣れない漁港でのヨットの接岸は結構難しくて、あわや岸壁にヨットをぶつけそうになりました。そのとき、ひとりのヨット部の生徒が海に飛び込み、身を挺してヨットの衝突を防いだのです。それをたまたま見ていた、水産会社の社長さんが「見あげたもんだ」といってえらく感銘し、その後ヨットを一艘プレゼントしました。

    こういうラッキーな寄付も、ヨットを守るという献身的な行為をやったからこそ起こるんですな。だから公立校だって、誰かがやる気を出せば、ゴルフ部なんてすぐ出来ますよ。クラブは中古なら安いし、指導者だってゴルフ場にいっぱいいるでしょう。そうやって少しずつ裾野を広げていけば、必ずやゴルフ人口が増え、そこで有能な選手が沢山育っていくんですけどね。

    「ゴルフって昔ほど面白くないです」

    それはほかにもっと面白い遊びがいっぱい出来ているから、相対的に面白さが低下しているのです。そこに気づかないと。元々のゴルフは文化、伝統、醍醐味などの下地はあります。だから現代風に、ちょっとアレンジを加えるだけで、蘇ると思うのです。テレビ中継だって弾道解析システムを使い始めてから、ショット映像が「みんなのゴルフ」状態になって、すげえ面白くなりました。そういう工夫をして欲しいということです。

    以前、コースは忘れましたが、ナイスオンすると噴水が出るショートホールがあって、それで結構盛り上がったりもしました。栗原はるみさんの料理教室じゃないけど、ひと手間加えるとものすごく美味しくなる!的なことです。

    そしてそれはゴルフ関係者のアイデアじゃなくて、まったく関係のない別ジャンルの人のアイデアが、ゴルフと融合すると面白くなるような気がします。誰か地味な男子トーナメントを助けてあげてくださいな。
    木村和久
    きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。

    かざま鋭二
    かざま・えいじ/1947年生まれ、東京都出身。多くのゴルフマンガを執筆。代表作「風の大地」(原作・坂田信弘)では小学館漫画賞を受賞。現在、エイジシュートに挑戦中。
    連載

    木村和久のおやじが気になる旬なゴルフ情報

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