第10回 女子ツアーで距離計解禁! スコアメイクに必要な距離の情報とは?【小田美奈のキャディ目線】
かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!
配信日時:2022年3月18日 03時30分
いよいよ距離計が解禁となった国内女子ツアー。距離計が彼らにもたらすものとは? 宮里藍の専属キャディの後、ハウスキャディとして働く小田美奈さんが、距離計の使用や、アルバイト時代に水巻善典に教わったスコアメイクに必要な距離の情報について語る。
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プロキャディはヤーデージブックに何をメモしている?【写真】
「歩測」という測り方を知ったのは、学生時代のこと。江戸時代に、伊能忠敬という地理学者が全国の沿岸を歩測で測量し、「大日本沿岸輿地全図」を作成したことを学んで知りました。資料集などに載っていたその地図は、当時のものとは思えないほど精密。様々な道具を用いたとはいえ、歩測で調べたというのだから驚きです。
キャディにとっても、距離を知るうえで大事な歩測。試合中は、距離をできる限り正確に知るために歩測によって距離を測ります。
私がキャディとして歩測をするようになったのは、まだトーナメントでアルバイトキャディをしていた頃のこと。まず、他のプロキャディの方に、測り方を教わりました。実際に測らせていただいたのは、とある大会のアルバイトで、プロアマ戦の際に水巻善典プロのキャディをさせていただいたときでした。メモをホテルに置いてきてしまったという水巻プロ。アルバイトキャディでありながらプロキャディに憧れていた私を知ってか知らずか、水巻プロは私がプロ用のメモをこっそり購入して所持していたのを見て、全ホール測ることをすすめてくれました。そのときに、正しい測り方だけでなく、プロに対してどの距離をどう伝えるか、情報として必要な距離と必要でない距離があることを教えていただいたのです。
テレビ中継などでは分かりにくいのですが、日本のツアーではグリーンエッジの起点100ヤードの地点から50ヤード刻みで赤や黄色の印がされています。プロやキャディがラウンド中に見ているメモにも、スプリンクラーや排水溝といった目印からグリーンエッジまでの距離が書いてあり、そこからボールの横まで歩測をすればエッジまでの距離がわかるという仕組みになっています。ピン位置は、あらかじめスタートのときに配られており、それを足すことでボールからピンまでの距離を知ることができます。
必要な距離は、ピンまでだけではありません。ピン方向のエッジまでの距離、ピン後方のグリーンから出てしまう距離(バックエッジ)、二段グリーンであればその段までの距離、バンカー越えの距離、池までの距離、刻む場所までの距離など、必要な情報は様々です。それは今打つ球がどんな状況か、どこにどう打っていくか、そのイメージする球筋によって違います。
ボールを曲げてしまった場合、ボールを出したい場所までの距離、レイアップする際の目標までの距離など、歩測では測りきれないような距離の場合は、メモにある距離を参考におおよその距離を計算したり、目測で測ったりもします。
今年、いよいよ女子ツアーで距離計の使用が全面解禁となりました。これにより、今まで歩測で時間がかかっていたものが短縮され、ラウンドスピードも早くなることが期待されています。キャディにとっても、トラブルの際の距離計測や、グリーンに対して斜めに打って行くような誤差の生じる場合など、救われる場面はかなりあると思います。
現在私がキャディをさせていただいているゴルフ場でも、カートに距離が出るようになっており、腕時計式の距離計も持つことになっています。慣れてしまうと、これがまた大変便利。隣のホールからでも、ピンまでの距離やバンカーまでの距離などがひと目でわかるようになりました。自分の距離計を持っていらっしゃるお客様も、ずいぶんと多くなった印象です。
それでも、歩測が完全になくなることはないと思っています。グリーン周辺など、必要な情報はピンの様に距離計で測れるようなものばかりではないからです。打球のイメージによっては、落としどころも変わってきます。そのときにはやはり、歩いて測る、そして状況を見に行くということが必要になると思います。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝に貢献。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。
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プロキャディはヤーデージブックに何をメモしている?【写真】
「歩測」という測り方を知ったのは、学生時代のこと。江戸時代に、伊能忠敬という地理学者が全国の沿岸を歩測で測量し、「大日本沿岸輿地全図」を作成したことを学んで知りました。資料集などに載っていたその地図は、当時のものとは思えないほど精密。様々な道具を用いたとはいえ、歩測で調べたというのだから驚きです。
キャディにとっても、距離を知るうえで大事な歩測。試合中は、距離をできる限り正確に知るために歩測によって距離を測ります。
私がキャディとして歩測をするようになったのは、まだトーナメントでアルバイトキャディをしていた頃のこと。まず、他のプロキャディの方に、測り方を教わりました。実際に測らせていただいたのは、とある大会のアルバイトで、プロアマ戦の際に水巻善典プロのキャディをさせていただいたときでした。メモをホテルに置いてきてしまったという水巻プロ。アルバイトキャディでありながらプロキャディに憧れていた私を知ってか知らずか、水巻プロは私がプロ用のメモをこっそり購入して所持していたのを見て、全ホール測ることをすすめてくれました。そのときに、正しい測り方だけでなく、プロに対してどの距離をどう伝えるか、情報として必要な距離と必要でない距離があることを教えていただいたのです。
テレビ中継などでは分かりにくいのですが、日本のツアーではグリーンエッジの起点100ヤードの地点から50ヤード刻みで赤や黄色の印がされています。プロやキャディがラウンド中に見ているメモにも、スプリンクラーや排水溝といった目印からグリーンエッジまでの距離が書いてあり、そこからボールの横まで歩測をすればエッジまでの距離がわかるという仕組みになっています。ピン位置は、あらかじめスタートのときに配られており、それを足すことでボールからピンまでの距離を知ることができます。
必要な距離は、ピンまでだけではありません。ピン方向のエッジまでの距離、ピン後方のグリーンから出てしまう距離(バックエッジ)、二段グリーンであればその段までの距離、バンカー越えの距離、池までの距離、刻む場所までの距離など、必要な情報は様々です。それは今打つ球がどんな状況か、どこにどう打っていくか、そのイメージする球筋によって違います。
ボールを曲げてしまった場合、ボールを出したい場所までの距離、レイアップする際の目標までの距離など、歩測では測りきれないような距離の場合は、メモにある距離を参考におおよその距離を計算したり、目測で測ったりもします。
今年、いよいよ女子ツアーで距離計の使用が全面解禁となりました。これにより、今まで歩測で時間がかかっていたものが短縮され、ラウンドスピードも早くなることが期待されています。キャディにとっても、トラブルの際の距離計測や、グリーンに対して斜めに打って行くような誤差の生じる場合など、救われる場面はかなりあると思います。
現在私がキャディをさせていただいているゴルフ場でも、カートに距離が出るようになっており、腕時計式の距離計も持つことになっています。慣れてしまうと、これがまた大変便利。隣のホールからでも、ピンまでの距離やバンカーまでの距離などがひと目でわかるようになりました。自分の距離計を持っていらっしゃるお客様も、ずいぶんと多くなった印象です。
それでも、歩測が完全になくなることはないと思っています。グリーン周辺など、必要な情報はピンの様に距離計で測れるようなものばかりではないからです。打球のイメージによっては、落としどころも変わってきます。そのときにはやはり、歩いて測る、そして状況を見に行くということが必要になると思います。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝に貢献。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。