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マスターズの感動をもう一度! 世界が認める松山英樹のゴルフ
2021年松山英樹はアジア人初のマスターズチャンピオンに輝いた。憧れのタイガー・ウッズが5度の戴冠を果たしたメジャーでグリーンジャケットに袖を通した日本のエースは今年2月30歳になった。そして4月第2週美しいオーガスタで連覇に挑む。昨年の感動をもう一度。そして2連覇達成をみんなで応援しよう。<br><br> 文/川野美佳 写真 /Getty Images
配信日時:2022年3月28日 03時00分
ライバルは「ヒデキはロボット」と舌を巻いた
最終日最終組を一緒に回ったザンダー・シャウフェレは前半スコアを落とし一時松山に9打差をつけられた。
「ヒデキはまるでロボット。差を詰めてプレッシャーをかけたかったけれど手も足も出なかった」
耐えて忍んでチャンスを待った彼はバック9で緻密なロボットに狂いが生じたのを見逃さなかった。15番パー5。その時点で両者の差は4。そこまで王道のゴルフを貫いてきた松山が2打目を奥の池に打ち込んだのだ。
「驚いた。2オンを狙う必要がないのに突っ込んでくるとは」
バーディ&ボギーで2打差。チャンスと見たシャウフェレは攻めた。続く16番パー3で風を計算しピンを果敢に狙うも突如風は止みボールは池へ。一瞬で優勝は遠のいた。
後半苦しんだ松山だが最後まで正攻法で勝ち切った。笑顔でバンザイをしたライバルの姿を、シャウフェレはその目に焼き付けた。
「ゴルフが大好きな日本という国を背負った彼はどれほどのプレッシャーと戦っていたのだろう。重圧に打ち勝ち優勝したヒデキは凄い。やるべきことすべてをやり切った」と松山を称賛した。
「ヒデキはまるでロボット。差を詰めてプレッシャーをかけたかったけれど手も足も出なかった」
耐えて忍んでチャンスを待った彼はバック9で緻密なロボットに狂いが生じたのを見逃さなかった。15番パー5。その時点で両者の差は4。そこまで王道のゴルフを貫いてきた松山が2打目を奥の池に打ち込んだのだ。
「驚いた。2オンを狙う必要がないのに突っ込んでくるとは」
バーディ&ボギーで2打差。チャンスと見たシャウフェレは攻めた。続く16番パー3で風を計算しピンを果敢に狙うも突如風は止みボールは池へ。一瞬で優勝は遠のいた。
後半苦しんだ松山だが最後まで正攻法で勝ち切った。笑顔でバンザイをしたライバルの姿を、シャウフェレはその目に焼き付けた。
「ゴルフが大好きな日本という国を背負った彼はどれほどのプレッシャーと戦っていたのだろう。重圧に打ち勝ち優勝したヒデキは凄い。やるべきことすべてをやり切った」と松山を称賛した。
ライバルからロボットと呼ばれた松山だが、実は「1番のティグラウンドに上がったら自分がトップでマスターズ最終日をプレーするんだという思いが湧いてきて、すごくナーバスになってしまった」と振り返る。
直近の試合でベスト10入りがなかったこともあり「期待値は低かった」。だが練習日にスイングと自分のフィーリングがピタッと噛み合う瞬間が訪れた。
「これで行けるかもしれない」
直感は正しかった。夕陽に染まるクラブハウス前、前年覇者のダスティン・ジョンソンからグリーンジャケットを着せかけられた松山の表情は、大きな仕事をやり遂げた男の達成感に溢れていた。
直近の試合でベスト10入りがなかったこともあり「期待値は低かった」。だが練習日にスイングと自分のフィーリングがピタッと噛み合う瞬間が訪れた。
「これで行けるかもしれない」
直感は正しかった。夕陽に染まるクラブハウス前、前年覇者のダスティン・ジョンソンからグリーンジャケットを着せかけられた松山の表情は、大きな仕事をやり遂げた男の達成感に溢れていた。
松山の心を揺さぶった言葉「一緒に世界を目指そう」
11年前、日本は未曾有の震災に見舞われた。アジアパシフィックアマチュア選手権に優勝しその年(2011年)のマスターズ出場権を手にしていた松山は、当時東北福祉大学在学中だったが、自分も含め多くの友人や知り合いが被災した。
「こんなときに自分だけ華やかな舞台に上がっていいのだろうか?」
思い悩んだ。それでも周囲の温かい声に背中を押され「マスターズで精一杯プレーすることが送り出してくれた人への恩返しになる」と出場を決意。すると3日目に68をマークしローアマのタイトルを獲得したのだ。
「ゾクゾクしました。少しは恩返しできたかな。(日本に)帰ったらまずはボランティア活動をしたいと思います」と語った20歳の青年に共感したブランドがあった。レクサスである。
「こんなときに自分だけ華やかな舞台に上がっていいのだろうか?」
思い悩んだ。それでも周囲の温かい声に背中を押され「マスターズで精一杯プレーすることが送り出してくれた人への恩返しになる」と出場を決意。すると3日目に68をマークしローアマのタイトルを獲得したのだ。
「ゾクゾクしました。少しは恩返しできたかな。(日本に)帰ったらまずはボランティア活動をしたいと思います」と語った20歳の青年に共感したブランドがあった。レクサスである。
松山が大学を卒業しプロ入り。
松山の活躍を応援していたトヨタ自動車・豊田社長が「一緒に世界を目指そう」と松山にアプローチし、所属契約となった14年、米ツアー本格参戦を果たした。世界のトップと戦いメジャーを獲る夢を抱く松山にとって、それは有り難い言葉。広大なアメリカで松山がゴルフに集中できる環境を整えるべく全面バックアップを約束。アメリカだけでなく全英オープンが開催されるイングランドでもレクサス車輌を提供し、転戦生活をサポートしてきた。
プロゴルファーは試合でプレーすることがすべてではない。試合が終われば次の会場へと迅速に移動し試合に向けた準備を整えなければならない。その際の移動手段がレクサスなのは、松山にとって大きなアドバンテージ。
試合会場で大勢の人に囲まれ騒がれたあと、クルマのドアを開けシートに腰を沈める瞬間。それがオンとオフを切り替えるスイッチになる。レクサスとともに走り挑む松山とレクサスとの絆は、今年で9年目を迎えた。
松山の活躍を応援していたトヨタ自動車・豊田社長が「一緒に世界を目指そう」と松山にアプローチし、所属契約となった14年、米ツアー本格参戦を果たした。世界のトップと戦いメジャーを獲る夢を抱く松山にとって、それは有り難い言葉。広大なアメリカで松山がゴルフに集中できる環境を整えるべく全面バックアップを約束。アメリカだけでなく全英オープンが開催されるイングランドでもレクサス車輌を提供し、転戦生活をサポートしてきた。
プロゴルファーは試合でプレーすることがすべてではない。試合が終われば次の会場へと迅速に移動し試合に向けた準備を整えなければならない。その際の移動手段がレクサスなのは、松山にとって大きなアドバンテージ。
試合会場で大勢の人に囲まれ騒がれたあと、クルマのドアを開けシートに腰を沈める瞬間。それがオンとオフを切り替えるスイッチになる。レクサスとともに走り挑む松山とレクサスとの絆は、今年で9年目を迎えた。
ドライバーでドロー、2打目の3Wでフェード。こんなプロは見たことがない
今シーズンの松山は意義のある試合で優勝している。日本で開催されたZOZOチャンピオンシップ、そして青木功が日本人初のPGAツアー覇者となったソニーオープン・イン・ハワイで栄冠に輝いた。17年のツアー5勝目からマスターズでの6勝目まで4年かかったが、1年足らずで勝ち星を「8」まで伸ばした。
そんな彼の進化について海外の著名なコーチはどう見ているのか? ビリー・ホーシェルやブラント・スネデカーを年間王者に育て上げたトッド・アンダーソン氏は、松山のショット力を「トップ中のトップ」と評する。
「ソニーオープンのプレーオフで、残り276ヤードから3番ウッド(のセカンドショット)でピンそばに寄せた1打。あれは衝撃的でした。普通トッププロでも270ヤード距離があると球が低くなるもの。ところがヒデキの弾道は高く美しい放物線を描いてグリーンを捉えた。あの技術は凄い」
またドローとフェードを自在に操れるのが松山の魅力だという。
「ティショットは完璧なドロー。セカンドは完璧なフェード。こんなことをできるプロはそういない。だいたいは得意な持ち球を100とすればその逆は80くらいまで精度が落ちる。だがそれを1ホールで完璧に打ち分けるのだから素晴らしい」と絶賛する。
またあるコーチは「これまでヒデキはショットではJ・トーマスやマキロイと遜色がないといわれてきたが、弱点はパットだった。だが今年はかなりスキルアップしている。あのショットにパットが噛み合えば怖いものはない」と語る。
そんな彼の進化について海外の著名なコーチはどう見ているのか? ビリー・ホーシェルやブラント・スネデカーを年間王者に育て上げたトッド・アンダーソン氏は、松山のショット力を「トップ中のトップ」と評する。
「ソニーオープンのプレーオフで、残り276ヤードから3番ウッド(のセカンドショット)でピンそばに寄せた1打。あれは衝撃的でした。普通トッププロでも270ヤード距離があると球が低くなるもの。ところがヒデキの弾道は高く美しい放物線を描いてグリーンを捉えた。あの技術は凄い」
またドローとフェードを自在に操れるのが松山の魅力だという。
「ティショットは完璧なドロー。セカンドは完璧なフェード。こんなことをできるプロはそういない。だいたいは得意な持ち球を100とすればその逆は80くらいまで精度が落ちる。だがそれを1ホールで完璧に打ち分けるのだから素晴らしい」と絶賛する。
またあるコーチは「これまでヒデキはショットではJ・トーマスやマキロイと遜色がないといわれてきたが、弱点はパットだった。だが今年はかなりスキルアップしている。あのショットにパットが噛み合えば怖いものはない」と語る。
つまりマスターズ連覇は、決して夢ではないという話なのだ。ハードスケジュールとツアー屈指の練習量のせいで肩と首が本調子ではないというが、そんな時こそ応援の力がものをいう。
ZOZOチャンピオンシップでもソニーオープン・イン・ハワイでも「日本の方々の声援に励まされた」という松山。来たるべきマスターズでも、皆で世界のヒデキにエールを贈りたい。それが彼の原動力になる。
ZOZOチャンピオンシップでもソニーオープン・イン・ハワイでも「日本の方々の声援に励まされた」という松山。来たるべきマスターズでも、皆で世界のヒデキにエールを贈りたい。それが彼の原動力になる。
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