第13回 「携帯電話のシャッター音に、通路をふさぐ移動」 選手とギャラリーの微妙な関係【小田美奈のキャディ目線】
かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!
配信日時:2022年3月29日 04時00分
今年の国内女子ツアーは、開幕からすべての試合が有観客で行われている。大会を盛り上げる大事な存在であるギャラリー。時には選手を鼓舞し、空気を変える。しかし、時にその存在が選手を苦しめることも。トーナメント運営のアルバイトでギャラリーの誘導を経験し、その後宮里藍の専属キャディとしてその存在に悩むことも多かった小田美奈さんが考えるギャラリーとは。
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世界で一番騒がしいパー3で、ギャラリーが盛り上がりすぎた結果…【動画】
ギャラリーに取り囲まれた最終18番ホール。選手達の熱い戦いに沸きあがる大歓声。地響きのように空気を揺らすそれに、鳥肌が立つ。
いつも応援してくれるファンだけでなく、見に来てくれるギャラリーの方々がいるからこそ、選手たちはより一層輝きを増します。期待に応えるため、良いプレーを見せるためにも、日々努力する選手たち。ギャラリーは、大会を盛り上げる大切な存在です。
しかし残念なことに、そんなギャラリーが選手にとって曲者になってしまうことがあります。
まず、携帯電話の着信音や話し声、スパイクを履いて見にいらした方の足音、弁当のビニール袋など、ギャラリーの立てる音が選手のプレーに支障をきたすような状況です。テレビ中継でも、選手が一度アドレスを解き、ある方向を見ている場面、時にはキャディが注意をしているような場面を見ることがあります。スイングの途中で音が鳴れば、ミスショットに繋がることも少なくありません。ロープの中にいると、意外にも外の音がよく聞こえるものなのです。
「集中していれば聞こえないはずだ」と言われたことがありますが、ゴルフのように長時間かけて行うスポーツは、集中力を持続し続けることは難しく、そのコントロールもプレーの内に入ります。プレッシャーのかからない状況に自分を置いておき、最終ホールに向けて集中力を高めていく。そのためには、集中し過ぎない状況を自ら作ることもありうるのです。
携帯電話のカメラ機能のシャッター音は、ゴルフ界だけに関わらず問題になっています。シャッターの音が気になって、なかなかスイングに入れないといったこともありました。
音の問題だけではありません。ギャラリーが選手の足を止めてしまうことも、プレーに少なからず影響が出ます。
サインや握手を求められるといったことや、選手より先に移動しようというギャラリーの方が通路をふさいでしまといった場合です。考えて打って移動して、考えて打って移動して…というリズムがあり、以前も触れましたが、移動のときの歩く速さはプレーにも影響が出ます。
キャディは選手に一番近く、ギャラリーの視界にも入りやすい存在。ギャラリーに静かにするよう、もしくは止まってくれるように指示することも少なくありません。
そこで難しいのが、キャディは見せる側でありながら選手を守る立場でもあるということ。宮里藍プロのキャディをさせていただいていた頃、私は選手のことばかりになってしまって、ギャラリーの方に厳しくしてしまうことが多々ありました。シャッターの音が私の怒りのスイッチになっているかのように、ギャラリーの方を睨んでしまったことも。もう少し賢いやり方があっただろうなと、後になって反省しました。だからといって、あの状況をどうすれば良かったのか、未だに答えは見つかりません。
18番の大歓声は、今でも忘れられません。地響きのようなそれに思わず出た鳥肌も、ギャラリーの方々の「ああー」という溜息に自分の心を代弁しているかのようで笑ってしまったことも。
選手もキャディも、ギャラリーの方々の反応に一喜一憂しているのです。みんなで選手の良いプレーを後押しする、そんな雰囲気をギャラリーの皆さんと一丸となって作ることができたら、選手のプレーもますます面白いものになるに違いありません。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝に貢献。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。
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世界で一番騒がしいパー3で、ギャラリーが盛り上がりすぎた結果…【動画】
ギャラリーに取り囲まれた最終18番ホール。選手達の熱い戦いに沸きあがる大歓声。地響きのように空気を揺らすそれに、鳥肌が立つ。
いつも応援してくれるファンだけでなく、見に来てくれるギャラリーの方々がいるからこそ、選手たちはより一層輝きを増します。期待に応えるため、良いプレーを見せるためにも、日々努力する選手たち。ギャラリーは、大会を盛り上げる大切な存在です。
しかし残念なことに、そんなギャラリーが選手にとって曲者になってしまうことがあります。
まず、携帯電話の着信音や話し声、スパイクを履いて見にいらした方の足音、弁当のビニール袋など、ギャラリーの立てる音が選手のプレーに支障をきたすような状況です。テレビ中継でも、選手が一度アドレスを解き、ある方向を見ている場面、時にはキャディが注意をしているような場面を見ることがあります。スイングの途中で音が鳴れば、ミスショットに繋がることも少なくありません。ロープの中にいると、意外にも外の音がよく聞こえるものなのです。
「集中していれば聞こえないはずだ」と言われたことがありますが、ゴルフのように長時間かけて行うスポーツは、集中力を持続し続けることは難しく、そのコントロールもプレーの内に入ります。プレッシャーのかからない状況に自分を置いておき、最終ホールに向けて集中力を高めていく。そのためには、集中し過ぎない状況を自ら作ることもありうるのです。
携帯電話のカメラ機能のシャッター音は、ゴルフ界だけに関わらず問題になっています。シャッターの音が気になって、なかなかスイングに入れないといったこともありました。
音の問題だけではありません。ギャラリーが選手の足を止めてしまうことも、プレーに少なからず影響が出ます。
サインや握手を求められるといったことや、選手より先に移動しようというギャラリーの方が通路をふさいでしまといった場合です。考えて打って移動して、考えて打って移動して…というリズムがあり、以前も触れましたが、移動のときの歩く速さはプレーにも影響が出ます。
キャディは選手に一番近く、ギャラリーの視界にも入りやすい存在。ギャラリーに静かにするよう、もしくは止まってくれるように指示することも少なくありません。
そこで難しいのが、キャディは見せる側でありながら選手を守る立場でもあるということ。宮里藍プロのキャディをさせていただいていた頃、私は選手のことばかりになってしまって、ギャラリーの方に厳しくしてしまうことが多々ありました。シャッターの音が私の怒りのスイッチになっているかのように、ギャラリーの方を睨んでしまったことも。もう少し賢いやり方があっただろうなと、後になって反省しました。だからといって、あの状況をどうすれば良かったのか、未だに答えは見つかりません。
18番の大歓声は、今でも忘れられません。地響きのようなそれに思わず出た鳥肌も、ギャラリーの方々の「ああー」という溜息に自分の心を代弁しているかのようで笑ってしまったことも。
選手もキャディも、ギャラリーの方々の反応に一喜一憂しているのです。みんなで選手の良いプレーを後押しする、そんな雰囲気をギャラリーの皆さんと一丸となって作ることができたら、選手のプレーもますます面白いものになるに違いありません。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝に貢献。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。