第18回 「感じている風と上空の風が違うのには理由がある」 コースに潜む罠 風の通る道を探す【小田美奈のキャディ目線】
かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!
配信日時:2022年4月18日 08時30分
さっきはアゲインストだったはずなのに…。フォローだと気が付いたときには、すでに遅く、ボールはグリーン奥へ。場所によって時間によって、刻々と変わる風。それは、コースの罠のひとつだと言う元プロキャディに話を聞いた。宮里藍の専属キャディを務めた後、ハウスキャディとして働く小田美奈さんの、コースの罠に嵌まらない方法。〜風編〜
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強風でグリーン上のボールが止まらず、競技が中止になったことも【写真】
兵庫県のよみうりカントリークラブで開催された「関西オープン」。もう10年ほど前になりますが、「よみうりオープン」が開催されていたコースということもあり、懐かしさもあって練習ラウンドの様子をネット放送で見ていました。
その中で気になったのは、セカンド地点へ移動中のプロ同士の会話。コースについての特徴としてまず出てきたのは、「風の難しさ」でした。国内ツアーの中でも、特に高低差のあるコースとして知られるよみうりカントリークラブ。そのコース内を駆け巡る風に、私もずいぶんと悩まされました。
打球に影響がある上に、常に変化し続ける…そんな厄介な風。風の吹いてくる方向や強さは自然によるものなので、どんなに勉強してもたくさんの経験を積んでも、完璧に読み切れるというものではありません。
ゴルフやスキーのジャンプといった競技のテレビ中継では、風の強さと方向を示す表示を見ることができますが、それを見ていればわかるように、同じ場所であっても風の向きや強さが一定であることはほとんどありません。少しズレれば、正反対の風という状況もあります。どんなに強い風であっても、一瞬止むこともあり、方向を変えることもあります。
コースのレイアウトによっても、風はその本来の強さと方向を変えます。それは設計者による罠である場合もあれば、木々の成長によって自然と作り出された罠という場合もあるでしょう。
ホールの周囲を木々が囲んでいるようなコースでは、球の高さによってもその影響は違ってきます。グリーンの奥に高い木々が密集していれば、グリーンの周辺に風がない可能性も。アップダウンの強いコースでは、吹き上がる風と吹き下ろす風、そして跳ね返って来る風に注意しなければなりません。そこが風の通り道になっているのかどうか。どの方向からの風がどこに当たってどのように変化したものか。それこそ、考えだしたらキリがありません。
そういった状況が重なったときに最も怖いのは、基本の風を見失ってしまうことです。見失ってしまった時に、また新たに探すのは容易なことではありません。では、基本の風を見失わないようにするためにはどうすれば良いのか。
いま感じている風と、上空を吹いている風が違うことに対して、違和感を覚えることがないように、感じている風がなぜこの方向から吹いてくるのかという疑問に対して、納得のいく答えを見つけていくことが大切です。
基本の風はフォローのはずなのに、アゲインストを感じるといった場合、それを感じる理由があるかどうか。目の前に上り傾斜がある、高い木々が壁の様になっている、池がある、風の通り道のような空間がグリーン周辺にある…そういった理由を探すことで、そのアゲインストが基本の風ではないことを確認でき、風を見失わずにすみます。
基本の風を見失ってしまったときの不安は、プレーにも影響します。自信を持ってクラブを振るためにも、まわる風に翻弄されることなく、基本の風を見失わない努力をするように心がけることをお勧めします。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。
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強風でグリーン上のボールが止まらず、競技が中止になったことも【写真】
兵庫県のよみうりカントリークラブで開催された「関西オープン」。もう10年ほど前になりますが、「よみうりオープン」が開催されていたコースということもあり、懐かしさもあって練習ラウンドの様子をネット放送で見ていました。
その中で気になったのは、セカンド地点へ移動中のプロ同士の会話。コースについての特徴としてまず出てきたのは、「風の難しさ」でした。国内ツアーの中でも、特に高低差のあるコースとして知られるよみうりカントリークラブ。そのコース内を駆け巡る風に、私もずいぶんと悩まされました。
打球に影響がある上に、常に変化し続ける…そんな厄介な風。風の吹いてくる方向や強さは自然によるものなので、どんなに勉強してもたくさんの経験を積んでも、完璧に読み切れるというものではありません。
ゴルフやスキーのジャンプといった競技のテレビ中継では、風の強さと方向を示す表示を見ることができますが、それを見ていればわかるように、同じ場所であっても風の向きや強さが一定であることはほとんどありません。少しズレれば、正反対の風という状況もあります。どんなに強い風であっても、一瞬止むこともあり、方向を変えることもあります。
コースのレイアウトによっても、風はその本来の強さと方向を変えます。それは設計者による罠である場合もあれば、木々の成長によって自然と作り出された罠という場合もあるでしょう。
ホールの周囲を木々が囲んでいるようなコースでは、球の高さによってもその影響は違ってきます。グリーンの奥に高い木々が密集していれば、グリーンの周辺に風がない可能性も。アップダウンの強いコースでは、吹き上がる風と吹き下ろす風、そして跳ね返って来る風に注意しなければなりません。そこが風の通り道になっているのかどうか。どの方向からの風がどこに当たってどのように変化したものか。それこそ、考えだしたらキリがありません。
そういった状況が重なったときに最も怖いのは、基本の風を見失ってしまうことです。見失ってしまった時に、また新たに探すのは容易なことではありません。では、基本の風を見失わないようにするためにはどうすれば良いのか。
いま感じている風と、上空を吹いている風が違うことに対して、違和感を覚えることがないように、感じている風がなぜこの方向から吹いてくるのかという疑問に対して、納得のいく答えを見つけていくことが大切です。
基本の風はフォローのはずなのに、アゲインストを感じるといった場合、それを感じる理由があるかどうか。目の前に上り傾斜がある、高い木々が壁の様になっている、池がある、風の通り道のような空間がグリーン周辺にある…そういった理由を探すことで、そのアゲインストが基本の風ではないことを確認でき、風を見失わずにすみます。
基本の風を見失ってしまったときの不安は、プレーにも影響します。自信を持ってクラブを振るためにも、まわる風に翻弄されることなく、基本の風を見失わない努力をするように心がけることをお勧めします。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。