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    第31回 宮里藍&北田瑠衣が劣勢からW杯優勝を掴んだ「流れ」が変わる瞬間【小田美奈のキャディ目線】

    かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!

    配信日時:2022年6月30日 02時30分

    • ゴルフライフ
    2005年2月に南アフリカで行われた第1回女子ワールドカップでは、19歳の宮里藍と23歳の北田瑠衣がタッグを組んで初代世界一に輝いた 右から3番目が小田美奈さん(撮影:GettyImages)
    2005年2月に南アフリカで行われた第1回女子ワールドカップでは、19歳の宮里藍と23歳の北田瑠衣がタッグを組んで初代世界一に輝いた 右から3番目が小田美奈さん(撮影:GettyImages) (撮影:GettyImages)
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    プロのインタビューで、時折耳にする「流れ」。その日のスコアに大きく影響してくる「流れ」とは、一体何か。そして、良い流れを掴むためにできることとは。宮里藍の専属キャディとして、2005年の「女子ワールドカップ」制覇をサポートした小田美奈さんが「流れ」について語る。
    __________________________

    2016年には松山英樹と石川遼がタッグを組んでワールドカップ出場!【写真】

    2005年、南アフリカで開催された第1回女子ワールドカップ。19歳の宮里藍プロと23歳の北田瑠衣プロが日本代表としてタッグを組んで出場しました。チーム2選手の合計ストロークで争う3日目の最終日。前半ハーフで2位に6打差をつけ、このまま独走態勢と思われましたが、大会前からパターに不安を感じていた北田プロが11番ホールで短いパットを外してから一気にチーム全体が 「悪い流れ」 へと転じます。そして、いよいよ16番ホールで韓国とフィリピンに並ばれてしまいました。

    しかし、17番ホールのパー3。宮里プロがティショットをピンそば80センチにつけて「流れ」を引き戻すと、北田プロも6メートルのバーディパットをねじ込み、ここで2打差をつけそのまま世界の頂点に輝いたのです。

    ・「流れ」とは何か?

    トーナメント中継の選手のコメントや解説の中でも、「流れ」 という言葉をよく耳にします。ゴルフだけに関わらず、多くのスポーツに共通して使われる言葉ですが、ではその 「流れ」 とは一体何なのか。

    ゴルフの調子は良いのに、スコアにつながらない。そんな状況を 「悪い流れ」 と言いますが、雰囲気や空気とも言い換えることのできるそれは、勝ち負けを左右するような何かであるのは間違いなく、ただそれが 「何であるか」 という点については、運とか、人間がそれぞれ内包しているものであるとか、様々な考え方があるようです。

    ・流れが変わる瞬間

    「あのホールのあのショットで流れが変わった」 と言われるように、流れが変わる瞬間というのがあります。ただ、その瞬間に 「あっ!今流れが変わった!」 ということはほぼなく、あそこで変わったと気が付くのはある程度の時間が過ぎてからがほとんどです。

    不思議な力に導かれているかのように、難しいパットが次々に入り始める。打ったショットすべてがピンに絡む。そうした良い流れと言われる状況も、何をやっても上手くいかないような悪い流れも、どちらも突然やって来るもので、それがいつ来るのか、それとも来ないのか、予測できないものだけに、状況を判断するための情報としては有益なものではありません。

    ・流れを変えるためにできること

    私のイメージでは、「流れ」 とは小さな 「波」 の集合体。その波を作り出すものには、様々な要因があります。例えば、プレーヤーのショットの調子であったり、その時の集中状態であったり、ホールとの相性や、風との関わり、距離感、そしてギャラリーの声援や、他プレーヤーとの会話など…。そういった様々なものが要因になって作り出された波が、善かれ悪しかれ流れを作っているというイメージでいます。

    様々な要因が合わさってできた流れだからこそ、流れがどこで変わったかは後で判断できたとしても、なぜ変わったのかは、その場でわかることはなかなかありません。

    流れが悪いと感じても、ただいつも通りに目の前の一打を大切に打っていくしかなく、結局できることは我慢をすることです。我慢が続けば、ストレスが溜まるもの。ますます悪い状況になることもあるので、気分転換をしてみたり、少しゴルフから気持ちを逸らしたり…といったように、集中し過ぎない状況に一度戻してしまうのも良いかもしれません。

    さてここで、前述したワールドカップに戻ります。流れを引き戻したと言われているのは、17番ホールの宮里プロのティショットですが、あの流れを生んだ波はその前のホールにあると私は思っています。

    16番ホール。グリーン奥に設置されたスコアボードです。

    11番から一気にスコアを崩してしまっていた日本チーム。実は、「首位のチームにはもう何打か置いていかれているだろう」 と思っていました。サングラスの向こう側、目線を動かした宮里プロが 「美奈さん、まだ日本が一番上にいるような気がするんですけど…」 と、スコアボードを見ながら呟くように声をかけてきたのです。その後、17番へと向かったときの彼女の集中力の高まりは、今でも思い出すだけで鳥肌が立ちます。「流れが変わる」 と感じた瞬間でした。

    ■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。

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