第34回 全英オープン開幕! リンクスコースの特徴と、ブルース・エドワーズさんとの思い出【小田美奈のキャディ目線】
かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!
配信日時:2022年7月15日 08時00分
世界最古のメジャー「全英オープン」。今年は150回記念大会ということで、ゴルフ発祥の地といわれるセント・アンドリュース オールドコースで開催されている。宮里藍の専属キャディを経て、現在某ゴルフ場でハウスキャディとして働いている小田美奈さんに、宮里聖志プロのキャディとして参戦した2002年の全英オープンを振り返ってもらった。
__________________________
全英会場はスタンドがなければ野原にしか見えない!?【大会写真】
最も歴史のあるメジャー大会、全英オープン。私ももうずいぶんと前になりますが、2002年のミュアフィールドで開催された大会で、宮里聖志プロのキャディをさせていただいたことがありました。キャディとして初の海外、それがしかも全英オープンということで、今思えばかなり浮足立っていたと思います。あまり海外のツアーについても詳しくなかった中、色々ご迷惑もかけただろうと反省している大会でもあります。
その際のコースの印象は、「ゴルフ場」というよりも、広々とした公園の中にある「ゴルフができる場所」。全英オープンの会場として周辺が取り囲まれていなければ、ただうねりのある野原…そんな風にも見えるような場所でした。雲が低く、なんとなくいつも暗い風景の中、コースのすぐそばで犬の散歩をしている人がいたりして、とても日常的な空間の中にゴルフがあるような、そんな印象を受けました。
地面は硬く、バンカーが深いという難しさはあるけれど、距離はそれほどでもなく、晴れていれば半袖で気持ち良くラウンドできる、そんなイメージ…なのですが、雲が立ち込めて風が吹き始めると、その景色は途端に一変します。気温は一気に下がり、セーターだけでは足りないほどの寒さになります。レインウェアは防寒着としても必需品でした。
風を遮るようなものが何もないので、風はほぼ一定方向。バンカーが深いのは、風で砂が飛ばされてしまうからなのでしょうか。グリーン上でも、風の計算が必要になります。
ただ、そういった風の強さは日本でも少なからず経験していたので、それほど難しいものではないはずなのですが、向こうでは風に伴って気温が一気に下がります。手がかじかむほどの冷たい強風が吹き荒れるといったイメージでしょうか。雨が伴うことも少なくなく、そんな天気の変化への対応が、とても難しかった印象です。午後から天候が一変したときなど、選手たちのスコアのあまりの変動に驚かされたものでした。
結果は、残念ながら予選落ち。記念に持って帰ってきた国内のものよりかなり大き目なビブスは、予選で一緒だったトム・ワトソンさんのキャディだったブルース・エドワーズさんに、「回収係にチップ渡したら持って帰れるよ」と教えてもらったものです。女子のキャディがほとんどいなかったせいか、今は亡き名キャディのブルースさんに色々と話しかけていただけたのは、とても良い思い出です。
貴重な経験をさせてくれたプロに感謝しつつ、もっと経験のあるキャディがついていれば…とも思う、私にとってほろ苦い思い出でもあります。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。
__________________________
全英会場はスタンドがなければ野原にしか見えない!?【大会写真】
最も歴史のあるメジャー大会、全英オープン。私ももうずいぶんと前になりますが、2002年のミュアフィールドで開催された大会で、宮里聖志プロのキャディをさせていただいたことがありました。キャディとして初の海外、それがしかも全英オープンということで、今思えばかなり浮足立っていたと思います。あまり海外のツアーについても詳しくなかった中、色々ご迷惑もかけただろうと反省している大会でもあります。
その際のコースの印象は、「ゴルフ場」というよりも、広々とした公園の中にある「ゴルフができる場所」。全英オープンの会場として周辺が取り囲まれていなければ、ただうねりのある野原…そんな風にも見えるような場所でした。雲が低く、なんとなくいつも暗い風景の中、コースのすぐそばで犬の散歩をしている人がいたりして、とても日常的な空間の中にゴルフがあるような、そんな印象を受けました。
地面は硬く、バンカーが深いという難しさはあるけれど、距離はそれほどでもなく、晴れていれば半袖で気持ち良くラウンドできる、そんなイメージ…なのですが、雲が立ち込めて風が吹き始めると、その景色は途端に一変します。気温は一気に下がり、セーターだけでは足りないほどの寒さになります。レインウェアは防寒着としても必需品でした。
風を遮るようなものが何もないので、風はほぼ一定方向。バンカーが深いのは、風で砂が飛ばされてしまうからなのでしょうか。グリーン上でも、風の計算が必要になります。
ただ、そういった風の強さは日本でも少なからず経験していたので、それほど難しいものではないはずなのですが、向こうでは風に伴って気温が一気に下がります。手がかじかむほどの冷たい強風が吹き荒れるといったイメージでしょうか。雨が伴うことも少なくなく、そんな天気の変化への対応が、とても難しかった印象です。午後から天候が一変したときなど、選手たちのスコアのあまりの変動に驚かされたものでした。
結果は、残念ながら予選落ち。記念に持って帰ってきた国内のものよりかなり大き目なビブスは、予選で一緒だったトム・ワトソンさんのキャディだったブルース・エドワーズさんに、「回収係にチップ渡したら持って帰れるよ」と教えてもらったものです。女子のキャディがほとんどいなかったせいか、今は亡き名キャディのブルースさんに色々と話しかけていただけたのは、とても良い思い出です。
貴重な経験をさせてくれたプロに感謝しつつ、もっと経験のあるキャディがついていれば…とも思う、私にとってほろ苦い思い出でもあります。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。