6月29日、30日に開催された「PING APPAREL」の2023年春夏展示会、ファッションショーは、ゴルフウエアのネクストステップを予感させる刺激的なイベントとなった。
ここ数年、右肩上がりのゴルフ人気と足並みを揃えるように、ゴルフウエアの世界も活況を呈している。そのため新規参入、リニューアル、コラボなどトピックスには事欠かない。そんな中でも、とりわけ元気の良さが際立つのが「PING APPAREL」だろう。すでにギアの世界では確固たる地位を築き上げ、ゴルファーからの厚い支持を獲得しているPING。もちろんこうしたギアユーザーが支える部分も大きいのだが、「PING APPAREL」が見据えるのは、もっともっと幅広いゴルファーたちだ。先日、開催された「PING APPAREL」の2023春夏の展示会を訪れてみて、そんな思いが伝わってきた。
「PING APPAREL」が2023年春夏に掲げるテーマは “PLAY YOUR BEST!”。実はギアと共通するコンセプトとなっている。そのまま受け取れば、ベストを尽くしてゴルフと向き合うとなるのだろうか。シリアスにプレーする、競技として戦うゴルファーをサポートするウエアということになる。高い機能性とモダンなアスリート感覚が持ち味となっている “パフォーマンス ライン” のアイテムはこれにあたる。来年に向けて、さらにトップスの軽量化、機能的でスマートな重ね着、冷感素材の充実などが図られている。モノトーンをベースに、カーキやネオンイエローを効果的に加えたスタイリングは、モダンに進化するアスリートスタイルといえる。
だが「PING APPAREL」の考える “PLAY YOUR BEST!” とは、これだけではない。PLAYという言葉が意味するのは、シリアスに競技するだけでなく、肩ひじ張らずに楽しむことも含まれる。つまりゴルフを通して、思いきり遊ぶといったニュアンスも込められているのだ。そうしたスピリッツが色濃く反映されている “ネイティブ ライン” こそ、「PING APPAREL」が見せてくれた新たなポテンシャルだ。展示会の中で行われた、40コーディネートが登場するファッションショー(下の画像)を見ると、その目指すところが見えてくる。
驚かされるのは、「PING APPAREL」のウエアを着たモデルたちが、クラブではなく、サーフボードやアメフトのヘッドギア、サッカーボールなどを持って、ランウェイを歩く姿。実はこのショーに登場したモデルの多くは、プロサーファー、プロダンサー、アメフトやバレーボールの選手、さらにサッカーの元日本代表選手といった面々だ。これはショーの単なるサプライズではなく、“PLAY YOUR BEST!” を表現するために計算された演出なのだ。
“ネイティブ ライン” が目指す、ゴルフを通して、思いきり遊ぶというスタンスは、ゴルフへの入口を広げることからはじまる。とはいえ そのために “なんでもアリ” になってしまったら、長い間培われてきた、ゴルフのあるべきカルチャーまで失われてしまうことを「PING APPAREL」は知っている。
そんな「PING APPAREL」のゴルフウエアを、異なるスポーツを “本業” とするアスリートたちが着たらどうなる? もちろんコースに立てば、まさにゴルファーらしいルックスになるのだが、同時に、どこかに彼らの“本業” とするスポーツのイメージもオーバーラップしてくる。ゴルファー感の強いアイテムであるカラーパンツを履いて、ショーに登場したプロダンサーがステップを踏む姿に、まったく違和感を覚えないのはそのためだ。
“ネイティブ ライン” とはゴルフへの入口を広げ、それによって自分らしいゴルフの楽しみを見つけ出し、さらにはゴルフを超えて新しいfunを見つけ出すためのウエア。アイテムには、PINGが本社を構えるアリゾナをイメージしたサボテンなどをモチーフにしたデザインや、ブランドのマスコットキャラクターである “Mr.PING” をフィーチャーしたポップなアイテムなどが用意され、PINGらしさを随所にアピールしている。またマリンを強く意識した水陸両用素材を使ったハーフパンツは、コースでも、ビーチでも “PLAY YOUR BEST!” を実感させてくれそうだ。
また身長、腕の長さから、最適なシャフト長、ライ角を導き出す、PINGのクラブフィッティングには欠かせない、“What’s your color code ?” と称されるコンセプトにリンクした10色展開を採用したトップスなど、カラーバリエーションが魅力のウエアも引き続き展開されている。
会場で「PING APPAREL」の新たな世界感に触れたあとで聞いた、マーケティング責任者である梅宮研二さんの話が印象に残る。
「これまで通りのやり方で、まずは機能素材に襟が付いた服を作り、それがコースでもタウンでも着られるというモノ作りでは、今のゴルフのムーブメントには追いつけません。もしもサーファーであれば、サーファーならではの感性にも寄り添い、サーファーらしいカッコよさも見つけられるゴルフウエアを提案したいのです」
今回の展示会、ファッションショーを見て感じたのは、ずっと引き継がれてきたゴルフの風景が消えることはないが、一方で、その景色は少しずつ、確実にリニューアルされていくのだろう、という予感だ。店頭でこれらのウエアに出会える日が待ち遠しい。