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    トーナメント不毛の地を変える!30歳で引退したゴルファーの思い〜 金谷嶺孝

    ゴルフ界に携わるビジネスマンに、ゴルファーとしての生き方やゴルフへの接し方を聞く。考え方は十人十色。だからゴルフ人生は面白い…。

    配信日時:2017年8月20日 20時00分

    • ゴルフライフ

    子供たちの心にゴルフ場の印象を植えつけるイベント

    深堀圭一郎は大学時代の後輩の活動に共感し、さまざまな助言やアシストを行ってきた

    深堀圭一郎は大学時代の後輩の活動に共感し、さまざまな助言やアシストを行ってきた

    深堀の父方の実家は盛岡市にあり、幼少期から岩手のゴルフ場に親しみを持っていた。だからこそ30歳でツアーを引退した後輩が立ち上げた大会については、全面的な協力を惜しまなかった。さまざまな助言を行い、自身の1年間の転戦スケジュールに岩手県オープンを欠かさず組み込だ。金谷が話してくれたあるエピソードが、二人の絆を物語る。  

    「2010年に深堀さんが岩手県オープンで初優勝したときですね。深堀さんが優勝後、『おまえ、頑張っているな』とウイニングボールをくれたのです。僕は本人に涙を見せないように泣いたぐらい、うれしかった」  

    そのときの出来事を深堀にも聞いてみた。

    「金谷はゴルフをよく知っていて、僕らも含め各世代とつながっている。彼の気持ちがみなに伝わっているからこそ、温かい大会になっていると思いますよ。映像や雑誌で情報を得ることができても、実際の迫力を体感すると全然違う。あいつが地元に戻り、岩手のゴルフ界のために必死に動いている姿を見て、本当に頭が下がる思いです。だって、僕らとは違う意味でプロゴルファーとしての使命を果たしているわけですから。  

    岩手の子供たちへどうにかゴルフの魅力を伝えたい、地元ゴルファーの活躍の場を作りたい、という気持ちが彼は非常に強い。全国でこういう流れができていったらいいですし、きっと彼を応援してくれる人はこれから増えてくると思う」(深堀)  

    後輩の意気を感じていた深堀は、同様の理念を持つ企業と彼を引き合わせることでバックアップする。

    「ゼビオグループさんは東北地方にゆかりがあり、ジュニア育成、地域活性化において尽力されている企業。金谷と同じ方向を見ているのであれば、協力していくのが一番いい。スポーツを大切にしている大きな企業がバックアップしてくれることで、岩手県オープンの発信力は高まりますから」(深堀)  

    そして、第15回となった2016年大会は「新生・岩手県オープン」の誕生だった。ゼビオグループが参画し、『ソトアソビフェスタ』が実現。『ゴルフ場の大きな芝生=遊び場』をコンセプトとし、子供たちにゴルフ場での体験をしてもらうイベントは、好意的に受け止められて初年度から盛況。2年目となる今年は、さらなるイベントの充実を図った。
    ゴルフ場は大きな庭がコンセプトの「ソトアソビフェスタ」
    スナッグゴルフ体験スペース
    子供たちに上手くいった喜びを体験させることが重要
    スイカ割りでは母子が歓喜
    ミズノ体力測定プログラム
    広い遊び場を前にはしゃぐ子供たち
    課外授業の一環として地元小学校の子供たちが来場
    フットゴルフ高橋陽一カップを開催
    バーディを奪い、絶叫。まるでゴールパフォーマンス
    ここまで広大なスペースでボールを蹴る経験はなかなかできない
    フットゴルフからスコアを記入するというルールを学んだ
    高橋陽一先生、ナイスショット!
    予選落ちした久保谷健一が即席レッスン会を開催
    ゼビオスポーツによる大試打会
    最新クラブにアマチュアゴルファーも興味深々
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    ゴルフ場は大きな庭がコンセプトの「ソトアソビフェスタ」
    具体的に列挙してみるが、確かに興味深いものばかり。例えば、ミズノとの取り組みによる体力測定イベントには、課外授業の一環として近隣の小学校から30〜40名の小学生が訪れた。『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏を招いたフットゴルフ大会では、サッカー少年少女がゴルフ場で思いっきりサッカーボールを蹴って遊ぶ。また、ギャラリープラザではスイカ割りが行われ、親子の歓声が鳴り響いた。地元の人気シンガーのライブパフォーマンスなど、夏休みの思い出作りになる催しが満載だ。

    ゼビオグループの代表としてイベント運営に携わった米田一平氏は、地域イベントへの企業参加の重要性を語ってくれた。  

    「ゴルフトーナメントに参画するうえでいろいろ考えましたが、単純にゴルフだけで集客するのは難しい。子供たちやゴルフに触れたことのない人、家族連れをゴルフ場に呼んだイベントがあってもいいのでは? という思いがありました。岩手県オープンは長い歴史があり、有名選手が多く出場する東北ゴルフのアイコンです。集客だけを考えれば、関東や都心部のほうがいい。ですが地元の人が楽しみ、中長期的にスポーツを根づかせ、収支も安定的に作るには理想のフィールドです。  

    ゴルフ場という空間は、多くの人にとってはめったに体験できない場所です。キャンプや音楽フェスといったアクティビティ要素を加えれば、なじみがある場所に変えることも可能かもしればい。われわれが協賛する場合、"大会に看板を出すだけ"、"冠が欲しい"といった"普通の"取り組みはしたくない。特に、東北は弊社の地元ですから、次の世代への還元を考えるのも役目です」(米田氏)  

    幼少期に一度だけ訪れた公園でも、不思議と記憶の片隅に残っているものだ。大人になり、公園の名前を見聞きすれば、懐かしさとともに思い出がよみがえってくる。今回、フットゴルフを体験した子供たちは、傾斜のある大きな庭でボールを蹴り、自分のスコアをシートに記入するというルールを学んだ。それが原体験となり、「昔、あのゴルフ場でボールを蹴ったなぁ。ゴルフ場って広かったな、歩いていて気持ちよかった」と思い返してくれれば、ゴルフを始めるキッカケになるかもしれない。

    ジュニアゴルファーへの考え方を金谷にも聞いてみたところ、

    「プロを目指す子どものサポートをすることだけが、ジュニア育成の本質ではない」

    という答えが返ってきた。実際、金谷は10年前、ゴルフのスポーツ少年団を立ち上げている。ゴルフの場合、スポーツ少年団という枠組みは耳慣れない。○○塾といった"プロ養成機関"がスタンダードのような風潮がある。競技を続けるには金銭的に大きな負担がかかり、親が結果を求める=結果を出させる先生が偉い、という構図はある。それに対し、金谷は一石を投じた。

    サッカーや野球のように地元の子供たちがスポーツに親しみ、競技を終えたあとにそのスポーツを愛するといった根づき方はできないだろうか……。スポーツ少年団に所属した子供たちに対し、プロの道に進む、進まないを問わず、ゴルフにかかわりのある生活を送ってほしいと金谷は願っている。
    金谷が立ち上げたスポーツ団出身の子たちもキャディや運営サポートなどで協力

    金谷が立ち上げたスポーツ団出身の子たちもキャディや運営サポートなどで協力

     ジュニアゴルファーへの考え方。金谷は「プロを目指すサポートをすることだけがジュニア育成の本質ではない」という。10年前にゴルフのスポーツ少年団を立ち上げた。ゴルフの場合、スポーツ少年団という枠組みは耳慣れない。○○塾といった"プロ養成機関"が偉いような風潮がある。競技を続けるには金銭的に大きな負担がかかり、親が結果を求める=結果を出させる先生が偉い、という構図ができあがっているからだ。

     ゆえにサッカーや野球のように地元の子供たちがスポーツに親しみ、競技を終えたあとにそのスポーツを愛するといった根付き方は難しい。だが、ゴルフ文化を根付かせる理念を持つ金谷が立ち上げたスポーツ少年団に所属した子供たちは、プロの道に進む、進まないを問わず、ゴルフにかかわりのある生活を送るはずだ。
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