コースコンディションがいいとか、いまひとつとか、こうしたゴルファーの言葉にもっとも敏感なのはやはりグリーンキーパー。私たちがプレーしている間、コースでは姿を見ることがほとんどないグリーンキーパーさんのお仕事とは？

お話を聞いたのは千代田カントリークラブのグリーンキーパー、松本竜太さん（45歳）。高校を卒業後、同級生に誘われてコース管理の仕事をスタート。27歳のときに茨城県のゴルフ場で、コース管理のトップであるグリーンキーパー職に就きます。現在PGMが保有、運営するゴルフ場の中で、日本を代表する威厳と品位を備えたハイグレードなゴルフ場として厳選されたGRAND PGMのひとつである、千代田カントリークラブで、２ヶ月前からグリーンキーパーとなりました。19人のスタッフの先頭に立ち、27Hをメンテナンスしています。

5:00 出社　（季節によってはもっと早いことも）27Hを分担して散水、グリーンの刈り込み、掃除。最初の組がティグラウンドへ立つ前には終了。

「限られた人数で全ホールを均等に、質の高いコースコンディションを維持するために、ベテランと若手それぞれの能力を引き出せるよう、チーム構成やコース配置、作業の狙いをきっちりと伝えることに気を配ります。散水や刈り込みも重要ですが、たとえばキャンディやガムの包装紙、風で飛んできたゴミや、落ち葉などが目立てば、せっかくの散水や刈り込みで整備されたコースも台なしです。掃除こそ最後の重要な作業ですね」

10:00 昼礼

10:30 プレーゾーン以外の作業

「日中はコースには出ません。プレーしているお客様の目につかないところをメンテナンスしています。ゲートまわりやクラブハウスまでの道路とか、コースの外周などです。砂ほこりや機械の音で、お客様が惑わされないように気をつかいます」

12:00 昼食

13:00 プレーゾーン以外の作業

「クラブハウス周囲の池や滝などの水まわりなども私たちコース管理の担当です。常に整備清掃を行い、もしトラブルがあったら速やかに対処できるように、日ごろから備えています」

14:00 最終組がスタート後に27Hすべてに散水、刈り込み、清掃

「キャディから情報をもらうことも欠かせません。あそこでハチが出たとか、あそこのラフが深くてボールを捜しにくいとか。午後の作業で対応していきます」

17:00 退社

いうまでもなくコース管理で頭を悩ますのは、雨、雪、夏の暑さなど。どうにも逆らうことができない天候だけに、常に先読みをして、どんな状況に陥っても対応できるだけの、完璧なシミュレーションがされています。ものごとが起こる前にすでに対応策ができあがっていなくてはなりません。グリーンキーパーというと芝と向き合う繊細な職人ワザも求められますが、限られた時間、人数で広大な27Hを常にベストな状態に仕上げるための知恵も欠かせません。

まずは逆らえない敵、天候と向き合うために、朝昼晩と常に天気予報のチェックは忘れません。長年の経験から天気図を見ながら、自分なりにコースの天候の傾向を予想することもあるといいます。またコースのレイアウトもきっちりと頭に入っています。たとえば日あたりのいい場所、日陰になる場所、そうした情報も天気予報にプラスされていきます。

コース管理の仕事は膨大なため、月単位、日単位でのスケジュール、さらに晴れた日の作業、雨の日の作業などと、あらかじめ決めておきます。さらにこれまでに蓄積されてきたメンテナンスのデータも貴重な目安。そして松本さんの最新の判断が加わって、コース管理が行われます。

これからの季節はベント芝の大敵である暑さにそなえて、神経をつかう散水をどのタイミングで、どのくらい行うのか。雨が降ると芝に負担がかかる大きな機械を、いつコースに入れるか、さらには誰が、どこのホールの管理を受けもつと効率的なのか。松本さんのマネージメント力がコースコンディションを左右します。

たとえば朝は好天でも、正午くらいから天気が崩れるという予想ならば、その日は12時くらいからスループレーでまわる組が出てもいいように、作業の段取りを変えて、朝から態勢を整えておきます。こうした先読みが常に求められています。

プレーする側はスコアをすぐに天候のせいにしがち。けれどグリーンキーパーは天候を言い訳にすることなく、私たちのゴルフの1日を陰から支えてくれています。


千代田カントリークラブ／杉本英世設計による東・中・西コースの27ホール。コースの高低差が3mというフラットな林間コース。四季が織り成す自然に彩られたコースは美しく、戦略性にあふれる。●茨城県かすみがうら市上佐谷877-6 TEL.0299-59-3030