クルマを駐車場にとめて、フロントでチェックイン。そして打席でストイックに練習。ゴルファーとして、よくお世話になっている施設なのに、ゴルフ練習場のスタッフとコミュニケーションをとる機会はあまりありません。一心不乱に練習している私たちの裏で行われているゴルフ練習場のお仕事とは？

お話をお聞きしたのは東宝調布スポーツパークの支配人、遠山聡さん（48歳）。東宝調布スポーツパークはゴルフ練習場に加えて、ショートコース、さらにテニスコートも併設する複合スポーツ施設。テニスのコーチとして入社。テニス部門の支配人に。2010年12月、現在のようにゴルフ、テニスを合わせたクラブハウスをもつ複合施設となり、4年ほど前からゴルフを含めた総合支配人となりました。約50名を率いる支配人といえども、すべての実務を分担しながらこなしています。

9:00 出社 （早番のときは６時出社）

「まずはデスクワークです。前日の売上確認、データの入力、メールの確認とか。忙しいのはやはり週末、あとレディースデーにしている月曜でしょうか」

10:00 フロントにて接客

「フロントには２〜３名の女性を配置していますが、電話の応対などでスタッフの手がふさがっていたら、率先してサポートに入ります」

11:00 機械の不具合を伝えるブザーが鳴る。さっそく機械室へ移動して、ボールの詰まっている場所を見つけてリセット

「ブザーが鳴るのは１日、１回あるかないか。欠けたボールが転がらなくなり詰まったり、ボールを回収するために周囲に巡らした水がなくなったりするためです。トラブルはあらかじめ想定して解決法を徹底しているので、誰でも担当できるようになっています。実は今頃のように湿気の多い時期は、ボールが詰まりやすくなるので注意していますね」

12:00 昼食

13:00 練習場の業者さんと打ち合わせ

「ほかにスタッフや外部の方と、１日１回は打ち合わせがあります。スタッフからのイベントやキャンペーンの提案をジャッジするのも仕事。60打席しかないので一般のお客さまに影響がなく、さらに練習に来たことに付加価値が生まれるようにしたいと考えています。水の販売会や専門家による香水の調香といったユニークなイベントもありました」

14:00 駐車場の整理のために巡回

「週末やレディースデーの月曜は来場者がとても多く、専門の警備員さんに立ってもらっていますが、それ以外の日に混雑したときは、誘導や、待機の案内をします。クルマで来られるお客さまがほとんどですから、トラブルにならないように気を配ります。混み具合によっては2〜3時間、駐車場にはりつくこともあります」

17:00 小学生のテニススクールのコーチを務める

「現在、テニスのコーチが足りなくてピンチヒッターです」

18:00 練習場の打席を巡回

「通常、練習場には、空いた打席のゴミを片づけたり、打席で不具合が生じたときに対応する打席係というスタッフがいますが、ここでは、打席係を配置していません。ですからスタッフと交代しながら打席の巡回をしています。また、当施設以外のボールを持ち込んで練習したりとか、不正利用を回避するためにも最低1時間に1回は巡回を心がけています」

19:00 退社（遅番のときは22時過ぎになることも）

「スタッフだけで、練習場、クラブハウスなどすべての片づけはまかないきれません。練習場のボール回収などは、大学のゴルフ部などに手伝ってもらう代わりに、練習場所として打席を開放しています」

ゴルフ場の支配人が天候を気にすることは以前もお伝えしましたが、実は練習場の支配人も天気にはとても敏感です。もちろん天候や気温によって訪れるお客さまの数も変わりますから、支配人に限らずスタッフは1日何回も天気予報をチェックします。また今年の梅雨は雨が多いか、夏は暑いのかといった長期予報まで見通して、キャンペーンやイベントを準備する必要もあるからです。

ですが、もっとも気をつかわねばならないのが強風と雪。風速20メートルを超えたら練習場のネットを下げなくてはなりません。また降雪によってネットに雪がつくと、重みでネットが切れてしまい営業できなくなります。また周囲にも危険があるので、この場合もネットを急いで下げなくてはなりません。

東宝調布スポーツパークの練習場の場合、周囲の高いネットだけでなく、200ヤードより先は地面もネットになっているため、より気を配る必要があります。雪が軽いのか、重いのか、雪に含まれる水分量まで気にかけているそうです。

台風が関東直撃とか、積雪の天気予報がでたときは、スタッフの一部は夜通し待機することになりますし、支配人も帰宅後に再び練習場にとんぼ返りしなくてはなりません。しかも夜半の積雪、翌日は天候が回復することになると、お客さまは営業していると思って来場しますから、朝までに営業できる準備を整えなくてはなりません。

もしもネットが切れてしまったら、専門業者から取り寄せることになります。ところが雪の翌日は業者もパンクしますから、まずはネットが切れないようにいかに工夫するかに苦心します。東宝調布スポーツパークはショートコースを併設しています。そのため散水用の大型ポンプがあるので、それをフル活用して乗り切ります。

太くて長いホースを何本もつないで、ネットや地面に放水して雪を溶かしていきます。その様子はまるで消防士さながらです。ネットの雪を溶かし、人工芝にも放水してボールが回収できるようにします。もちろん駐車場の雪かきもすませなくてはなりません。ゴルフやテニスのコーチまで手伝いに参戦することもあります。こうして翌朝の営業に備えます。このような限られたスタッフによる、夜通しの突貫作業が降雪時にはあります。

ラウンドする機会が限られるアマチュアゴルファーにとって練習場はなくてはならい存在。私たちがいつでも練習に励める環境を作るために、陰ながら支えてくれるお仕事があります。

東宝調布スポーツパーク／230ヤードのレンジは１F30打席、２F30打席。各打席全自動ティアップ機を備える。さらに2Hでドライバーが使用できる9Hのショートコース、天然芝アプローチ、バンカー練習場も併設。混みあう週末の待ち時間は長くても40分目安。打席料が1時間300円。ボール料金は平日13円〜、土日祝が16円〜。打ち放題料金などあり。営業時間／平日6:30（12〜3月7:00）〜22:00、土日祝6:00〜22:00 ●東京都調布市多摩川2-29-1 TEL.042-444-0007