「カストロールレディース」、契約プロへの思いを聞く 〜BPカストロール株式会社 代表取締役社長 小石孝之
レギュラーツアーへの出場資格を持たない選手や新人選手らに、試合経験の場をつくることなどを目的に1991年に設立された「ステップ・アップ・ツアー」。現在21試合が開催されるなど、年々そのツアーの価値は高まりを見せている。
配信日時:2018年8月6日 10時00分
レギュラーツアーへの出場資格を持たない選手や新人選手らに、試合経験の場をつくることなどを目的に1991年に設立された「ステップ・アップ・ツアー」。現在21試合が開催されるなど、年々そのツアーの価値は高まりを見せている。
しかし、ほんの数年前の2010年、その試合数はわずか4試合。その年に主催4社のうちの1社としてツアー参入を果たし、以降開催を続けているのがBPカストロール株式会社だ。同社が抱く「カストロールレディース」への思いとは? 今年の大会が行われた7月25、26日に試合会場を訪れ、同社の代表取締役社長・小石孝之氏と、コンシューマー事業部 関東第1支店支店長・檜垣峰男氏に話を聞いた。(取材・文/間宮輝憲)
しかし、ほんの数年前の2010年、その試合数はわずか4試合。その年に主催4社のうちの1社としてツアー参入を果たし、以降開催を続けているのがBPカストロール株式会社だ。同社が抱く「カストロールレディース」への思いとは? 今年の大会が行われた7月25、26日に試合会場を訪れ、同社の代表取締役社長・小石孝之氏と、コンシューマー事業部 関東第1支店支店長・檜垣峰男氏に話を聞いた。(取材・文/間宮輝憲)
一社単独開催を貫く理由
今年9回目を迎えた「カストロールレディース」。会場には、本拠を英国に置く世界トップのプレミアム潤滑油メーカー「Castrol(カストロール)」の看板やのぼりであふれている。圧巻とすら感じる統一感。実はこの光景に、同社の「カストロールレディース」へのこだわりの一つが隠されている。
小石氏「この大会は協賛企業を入れず、一社単独で開催してきました。ステップの試合でも、他は地元の企業や新聞社などが協賛に名を連ね、会場の看板にはその企業名やロゴなどをたくさん見かけると思います。その分、商品も豪華だったりするので、華やかさでいうとカストロールレディースは劣るかもしれない。でも、それはそれでうちのやり方だと思っています」
ツアーは冠企業のほかに、協賛という形で別の企業が参画するケースが多い。この場合、会場には様々な企業名やロゴが目に飛び込んでくるものだ。しかし、カストロールレディースは一社単独開催。だからこそ、その会場は、見事なまでの統一感で包まれていたのだ。ではなぜ単独開催を貫くのか?
小石氏「トーナメントを成功させる、選手達を育てるという思いに加えて、企業としては、この大会をいかにビジネスにつなげるかも考えなくてはいけない。その時に一番大きいのが『プロアマ』なんです。そこにお客さんに来てもらい、喜んでもらう。これが大前提にあります。一社単独の場合、前夜祭やプロアマに参加する人は、うちのお客様しかいない。色々と自由もききますし、それは大きいですね」
小石氏「この大会は協賛企業を入れず、一社単独で開催してきました。ステップの試合でも、他は地元の企業や新聞社などが協賛に名を連ね、会場の看板にはその企業名やロゴなどをたくさん見かけると思います。その分、商品も豪華だったりするので、華やかさでいうとカストロールレディースは劣るかもしれない。でも、それはそれでうちのやり方だと思っています」
ツアーは冠企業のほかに、協賛という形で別の企業が参画するケースが多い。この場合、会場には様々な企業名やロゴが目に飛び込んでくるものだ。しかし、カストロールレディースは一社単独開催。だからこそ、その会場は、見事なまでの統一感で包まれていたのだ。ではなぜ単独開催を貫くのか?
小石氏「トーナメントを成功させる、選手達を育てるという思いに加えて、企業としては、この大会をいかにビジネスにつなげるかも考えなくてはいけない。その時に一番大きいのが『プロアマ』なんです。そこにお客さんに来てもらい、喜んでもらう。これが大前提にあります。一社単独の場合、前夜祭やプロアマに参加する人は、うちのお客様しかいない。色々と自由もききますし、それは大きいですね」
ツアーに関わる企業にとって、トーナメントにおけるプロアマは、その後のビジネスを潤滑にすすめる重要な“コンテンツ”となる。しっかりと大会をビジネスに反映させるため、この単独開催というのはカギとなっている。そして、試合中もそんな “自由さ”を感じさせる場面を見かける。例えば、1番ティからのスタートコール。ティオフ前の選手の名前を呼びあげる役目は、社長の小石氏自らが務める。「最初遊びでやっていたら、いつの間にか僕がやるようになっていました」と言って笑った小石氏。だが、この行動にはこんな思いがあった。
小石氏「ステップの大会自体が少なかった時は、今よりも試合に出る機会がないという選手が多かった。そのなかで、レギュラーツアーのような雰囲気を味わってもらおうと思って始めたのがきっかけでした。緊張をほぐすという意味もありますし、真剣に勝負に行く気持ちを作ってもらえればと思いながらやっています」
自社の顧客や、選手への細かな気配り。それは、自分たちで作り上げる大会だからこそ実現するものなのかもしれない。
小石氏「ステップの大会自体が少なかった時は、今よりも試合に出る機会がないという選手が多かった。そのなかで、レギュラーツアーのような雰囲気を味わってもらおうと思って始めたのがきっかけでした。緊張をほぐすという意味もありますし、真剣に勝負に行く気持ちを作ってもらえればと思いながらやっています」
自社の顧客や、選手への細かな気配り。それは、自分たちで作り上げる大会だからこそ実現するものなのかもしれない。
契約プロとの関係
BPカストロールは、大会運営だけでなく現在16名もの契約選手を抱え、選手のサポートという面でもゴルフ界に寄与している。そして、ここにもしっかりとした哲学がある。
小石氏「うちは外資ですし、ゴルフに割り当てられる資金は決して多くはない。金額も『シード選手はいくら』、『QT上位はいくら』と一律。それを受け入れてもらえて初めて契約に至ります」
しかし、その背景にはこんな考えもある。
小石氏「自分の力で稼ぐのがプロのアスリートだと思っています。それがいいか、悪いかは別として、大量の契約金をもらって、試合で活躍できないのは違うのでは?と思ってしまいます。うちは所属契約も結びません。それもあって、他から所属契約のオファーがあった時には『それで離れるのは構わないよ』という思いは常に持っています」
今回会場を歩いて感じたこと。それは契約元であるBPカストロールと契約プロとの関係の深さだ。小石氏がスタートコールをする1番ティ。契約プロは社長の姿を見つけると一様に笑みを浮かべ、その元へと寄ってくる。選手と社長がとても楽しそうに会話をする光景を目にしたのは1度や2度ではない。また前夜祭では、選手一人ひとりのエピソードを楽しそうに披露する小石氏の姿も。その関係は、まさに“ファミリー”という言葉がしっくりとくる。
この関係はどのように作られているのか?そう聞くと檜垣氏から間髪入れず、「とにかく試合会場に足を運んでいますよ。社長自ら現場に足を運ぶ機会は、他の企業より多いと思いますよ」という答えが返ってきた。
小石氏「出張が重なって同じ地区に居る時は、足を運ぶこともあります。そしてその時僕は1人のギャラリー。一緒について回って大きな声で『入れー!』とか言っていると、選手は『あっ、来てる』と思うみたい(笑)」
続けて檜垣氏も「テレビを見てる時に声が聞こると『あ、行っているな』というのが社員にも分かります」と言って笑った。一人のファンとしてゴルフに接するからこそ得られる選手からの信頼。それを、このエピソードから感じ取った。
小石氏「うちは外資ですし、ゴルフに割り当てられる資金は決して多くはない。金額も『シード選手はいくら』、『QT上位はいくら』と一律。それを受け入れてもらえて初めて契約に至ります」
しかし、その背景にはこんな考えもある。
小石氏「自分の力で稼ぐのがプロのアスリートだと思っています。それがいいか、悪いかは別として、大量の契約金をもらって、試合で活躍できないのは違うのでは?と思ってしまいます。うちは所属契約も結びません。それもあって、他から所属契約のオファーがあった時には『それで離れるのは構わないよ』という思いは常に持っています」
今回会場を歩いて感じたこと。それは契約元であるBPカストロールと契約プロとの関係の深さだ。小石氏がスタートコールをする1番ティ。契約プロは社長の姿を見つけると一様に笑みを浮かべ、その元へと寄ってくる。選手と社長がとても楽しそうに会話をする光景を目にしたのは1度や2度ではない。また前夜祭では、選手一人ひとりのエピソードを楽しそうに披露する小石氏の姿も。その関係は、まさに“ファミリー”という言葉がしっくりとくる。
この関係はどのように作られているのか?そう聞くと檜垣氏から間髪入れず、「とにかく試合会場に足を運んでいますよ。社長自ら現場に足を運ぶ機会は、他の企業より多いと思いますよ」という答えが返ってきた。
小石氏「出張が重なって同じ地区に居る時は、足を運ぶこともあります。そしてその時僕は1人のギャラリー。一緒について回って大きな声で『入れー!』とか言っていると、選手は『あっ、来てる』と思うみたい(笑)」
続けて檜垣氏も「テレビを見てる時に声が聞こると『あ、行っているな』というのが社員にも分かります」と言って笑った。一人のファンとしてゴルフに接するからこそ得られる選手からの信頼。それを、このエピソードから感じ取った。
契約プロに求めるもの
そんなBPカストロールは、契約プロにどんな資質を求めているのだろうか。
小石氏「選手によって求めるものは違います。シード選手であれば、たくさん勝って広告塔のようになってくれたら、それに越したことはない。ただ若手ならば、『天狗にならない子』。人間性は大事です。実力と人気をはきちがえることなく、同じ仕事をしている先輩にかわいがってもらえるような選手であって欲しいですね。力があれば別ですけど、人気は未来永劫(みらいえいごう)続くものではありません」
多くの若手選手とも契約する同社。やはり、飛躍する姿を見るのは楽しいことと小石氏は語る。例えば、昨年契約を結び、同年のステップで年間3勝を挙げた野澤真央。QTでも20位となり、今季はレギュラーツアーを主戦場にする今が伸び盛りの選手の一人だ。
小石氏「選手によって求めるものは違います。シード選手であれば、たくさん勝って広告塔のようになってくれたら、それに越したことはない。ただ若手ならば、『天狗にならない子』。人間性は大事です。実力と人気をはきちがえることなく、同じ仕事をしている先輩にかわいがってもらえるような選手であって欲しいですね。力があれば別ですけど、人気は未来永劫(みらいえいごう)続くものではありません」
多くの若手選手とも契約する同社。やはり、飛躍する姿を見るのは楽しいことと小石氏は語る。例えば、昨年契約を結び、同年のステップで年間3勝を挙げた野澤真央。QTでも20位となり、今季はレギュラーツアーを主戦場にする今が伸び盛りの選手の一人だ。
小石氏「真央の場合はプロテストに受かった翌年(2016年)に、カストロールレディースに参戦。その時にプレーを見て『この子は絶対に強くなる』と思い、去年契約を結びました。そこから、きっちりと段階を踏んで、今季も前半こそ苦しみましたがリランキングも通過し、順調かなと。もっと大きくなってくれればいいなと思いますね」
そう柔和な表情で話した小石氏。“親心”。そんな気持ちを感じられずにはいられない。そして小石氏は続けて、こんな持論も口にした。
小石氏「プロテストに受かった以上、選手の技量はそんなに変わらないと僕は思っています。もちろん、もともとのポテンシャルが高い選手もいる。でも、厳しいプロテストを通っているわけですから、多くの選手は基本的に変わらないはずなんです。ではその後、何が違ってくるのか。それは、『マネジメント力』だと僕は思っています」
“攻める場面”と“守る場面”の見極め。一打でも少なくホールアウトするために、どうリスクを回避していくか…。そういったことを『考えるゴルフ』を、小石氏は若手選手達に求めている。
そう柔和な表情で話した小石氏。“親心”。そんな気持ちを感じられずにはいられない。そして小石氏は続けて、こんな持論も口にした。
小石氏「プロテストに受かった以上、選手の技量はそんなに変わらないと僕は思っています。もちろん、もともとのポテンシャルが高い選手もいる。でも、厳しいプロテストを通っているわけですから、多くの選手は基本的に変わらないはずなんです。ではその後、何が違ってくるのか。それは、『マネジメント力』だと僕は思っています」
“攻める場面”と“守る場面”の見極め。一打でも少なくホールアウトするために、どうリスクを回避していくか…。そういったことを『考えるゴルフ』を、小石氏は若手選手達に求めている。
BPカストロールとゴルフ
冒頭にも書いたよう、BPカストロールはエンジンオイルなどを扱う企業だ。モーターファンにはおなじみの名前で、企業名を聞くとクルマやバイクを連想する人は多いだろう。その企業がゴルフに参画というと、少し意外に思うかもしれない。しかし檜垣氏は、その親和性について、こう話す。
檜垣氏「確かにカストロールと聞くと、モーターレースをイメージする人は多いと思います。でも、私たちが商品を販売する量販店などを訪れるユーザーには、ゴルフ好きな方がすごく多い。ゴルフを通じて、そういったユーザーと繋がることができます。ゴルフ場はクルマで行きますし、全く畑が違うかというと、そんなことはありません」
来年「カストロールレディース」は節目の10年目を迎える。だからといって、何かが変わるわけではない。参戦した時から思い描いていたビジョンをブレずに貫く。それがBPカストロールの考えだ。
今大会で最も重要ともいえるテーマがある。それが“プロのための大会”というもの。アマチュアの出場者は「0」。そのコンセプトも今後変わることはない。
小石氏「LPGAさんは、2020年の東京五輪を意識して、若手育成にも力を入れています。もちろん、プロの試合が力試しの場になることは理解できます。でも、その人数分だけ賞金を稼げない、試合に出たくても出られないプロ達が出てきます。プロだけが参加する試合はあってもいい。このカストロールレディースは、これからもそういう大会として開催します」
来年「カストロールレディース」は節目の10年目を迎える。だからといって、何かが変わるわけではない。参戦した時から思い描いていたビジョンをブレずに貫く。それがBPカストロールの考えだ。
今大会で最も重要ともいえるテーマがある。それが“プロのための大会”というもの。アマチュアの出場者は「0」。そのコンセプトも今後変わることはない。
小石氏「LPGAさんは、2020年の東京五輪を意識して、若手育成にも力を入れています。もちろん、プロの試合が力試しの場になることは理解できます。でも、その人数分だけ賞金を稼げない、試合に出たくても出られないプロ達が出てきます。プロだけが参加する試合はあってもいい。このカストロールレディースは、これからもそういう大会として開催します」
ここから飛躍を目指すプロ同士が、真剣にしのぎを削る場。そんな舞台が、また来年も用意される。そして1番ティに響く小石氏の選手コールが、その訪れを我々に知らせる。