日本のゴルフ場でカート乗り入れ文化が進まない理由 設備投資にかかる金額、なんと3億円以上!
欧米のコースではカートの乗り入れが一般的なのに対して、日本ではあまり普及していません。
配信日時:2024年5月8日 22時32分
欧米のコースではカートの乗り入れが一般的なのに対して、日本ではあまり普及していません。温暖化による熱中症対策や、プレーペースの向上、さらにプレイヤーの高齢化が進む現代において、カートをフェアウェイに乗り入れることは必然のようにも思えますが、なぜこれが実現されないのでしょうか?
カート乗り入れの最大の課題はメンテナンスとのトレードオフです。カートを乗り入れることで、タイヤの踏圧はもちろん、発進・停止・転回などの際に発生する摩擦によって芝は大きなダメージを受けます。地面が傷むことことでの芝枯れはもちろん、ぬかるんだ状態でカートが走れば轍もできてしまい、美観だけではなくプレーそのものにも影響が出てしまいます。
年間降雨日数が約100日以上と、世界的に見ても雨の多い日本では、そうしたメンテナンスの難しさが乗り入れを実現できない大きな課題となっています。
また、乗り入れを可能にするためには、多額の投資が必要になります。日本のゴルフ場で使われている4人乗りカートの乾燥重量は約500kg程度と言われていますが、そこに体重70kgの人間が4名と、15kgのゴルフバッグを4本乗せた場合の総重量は840kg以上となり、これは軽自動車とほぼ同じ重さです。一方で2人乗りカートはカート重量も積載する人やバッグも半分になりますから、乗り入れには2人乗りカートが適していると言えますが、1台150万円程度と言われる2人乗りカートを仮に40組分の80台揃えるだけでも、1.2億円の投資が必要ということになります。
これに加えて、2人乗りカートが前後できるためのカート道の拡幅や、カートの踏圧によって悪化する排水対策工事、フェアウェイの品質を均一に保つための散水システムの更新など全てを実施した場合は、さらに1〜2億円の追加投資が必要となり、前述したカート投資と合わせると3億円以上の資金が必要という計算になります。
総額を見ると確かに高額ですが、仮に1人のプレーヤーが3,000円のカートフィーを支払えば10万ラウンドで回収する計算になりますから、一般的な集客のコースであれば3年程度で投資回収期間を終えることになり、カートの耐用年数や、顧客の利便性や付加価値、高齢化するユーザーの利用寿命が伸びる可能性を考えると合理的な投資とも思えます。
乗り入れが一般的な東南アジアや欧米とは、芝種の違いや、地形、プレー文化など他にも考慮する要件はありますが、以上の観点から日本でもこの先カートの乗り入れは進んでいくと予想されます。
レポート/大矢隆司(ゴルフ活動家)
1980年生まれ。中学卒業後15才で単身オーストラリアへゴルフ留学。ジェイソン・ディら多くのトッププロを輩出するHills Golf Academyで3年間を過ごす。帰国後大学に進学し在学中にゴルフコーチに転向。ゴルフコーチングと並行して会社経営を学ぶためにビジネススクールに通いMBA(経営学修士課程)を修了。国内外でのゴルフビジネスの起業を経て、現在はゴルフビジネスのアドバイザーやPMO、オーナー代理人としてゴルフ場やゴルフ関連企業の顧問を務める
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