コース内のスプリンクラーは数百個、配管は総距離20km超、その他システムを含めると……水回り総額は3億円以上!
バンカー、グリーン、ティグラウンド、クラブハウス……。ゴルフ場はいったいいくらかかっているのだろうか?
配信日時:2024年2月7日 23時00分
バンカー、グリーン、ティグラウンド、クラブハウス……。ゴルフ場はいったいいくらかかっているのだろうか? 名匠、井上誠一のゴルフ場「春日井カントリークラブ」のコース改造が始まった。知られざるゴルフ場の実態をゴルフ活動家の大矢隆司さんがレポートする。
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ゴルフ場の象徴といえば何といっても青々と広がる絨毯のような芝生。50万平米以上ともいわれる広大な芝生を維持する上で最も重要なのは植物の光合成に欠かせない「水」です。ゴルフ場では芝生への水やりにスプリンクラーが使われていますが、実はスプリンクラーを含む灌水設備(かんすいせつび)と言われるこれらの設備が、ゴルフ場で最も高価な設備になります。
多くのゴルファーがフェアウェイに埋まっているスプリンクラーに表示された残り距離を参考にしたことがあるのではないでしょうか? しかし、実際にスプリンクラーが稼働するのはプレイヤーがフィールドにいない時間、すなわち夜間や早朝ですから、スプリンクラーで実際に水を撒いている様子を目にすることはほぼありません。
ゴルフ場では特にティーイングエリアやグリーンを中心にスプリンクラーが設置されており、その数は数百個、特にメンテナンスを自慢とする海外の名門コースでは1500個以上のスプリンクラーヘッドが埋められています(世界屈指の名門コース ペブルビーチゴルフリンクスは8番ホールPar4だけでも180個のスプリンクラーが設置されています)。
さらに、そのスプリンクラーに水を供給するため、コースの地中には総距離で20kmを超える配管が血管のように張り巡らされており、漏水を防ぐために「硬質ポリ塩化ビニル」や「高密度ポリエチレン」などの素材が使われています。
近年では、コース内に設置された気象観測システムと連動して散水プログラムを設計するシステムや、スマホやタブレットがGPSと連動して遠隔で操作する散水システムも開発され、こうしたポンプやスプリンクラーや管などの資材・制御システム・施工費用などの総額は3億円以上とも言われています。
世界でも珍しい一年を通じて安定的に雨が降る日本では、実は灌水設備は最近まであまり重要視されてきませんでしたが、近年は暑さに弱いベントグリーンが主流になったことや、異常気象による旱魃や降雨の不安定化などを背景に、灌水設備を見直すコースが増えてきています。
さらに美しいターフコンディションは、ゴルファーの満足度を高めるだけではなく、整備に費やす労力や肥料や薬品などの資源の削減にもつながりますから、まさに人や環境に貢献するサスティナブルな設備ともいえます。
灌水設備の耐用年数は約30年と言われており、こうした設備の更新も改修工事に含まれていますから、改修工事とは見た目を変えるだけではなく、文字通り中身も生まれ変わるのです。
レポート/大矢隆司(ゴルフ活動家)
1980年生まれ。中学卒業後15才で単身オーストラリアへゴルフ留学。ジェイソン・ディら多くのトッププロを輩出するHills Golf Academyで3年間を過ごす。帰国後大学に進学し在学中にゴルフコーチに転向。ゴルフコーチングと並行して会社経営を学ぶためにビジネススクールに通いMBA(経営学修士課程)を修了。国内外でのゴルフビジネスの起業を経て、現在はゴルフビジネスのアドバイザーやPMO、オーナー代理人としてゴルフ場やゴルフ関連企業の顧問を務める
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