つくり笑いでうまくなる! バウンスバックは笑顔と深い関係がある【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
ゴルフが楽しくて仕方がない。そんな人でもミスが続けば表情は曇ってしまう。しかし「落ち込んだときこそ笑顔になると落ち着きます」と、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。ラウンド中できるだけ笑顔でいることのメリットは、想像以上に大きいのだ。
配信日時:2023年5月14日 22時30分
プレー中に緊張したり自信を失ったりすると、大抵のゴルファーは心身ともに固くなってしまいます。表情をこわばらせたままふさぎ込んでいたら自律神経のバランスは崩れ、プレーリズムも悪くなる一方です。
ラウンド中に落ち込んだときやピンチを迎えたときこそ、あえて笑顔を意識してはいかがでしょうか。笑顔によって自律神経が安定し、プレーの流れを取り戻すきっかけになることがよくあるからです。
■バウンスバック率とスマイルの関係
例えば、グリーン周りでザックリしたときや2~3メートルのバーディチャンスを外したときを想像してみてください。ミスへのいらだちから声を出したり、顔が険しくなったりします。それとともに交感神経が上がり、血管は収縮してスイングに変調を来し始めるでしょう。
でも、ここで早くに笑顔を取り戻せば自律神経もプレーリズムも早く立て直すことができるのです。2019年「AIG全英女子オープン」を制して“スマイルシンデレラ”と呼ばれた渋野日向子選手のバウンスバック率が高いのも笑顔と大いに関係がある、と私は考えています。
とはいえ、一般の方は笑顔をつくることに対して何となく抵抗や照れくささを感じるかもしれません。そういう人はつくり笑いでもいいので、次のことを試してみてください。
■心からの笑顔にも、つくり物にも同効果
この場合のつくり笑いは他者に向けてするわけではないので、そう難しく考えず実行してみましょう。どうするかというと、口元に力を入れて口角をキュッと上げるだけです。口角を上げるイメージがつかみにくかったら「イーッ」と声を出すつもりで口を左右に広げてもいいでしょう。
口角を上げると顔の筋肉がほぐれるのを感じます。何回か繰り返すと顔から首、肩にかけて無駄な力が抜けていきます。笑顔には心身を自然とリラックスさせる効果があるのです。心から笑うのはもちろんですが、表情筋の緊張が和らぐだけでも同様の効果が得られることが分かっています。
このように、少々のミスをしても笑顔になれば心が落ち着いて副交感神経が活発になります。血流や手先の感覚も改善されますので、プレーリズムを立て直せるのです。
余談ですが、近年「よく笑う人は健康になる」といわれます。笑うことで脳が活性化されて認知症の予防につながったり、免疫力が高まってがん予防につながったりすることが明らかになってきたからです。
笑顔でいることのメリットは計り知れません。取りあえず初めはつくり笑いから。自律神経のコントロールができるようになってスコアもよくなれば、心からの笑顔に変わっていくでしょう。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。