ゴルフのQTとは? ツアー出場資格はプロテスト合格だけでは得られない
女子ゴルフ・男子ゴルフともに、シード権のない選手が来季のレギュラーツアーに出場するためには、「QT」で上位にランクインしなければなりません。ただし、非公開で行われるこの試合について、よくわからない人も多いのではないでしょうか。この記事では、知れば選手たちをより応援したくなるQTと、シーズン中に出場優先権が変動する“リランキング制度”についても触れています。ツアー観戦の前に、ぜひ目を通してみてください。
配信日時:2024年5月8日 09時58分
1.ゴルフのQTとは翌年のツアー出場資格を争う試合のこと
QTは、クォリファイングトーナメント(Qualifying Tournament)の略称で、「予選トーナメント」という意味です。具体的には、男女ともにシード権を持たない選手が来季のレギュラーツアーと下部ツアーの出場資格ランキングを競う試合のことで、プロテスト同様に原則非公開で行われます。
QTとリランキング制度
QTのランキング上位者は、翌シーズンの第1回リランキングまでレギュラーツアーに参加できます。リランキングとは言葉通りランキングを見直すという意味で、シード権を持たない選手が対象です。シーズン中に2回、それまでの獲得賞金(女子はメルセデスランキング)に応じて出場優先順位が見直されます。つまり、QTで上位を取れば翌シーズンは安泰とはならず、男女ともにコンスタントな活躍が求められます。
リランキングは、以下のようなスケジュールで年2回行われます。(2024年4月現在)
第1回リランキング | 第2回リランキング | |
---|---|---|
国内女子 | 6月の「ニチレイレディス」後 | 9月の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」後 |
国内男子 | 7月の「長嶋茂雄 INVITATIONALセガサミーカップ」後 | 10月の「トップ杯東海クラシック」後 |
2.国内女子ゴルフのQT
国内女子ゴルフのQTは、レギュラーツアー(JLPGAツアー)と下部ツアー(JLPGAステップ・アップ・ツアー)への出場優先権をかけ、2021年からはファーストステージとファイナルステージの2ステージ制で行われるようになりました。毎年シーズン終了後の11月下旬から2週間の日程で開催され、全144ホールで競われます。ちなみに、エントリーフィはファーストステージが40,000円、ファイナルステージが50,000円(いずれも税込み)です。
国内女子ゴルフツアーは3段階で構成
国内女子のゴルフツアーは以下のように3段階で構成されています。
1.JLPGAツアー
2.JLPGAステップ・アップ・ツアー
3.クォリファイングトーナメント(通称:QT)
※国内女子QTは、ファースト、ファイナルの2つのステージで行われる
JLPGAツアーの各トーナメントの出場枠は約108名で、その出場枠はシード選手、マンデートーナメント(主催者推薦選手選考会)突破選手、主催者推薦選手の順で埋まっていきます。その後に残ったおよそ40枠が、QTのランキング上位者に与えられる出場枠です。
出場できるかどうかはそのツアーで優先的に出場できる選手の数などによりますが、目安としては、QTの上位約40位以内なら1回目のリランキングまでの試合出場はほぼ確実、50位前後なら欠場選手数次第で出場の可能性があり、60位では出場は厳しい状況といえます。また、QT上位約100名にはその下部ツアーであるJLPGAステップ・アップ・ツアーへの参加権が与えられます。
QTで上位に入ることが、来季ツアーに参加できるか否かの最後のチャンスといえます。
JLPGA(国内女子ゴルフツアー)のシード権
レギュラーツアーであるJLPGAツアーに優先的に参加できるシード権には、主に以下のような種類があります。
1.永久シード:通算30勝
樋口久子、涂阿玉、不動裕理、大迫たつ子、岡本綾子、森口祐子の6人(2024年4月現在)
2.前年度メルセデスランキング50位以内
3.レギュラーツアー優勝の各選手
ほかに細かな規定があり、それに当てはまらない選手がQTで来季の出場優先権を競います。
メルセデスランキングについて、詳しくは「メルセデス・ランキングとは? 導入の背景や歴代女王を紹介」をご覧ください。
国内女子ゴルフのQT参加資格
国内女子ゴルフツアーのQTに参加できるのは、ティーチングプロフェッショナル会員を含むJLPGA会員と、その年度のJLPGA最終プロテスト合格者です。
まず有資格者が全国各地で開催されるファーストステージで競い、ついでファーストを免除されている選手が加わってファイナルステージが開催されます。ファーストステージを免除されるのは、今季レギュラーツアーでシード権を獲得できなかった選手、ステップ・アップ・ツアー優勝選手、プロテストトップ通過選手などです。ファイナルステージでは約100名程度の選手が一堂に会し、来季前半戦(第1回リランキングまで)のレギュラーツアー出場権をかけて競います。
なお、ファーストステージの合格者数は、ファイナルステージから参加できる選手の数によって変動します。例えば2023年のファーストステージ参加者は棄権の5名を除く286名で、通過したのは67名、合格率は25%でした。
3.国内男子ゴルフのQT
国内男子のQTは1999年からJGTO(日本ゴルフツアー機構)が実施し、ファーストQT・セカンドQT・サードQT・ファイナルQTの4ステージで全288ホールで競われます。
シード権のない選手が参加し、ファーストQT上位者とセカンドQT以降のプロ選手全員にランキングが付与され、JGTOが主催・主管するレギュラーツアーおよび下部ツアー(ABEMAツアー)への選考基準として用いられます。
エントリーフィとして初参加時に220,000円(税込)が必要となり、女子のQTよりも高額です。
国内男子ゴルフツアーは3段階で構成
国内男子のゴルフツアーも以下のように3段階で構成されています。
1.JGTO主催のレギュラーツアー
2.ABEMATVツアー(旧チャレンジツアー)
3.クォリファイングトーナメント(通称:QT)
※国内男子QTは、ファースト、セカンド、サード、ファイナルの4つのステージで行われる
レギュラーツアーのフルシーズンの出場有資格者は約100名です。QTランキングの上位20名に翌年のツアートーナメントの出場資格、上位約120名に翌年のABEMAツアーの出場資格が与えられます。国内女子ゴルフ同様、QTは翌年のツアー参加への最後のチャンスといえるでしょう。
国内男子ゴルフツアーのシード権
ツアーに参加できるシード権として、主に以下のような種類があります。
1.永久シード:通算25勝
青木功、尾崎将司、中嶋常幸、杉原輝雄(2011年没)、倉本昌弘、尾崎直道、片山晋呉の7人(2024年4月現在)
2.前年度賞金ランキング65位以内
3.レギュラーツアー優勝の各選手
国内男子ゴルフにもほかに細かな規定があり、その条件に当てはまらない選手がQTで来季の出場優先権を競います。
国内男子ゴルフのQT参加資格
国内男子ゴルフのファーストQTには、基本的にはだれでも参加が可能です。ただし公式ハンディキャップが3.0以内など相当の腕前が必要なため、ハードルが低いとはいえません。その一方で、高校ゴルフ部や大学ゴルフ部在籍者も責任者の署名捺印で参加できるなど、アマチュアにも門戸が開かれている点が女子ゴルフのQTとの違いです。
セカンドQTに進める人数は、出場人数比の割合により各会場から均等に決定されます。例えば2023年のファーストQT通過者数は、8カ所で33~42名ずつでした。これだけを見ると多いようですが、最多通過だったロックヒルゴルフクラブ(茨城)でのエントリー数は525名で、42名でも通過率8%の狭き門です。
さらに、ファイナルQTまでには下部のQTに参加しなかった猛者が続々と集い、ますますシビアな戦いが展開されます。
各ステージごとのQT参加資格について、詳しくはJGTOのウェブサイトを参照してください。
4.まとめ
ゴルファーにとって、QTは来季のツアー出場の優先順位をかけたシビアなトーナメントです。またQTで上位になってもそれで安心とはならず、年2回のリランキングまでにコンスタントに成果を出さなければなりません。選手にとっては厳しい条件ですが、それだけに一試合一試合に重みがあるともいえるでしょう。ツアーを観戦する際には、そんな裏側も想像して応援してみてください。