思わぬ訴訟リスクを防ぐ! ゴルファー全員が絶対に覚えるべき「ファー!」の正しい使い方
ゴルフ場で耳にする「ファー!」というかけ声は、周囲に危険を知らせるための大切なゴルフマナー。しかし、じつはこの「ファー!」は、適切に使いこなさないと、訴訟リスクにも繋がりかねない"取り扱い要注意のマナー"だと知っていましたか? この記事では、プレーヤー同士の無用なトラブルを避けるため、ゴルフマナーの「ファー!」について詳しく解説していきます。
配信日時:2024年9月24日 10時05分
- 1.「ファー!」ってなに?
- 「ファー!」の語源
- 2.「ファー!」を叫ばないとどうなるか?
- 打球事故につながる可能性がある
- 「ファー」がないと裁判で不利になることも
- 3.いつどんなときに言うのが適切か?
- 打ち込むとわかっているとき
- 打ち込む可能性のあるとき
- 4.ゴルフも上手いと思われるスマートな「ファー!」
- 情けない声はナシ!
- 打った方向に手を挙げて知らせる
- 振り向かれたら脱帽を
- コミュニケーションもスマートに
- 5.「ファー!」が聞こえたら取るべき行動
- 6.そもそもの打球事故を防ぐために取りたい行動【5選】
- 【1】打つ前のホールの安全確認
- 【2】打つ人の前に出ない
- 【3】隣のホールに飛び出さない
- 【4】打つときは声をかけ合おう
- 【5】前の組を煽らない
- 7.まとめ
ゴルフ場で耳にする「ファー!」というかけ声は、周囲に危険を知らせるための大切なゴルフマナー。しかし、じつはこの「ファー!」は、適切に使いこなさないと、訴訟リスクにも繋がりかねない"取り扱い要注意のマナー"だと知っていましたか? この記事では、プレーヤー同士の無用なトラブルを避けるため、ゴルフマナーの「ファー!」について詳しく解説していきます。
1.「ファー!」ってなに?
「ファー!」はゴルフで使われる警告のかけ声で、飛んできたボールが他のプレーヤーに当たる可能性があるときに叫ばれます。
ゴルフは非常に広いフィールドで行われますが、ミスショットでボールが予期せぬ方向に飛んでしまうことがあります。その際、他のゴルファーや周囲の人に危険を知らせるために「ファー!」を叫び、周囲の安全を確保することがゴルファーの義務であり、ゴルフをプレーする上での基本マナーなのです。
キャディが帯同するラウンドでも、キャディ任せにせずショットを打った本人が責任を持って「ファー!」を叫びましょう。
「ファー!」の語源
「ファー!」の語源には諸説ありますが、最も有力なのは、スコットランドで生まれたゴルフの伝統に由来するものです。英語の「フォア(fore)」、つまり「前へ」という意味の言葉から来ているとされています。
もともとは「フォアキャディ」と呼ばれる、プレーヤーの前方でボールの落下地点を確認するキャディに向けて、ボールが飛んていったときに「フォア!」と叫んで警告していました。
次第にこの言葉が短縮され、現在の「フォア!」として広く使われるようになったといいます。また、日本では発音のしやすさから「フォア」が、「ファー」と変化して定着したようです。
2.「ファー!」を叫ばないとどうなるか?
「ファー!」を叫ぶことはゴルフ場での基本マナーですが、恥ずかしさや気まずさから声を出すのをためらっていると、思わぬトラブルや事故を招くことになります。ここでは、「ファー!」を叫ばなかった場合に起こりうるリスクや、その重大な影響について詳しく見ていきましょう。
打球事故につながる可能性がある
飛んでくるボールは時速200キロ以上になることがあり、頭や体に当たれば大きな事故を引き起こしかねません。ボールが他のゴルファーに当たり大ケガにつながった事例も少なくありません。
実際過去には、ミスショットが隣のホールにいたプレーヤーの頭部に直撃し脳挫傷を負わせたケースや、打球事故で死亡に至ったケースも報告されています。
「ファー」がないと裁判で不利になることも
ゴルファーには、安全配慮の義務があるとされているため、裁判では加害者として「適切に危険を知らせる義務」を果たしていなければ、賠償額が大きくなる可能性があるといいます。
例えば、過去の裁判では、打球が隣のホールのプレーヤーに当たり、肋骨を折るケガを負わせたとして、ゴルファーの注意義務違反を認め、約200万円の賠償を命じました(東京地裁 平成18年判決)。ここでは、ゴルファーは自分の技量を踏まえて周囲の危険を予測し、警戒する義務があると判断されました。
また、別の事例では、約40メートル先にいた同伴者の頭部にボールが直撃し後遺症が残った事故で、被害者に一部過失があるとしながらも、加害者側に約2300万円の賠償が認められました。もし「ファー!」が適切に叫ばれていれば、賠償額が減額されていた可能性もあるそうです。
このように、「ファー!」を叫ぶことは、単なるマナーにとどまらず、法的責任を軽減する観点においても、非常に重要な行動なのです。
3.いつどんなときに言うのが適切か?
ゴルファーにとって、「ファー!」を叫ぶタイミングや、言う・言わないの線引きは、難しいところかもしれません。そこで、以下のような基準を参考に「ファー」を叫ぶことができれば、より安全にプレーすることができるでしょう。
打ち込むとわかっているとき
隣のホールや前の組、コース作業員がいる場所に、ボールが飛んでいくと明らかにわかっているときは、確実に「ファー!」と叫びましょう。また、コースに隣接する民家や、グリーン脇でまだ発車していないカートの方へボールが飛んでいった場合も、同様に警告する必要があります。
打ち込む可能性のあるとき
隣接ホールとの間の林や、打ち込むか、打ち込まないか微妙な距離にボールが飛んだ場合も、少しでも危険を感じたら「ファー!」を叫ぶべきです。たとえ打球が当たるかどうかわからなくても、万が一の事態を防ぐために、声を出すことでリスクを減らすことができます。
名門ゴルフ場に聞いた「ファー」の基準
名門ゴルフ場では、隣のホールに打ち込む場合だけでなく、林にボールが行った場合も「ファー!」を叫ぶことが推奨されています。
また、「ファー」を言う必要はありませんが、前の組がグリーン上にいるときに、ガードバンカーにボールが入った場合や、前の組が後ろを振り返るような距離にボールが届いた場合は「打ち込み」と見なされることが多いようです。プレーヤー同士の無用なトラブルを避けるために、こうした厳しい基準を設けているといいます。
4.ゴルフも上手いと思われるスマートな「ファー!」
上級者ゴルファーは、危険な場面で「ファー!」を叫ぶのは当然のこととして、安全だけでなくマナーや気遣いにも注意を払っています。ここでは、本当はゴルフが上手い?と錯覚させる、上級者のような振る舞いを身につけるための4つのポイントを紹介します。
情けない声はナシ!
打った方向に手を挙げて知らせる
振り向かれたら脱帽を
コミュニケーションもスマートに
情けない声はナシ!
「ファー!」を叫ぶ際は、遠くまでしっかり聞こえるように、お腹の底から力強く声を出しましょう。さらに、手を口の横に添える即席の「手メガホン」を使うと、広大なコースでも声が響き渡ります。中途半端な弱々しい声では危険が伝わらないばかりか、頼りない印象を与え、ゴルフの腕前まで疑われてしまうかもしれません。
打った方向に手を挙げて知らせる
ボールが飛んだ方向に手を挙げ、他のゴルファーに危険な方向を視覚的に知らせられるとかなりスマートです。ほとんどのゴルファーは「ファー!」の声が聞こえた方向に反応するので、手で方向を示すと、より素早く危険を察知できるかもしれません。また、自分の方向にボールが来ないとわかれば、無駄に焦ることも避けられます。
振り向かれたら脱帽を
打ち込んでしまった場合、相手がこちらを振り向いたときに、帽子を脱いで、軽く謝罪の意を示すことで誠意が伝わります。「すみません」と一言あるだけで、残りのラウンドがスムーズに進み、トラブルを避けることができます。
コミュニケーションもスマートに
打ち込んでしまった組にカートが近づくタイミングや、お昼休憩中に「さっきはすみません」や「大丈夫でしたか」と声をかけることで、お互いの気分がスッキリすることもあります。こうした気遣いはプレーを円滑にするだけでなく、時には新しい友好関係を築くきっかけになることがあります。「ファー!」をきっかけに、コンペに呼び合う仲になった人もいるようです。
5.「ファー!」が聞こえたら取るべき行動
逆に被害者の側としても、ゴルフ場で「ファー!」と聞こえたら、すぐに危険回避の行動を起こすことが、被害を最小限に抑えるためのカギとなります。
「ファー!」が聞こえたら、すぐに腕で頭を守り、近くに木やカートがあればその陰に隠れましょう。打球事故が重症に至るのは、ほとんどが頭部へのダメージによるものです。ボールがどこへ飛んでくるかわからない場合でも、プレーを一時中断し身を守ることが最優先です。
打球事故が起きた場合の手順
万が一、打球事故が発生した場合は、まずケガ人の状態を確認し、迅速にカートの無線でマスター室に連絡を入れます。マスター室への連絡方法がわからないときは、携帯電話でゴルフ場に直接電話をかけるか、近くのスタッフに助けを求めましょう。また、後続の組に事故が起きたことを知らせ、トラブルが拡大しないように注意を促すことも重要です。
ケガが大事に至らなかった場合や、競技などでプレーを続行しなければならない状況は、ゴルフ規則に基づき冷静に対処しましょう。動いているボールが偶然に他のプレーヤーやキャディ、観客、動物に当たった場合、ゴルフ規則11.1に従い、どのプレーヤーにも罰は課せられません。また、ボールは止まった位置から、無罰でプレーを続行するのが原則です。
6.そもそもの打球事故を防ぐために取りたい行動【5選】
ミスショットは誰にでも起こり得ますが、打球事故を防ぐためには、事前の確認と周囲への配慮が欠かせません。安全を確保するために次の5つの行動をしっかり心がけることで、事故を未然に防げる確率が高まります。
【1】打つ前のホールの安全確認
【2】打つ人の前に出ない
【3】隣のホールに飛び出さない
【4】打つときは声をかけ合おう
【5】前の組を煽らない
【1】打つ前のホールの安全確認
ショットを打つ前に、前の組が安全な位置に移動したか、コース作業員や林の中にボールを探している人がいないかを必ず確認しましょう。自分の飛距離や技量を過信して「そこまで飛ばないだろう」と考えるのは禁物です。特に、想定外のナイスショットやフライヤーで予想以上にボールが飛ぶこともあります。前方への打ち込みによる事故の多くがこうした事前の確認不足が原因です。
【2】打つ人の前に出ない
ショットを打つ人の正面よりも前に出ることは、ゴルフのマナー違反であり、非常に危険です。自分のボールを探すことに夢中になり、つい前に出てしまうゴルファーが多いので、気を引き締めたいところです。また、円滑なプレー進行のため、先に前方の林へボールを探しに入る際は、他のプレーヤーがショットを打つときに一時的に木やカートの陰に隠れることを忘れないでください。
【3】隣のホールに飛び出さない
隣のホールにボールがないか見に行く場合は、そのホールをプレーしているゴルファーの位置を確認し、声をかけてからホールに入るようにしましょう。例えば、「失礼します」や「すみません」、打ち終わったら「ありがとうございました」と一声かけられるとスマートです。自分のボールらしき物を見つけたとしても、急に飛び出さないように落ち着いて対応しましょう。
【4】打つときは声をかけ合おう
ガードバンカーからグリーンへボールを出すときや、隣のホールからボールを戻すときなど、人がいる方向へボールを打つ必要がある場合は、必ず「打ちまーす」と声をかけて仲間に知らせましょう。こうした一声を習慣づけられると、いつもと違うメンバーとゴルフする際も安全にプレーすることができます。
【5】前の組を煽らない
前の組と距離を詰めすぎると、事故やトラブルの元になります。前の組が遅いと感じても、無理に距離を縮めたり打ち込むことは絶対に避けましょう。もしスロープレーや遅延が気になる場合は、カートの無線や携帯でマスター室に連絡をすれば、マーシャル(巡回係)が飛んできて対応してくれます。イライラせずに冷静に対処することが大切です。
7.まとめ
ミスショットは誰にでも起こることですが、その後の行動こそが大切です。ショットを打つ前には必ず周囲の安全を確認し、危険な場面では迷わず「ファー!」を叫びましょう。
一部のゴルファーは、自分のミスを認めるのが恥ずかしいと感じたり、上司や同伴者に気をつかったりと、「ファー!」と大きな声で叫ぶことに抵抗を感じることがあるようです。しかし、ファーは「ボールが行くかもしれませんよ〜!」という重要な警告であるため、恥ずかしさより優先すべきは、もちろん安全。勇気を持って大声を出すことこそが大切だと肝に銘じましょう。