ゴルフ場利用税はなぜ払う?どう決まる?仕訳の処理も解説
ゴルフ場を利用するたびにかかるゴルフ場利用税。「何気なくレシートを見たら書いてあったけれど、これが何の税金かわからない」という方もいるのではないでしょうか。あるいは、企業で財務を担当されている場合は「経費清算のために処理したいのに、どうやって仕訳すればよいかわからない」といったことでお悩みの方もいるかもしれません。そこで本記事では、ゴルフ場利用税の仕組みや課税される理由、さらに仕訳の仕方について解説します。
配信日時:2024年4月3日 09時05分
1.ゴルフ場利用税とは?
ゴルフ場利用税とは、ゴルフ場のコースでプレーする利用者に対して、ゴルフ場のある都道府県が課している「地方税」のことです。「1日あたりの定額」でかかります。
税金を納める仕組みとしては、ゴルフ場の運営者が利用者から税を徴収し、各都道府県に納入するという形が取られています。税収の3割が都道府県の収入となり、7割が市区町村に交付されているようです。ちなみに、打ちっぱなしなどのゴルフ練習場の利用には、ゴルフ場利用税はかかりません。
2.ゴルフ場利用税がかかるのはなぜ?
そもそも、ゴルフ場を利用すると税金がかかるのはなぜなのでしょうか? 総務省によれば、ゴルフ場利用税は下記の理由から課されているようです。
・ゴルフ場が、開発許可、道路整備、防災、廃棄物処理などの地方公共団体の行政サービスと密接な関連を有していること
・ゴルフ場の利用料金は、他のスポーツ施設の利用料金と比較して一般に高額であり、その利用者の支出行為には、十分な担税力が認められること
出典:ゴルフ場利用税|総務省
シンプルに表現すれば、ゴルフ場の開発や運営には行政サービスの側面があること、そしてゴルフが贅沢なレジャースポーツと認識されていることが、ゴルフ場利用税がかかる理由と言えそうです。
3.ゴルフ場利用税を廃止する議論も
ゴルフ場利用税はゴルフのプレー代にかかる消費税とは別にかかる税金であることから、「二重課税に当たるのでは?」と問題視されており、これまで撤廃の議論が行われてきました。
ゴルフ場運営者やプレーヤー視点では撤廃されるに越したことはありませんが、一方で、ゴルフ場利用税全体の税収額は年間約500億円と言われており、前述したように、その3割が都道府県の収入、7割が市区町村に交付されています。撤廃の議論は継続されているようですが、自治体の貴重な財源であることから、現在も廃止される予定はありません。
4.ゴルフ場利用税額が決まる仕組み
ゴルフ場利用税額は「ゴルフ場の区分(等級)」と「ゴルフ場のある都道府県」の2つの要素で決まります。
ゴルフ場の区分(等級)
ゴルフ場は、ホール数や利用料金などを基準とした「等級」や、ゴルフ場の利用料金による「区分」が定められており、それらの区分に応じて税額が設定されていています。
例えば、東京都では以下のように、等級とそれに対応する税額が定められています。
区分(等級) | 1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 | 8級 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税額 | 1,200円 | 1,100円 | 1,000円 | 900円 | 800円 | 600円 | 500円 | 400円 |
ゴルフ場のある都道府県
上述した「ゴルフ場の区分(等級)」と「税額」を設定するのは、ゴルフ場が所在する都道府県です。そのため、都道府県によって区分の仕方や税額が異なります。
例えば、青森県では等級が明示されておらず、利用料金に応じてゴルフ場が11段階に(3,500円未満〜15,000円以上まで500円刻みで)区分されており、それぞれに税額が(400円〜1,200円まで50円刻みで)設定されています。
またこのほか、千葉県では1〜12級まで等級が設定され、それぞれの税額が(350円〜1,200まで50円刻みで)定められています。
ゴルフ場利用税を知りたい場合は、利用するゴルフ場が所在する都道府県のホームページなどを閲覧するか、直接ゴルフ場に問い合わせるなどして確認するとよいでしょう。
5.年齢などの条件によってゴルフ場利用税がかからないケースも
先述のように、ゴルフ場利用税は現在も撤廃されていませんが、2003年から一部非課税処置が取られています。対象となる人や活動は、下記の通りです。
・18歳未満
・70歳以上
・障がい者
・国体・国際競技大会のゴルフ競技(公式練習を含む)や学校の教育活動
非課税の適用を受けるためには、各種証明書の提示や、非課税利用の届出書の提出などが必要です。
6.ゴルフ場利用税の仕訳(会計処理)はどうすればいい?
最後に、ゴルフ場利用税に関する会計処理の仕方について説明します。
ゴルフ場利用にかかるお金の会計処理区分
まずは、ゴルフ場を利用したときにかかる諸々のお金の、会計処理上の区分について理解しましょう。
以下の表は、ゴルフ場利用でかかるお金の主な項目と、それらに紐づく「勘定科目」および「税区分」を示したものです。
項目 | 内容 | 勘定科目 | 税区分 |
---|---|---|---|
ゴルフプレー代 | ゴルフのプレーにかかる料金 | 交際費 | 課税対象 |
飲食代 | 休憩時などの飲食にかかる料金 | 交際費 | 課税対象 |
ロッカー代 | ロッカーの使用にかかる料金 | 交際費 | 課税対象 |
ゴルフ場利用税 | ゴルフ場の利用にかかる税金 | 交際費 | 不課税 |
入湯税 | ゴルフ場の入湯施設の利用にかかる税金 | 交際費 | 不課税 |
ゴルフ振興基金 | ゴルフの振興に役立てるために支払う寄付金 | 交際費 | 不課税 |
緑化協力金 | ゴルフ場が加盟している団体に支払う寄付金 | 交際費 | 不課税 |
ゴルフ場利用税は「税金」なので、処理の仕方に迷う方も多いと思いますが、接待などでゴルフ場を利用した場合は、税金であっても「交際費」で処理することになります。
ただし、ゴルフ場利用税をはじめ、入湯税、ゴルフ振興基金、緑化協力金などは「不課税」なので、その他の項目とは分けて処理する必要があることに注意しましょう。
ゴルフ場利用税とその他項目の仕訳の例
ここでは、架空のケースを想定して、仕訳の例を紹介します。
例えば、接待でゴルフ場を利用した社員が提出した領収証をもとに、仕訳をするとします。このとき、領収証の内訳は下記でした。
・ゴルフプレー代:33,000円
・飲食代:5,500円
・ロッカー代:550円
・ゴルフ場利用税:1,000円
・入湯税:150円
・ゴルフ振興基金:50円
・緑化協力金:50円
上記の場合、ゴルフプレー代、飲食代、ロッカー代は「課税取引」として処理し、ゴルフ場利用税、入湯税、ゴルフ振興基金、緑化協力金は「不課税取引」として処理することになります。すると、下記のような仕訳となります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
交際費(課税取引) | 35,500 | 現金 | 40,300 |
交際費(不課税取引) | 1,250 | ||
仮払消費税 | 3,550 |
ゴルフ場利用税を課税取引として処理するケースもある
ここまでご紹介した内容は「ゴルフ場利用税を不課税取引として処理するもの」でしたが、課税取引として処理せざるを得ないケースもあります。それは、請求書や領収証にゴルフ場利用税の金額が記載されておらず、その他の項目との合計額のみが記載されている場合です。このような場合は、ゴルフ場利用税を支払っていたとしても、支払額の全額を「課税取引」として計上することになります。
なぜこのような処理になるかというと、ゴルフ場運営者の処理と利用者の処理を一致させるためです。ゴルフ場利用税の金額を記載しているゴルフ場運営者は、ゴルフ場利用税相当額を預かり金として処理することで、不課税として取り扱えます。一方、ゴルフ場利用税の金額を記載していないゴルフ場運営者は、全額を課税売上として計上しなければなりません。このような背景から、ゴルフ場利用税が課税取引となるケースもあるのです。
不課税取引になるのか、課税取引になるのか、その違いを簡単に表すと、以下のようになります。接待ゴルフの頻度が高い企業にお勤めの財務担当の方などは、覚えておくとよいでしょう。
・領収証などにゴルフ場利用税の金額が記載されている場合は、不課税取引となる
・領収証などにゴルフ場利用税の金額が記載されていない場合は、全額が課税取引となる
7.まとめ
ゴルフ場利用税は地方税であり、税額は都道府県によって異なります。ぜいたく税のような認識があるため、ゴルフを嗜む人からすれば、できれば廃止してほしい税金かもしれません。一方で、ゴルフ場利用税には応益税の側面もあることから、地方自治体の視点に立つと、「廃止すべき」とも「残すべき」とも判断しづらい、難しい問題と言えそうです。