残り距離の表示、なぜゴルフ場によって基準が違うのか? 意外な真相を追う
バブル期の新設コースで、表示されている距離より20ヤード以上短いパー3がありました。驚いて、聞いてみると、2グリーンのベントと、高麗の芝生を張り間違えたのに、それが修正されずに、そのままになっていたのが原因でした。
配信日時:2023年5月11日 06時56分
バブル期の新設コースで、表示されている距離より20ヤード以上短いパー3がありました。驚いて、聞いてみると、2グリーンのベントと、高麗の芝生を張り間違えたのに、それが修正されずに、そのままになっていたのが原因でした。(2ヶ月後、ホールの表示板とスコアカードが修正されました)ゴルフコースの中には、設計図のまま、ヤーデージを表示しているケースがあります。実際に造成して、芝張りなどをする中で、現場判断で変更があったのに設計図通りになっていると、表示がおかしい、ということになります。
昭和から平成の初期までは、芝張りが終わって、ゴルフコースの仕上げの段階で、グリーンの中央からフェアウェイの中央に、巻き尺を駆使して測った100ヤード、150ヤード、200ヤードの目印の棒を立てて、それぞれの棒からグリーンを見て、両手を広げて、その横にヤーデージ杭などのを設置する目印の帽をを打ち込むというケースが多かったのです。グリーンを起点にして、コンパスで半円を描くようにはしないので、幅があるホールほど、ヤーデージ杭に近くなると実際の残り距離が長くなる現象が起きました。
バブル期にグリーンを狙ったショットがショートすると客受けが悪いので、ヤーデージ杭をグリーンに近づける秘密の修正が流行しました。飛びすぎて怒るゴルファーは、ほとんどいないからです。この結果、グリーンの中央ではなく、奥からの残り距離のヤード杭になっているコースも、現在でも数は多くはありませんが残っています。オーバーしても、自分は飛ぶのだ! と、気分良くなってもらうための確信犯かもしれません。
トーナメントでは、グリーンの一番手前までの残り距離に、ホールロケーション図(いわゆるピンポジション図)の距離を足し算して、その日のホールまでの正確な残り距離を出すので、本格的な雰囲気を出したいコースでは、グリーンの一番手前までの残り距離のヤード杭になっているケースが多いようです。
この10年で、レーザー距離測定器、GPSの距離測定器が急速に一般化しました。
2019年のゴルフ規則大変革で、距離測定器は、推定距離が表示されない前提で、公式には使用可、ローカルルールで禁止できるという形に逆転。現在では、距離測定器も安価で高性能なものも発売されているため、使用するゴルファーも増えています。
しかし、不思議なことに、ゴルフコースの残り距離の基準は統一されず、コースによっては曖昧なままなのです。もっとも距離測定器を使用しているゴルファーは、基本的にホールのヤード杭などを確認しませんから、距離表示にズレがあっても気が付かないので、改善されないということもあるようです。距離測定器を使用していないゴルファーも、曖昧なヤード杭に慣れていて、文句は出ません。
風が吹いたり、高低差があったり、残り距離は状況によって、伸びも、縮みもします。また、ゴルファーへのサービスという思惑もあり、残り距離の表示には反映されがちです。欧米では、残り距離のヤード杭はないほうが圧倒的多数なので、ヤード杭不要論まであります。
残り距離のヤード杭にも色々な物語があるところもゴルフの面白さです。そう考えて、ヤード杭を見つめると、残りの距離がバッチリわかる? といいですね。
(取材/文・篠原嗣典)