ナイスショットしたときほど次打地点にはゆっくり移動「はやる気持ちを抑えて、ひとまずカートに乗る」【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
時間に追われると交感神経優位な状態が続いてパフォーマンスが低くなる。そこで順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「ゴルフでは特に、ゆったり歩く、ゆっくり話す」ことを心がけているという。これこそ自律神経を整えるシンプルかつ最強の秘訣だ。
配信日時:2023年5月22日 05時00分
チョロでもしない限り、次打地点への移動には普通、数分かかります。移動するだけならスコアに影響はなさそうに感じますが、自律神経を整えるためにはとても大切な時間なので、ご一緒に考えてみましょう。
例えば、これからの時季はボールが少し曲がっただけで深いラフにつかまることがあります。皆さんだったら最後の人が打ち終わると同時にクラブを3~4本持って走りだしますか? それともカートに乗って行きますか?
■焦りと走りのダブル効果で交感神経優位が続く
この場合の正解は後者です。スロープレーを避けたい気持ちは分かりますが、カートに乗っても乗らなくてもかかる時間はさほど変わりません。むしろカートに座ってひと呼吸つくと焦る気持ちが鎮まり、副交感神経も上がるからです。
打球がトラブル区域やカート道と反対方向へ飛んでいった場合は、状況を見て決めてください。一方、ナイスショットをしたときはどうでしょうか? 喜び勇んでフェアウェイへ歩きだしたり小走りしたりする行動は抑えるべきです。気持ちがはやってしまうのは交
感神経優位が続いている証拠です。
いいショットをしたときこそカートに乗って心身の興奮状態を落ち着かせるか、歩くなら「ゆったり」を心がけるくらいでちょうどいいペースになるでしょう。
■時間と心のゆとりで自律神経は安定する
私は普段からゆっくり行動することを心がけています。特に、ラウンド中はゆったり歩く、ゆっくり話す。この2点を忘れないようにしています。
というのも、ラウンド中は時間に追われる要因が多いからです。スタート時間ギリギリの行動や後続組からのプレッシャーを感じたりすると、プレーは慌ただしくなり、心に余裕がなくなってイライラします。早口や命令口調にもなりがちです。呼吸は浅くなり、血流が悪くなり、酸素が手先にも脳にも行き渡りません。
判断力も下がってミスショットを頻発するのです。悪循環を避けるには、朝から余裕を持って準備や行動することを意識しましょう。特に、大股でゆったり歩き、相手に聞き取りやすくゆっくり話すだけで落ち着きを実感します。
焦りやイライラがなくなり、アドレスで違和感があれば仕切り直したり、「お先に」のパットを慎重に打つことができて、心のゆとりが生じます。
ミスショットをしたときも、カートに乗ってまず深呼吸。仲間とゆっくり話し、カートを降りたらゆったり歩いてボールに近づき、「自分のスイングリズムで振ろう」と、気持ちを切り替えられるといいですね。
時間と心のゆとりが自律神経の安定につながることを忘れずにゴルフを楽しんでください。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。