セルフのときの“面倒くさいから”は要注意 使いたいクラブは取りに戻る【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
使いたいクラブが手元にないとき、「仕方ない。取りあえずこれで」と、妥協することはないだろうか。「そのショットは間違いなく失敗します」というのは、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。「このクラブではダメだ」という場面で、ミスを最小限に抑える方法を教えてもらった。
配信日時:2023年3月31日 00時00分
カートを降りて2打目、3打目地点へ向かうとき、ほとんどの人は残り距離に見合うクラブを3~4本持っていきます。ところがボールのところへ行ってみると、想像以上に距離があって手持ちのクラブではグリーンに届かない。あるいは深いラフにつかまっていて、ショートアイアンで確実に脱出したいが持ってきていない……というようなことが時々あります。
■クラブに対する不安はスイングの迷いを生む
こういう場合、皆さんだったらどうするでしょうか? アマチュアの方を観察していて感じるのは、取りあえず手持ちのクラブで打っていくタイプが多いことです。
「このクラブではダメだろうけど、これしかないから」とか「クラブを取りに戻ったら遅くなるから」とか、仕方がないと妥協してしまうことでミスしたときの言い訳を先につくってしまうのです。
クラブに対する不安を持ったままボールに向かうと、スイングに迷いが生じて、ミスショット確定どころかトラブルにさえ発展しかねません。「このクラブではダメだ」と思った時点で交感神経は一気に高まっているからです。
交感神経の乱れによるミスを最小限に抑えるには、そこでクラブを取りにカートへ戻るべきだと私は考えます。
■ひと呼吸つくことで余裕が生まれ好循環に
シングルクラスのうまい人は、こういうとき、必ずといっていいほどクラブを取りに行きます。例えば、アプローチで往々にしてあるのが、グリーン周りのラフから寄せるのに52度と56度のウェッジを持っていったけれど、思ったよりボールが沈んでいたから60度を取りに行くというようなケースです。
56度でランを気にしながらこわごわ打つより、60度で思い切って上げていくほうがシンプルで成功率が高いからです。最も状況に適したクラブを持てば不安は安心に変わり、余裕が生まれます。
取りに戻る動作でひと呼吸入り、交感神経がさらに落ち着くメリットもあります。アベレージゴルファーもこういう好循環を取り入れたいところです。ただ、カートが遥か遠くにあって戻れないときもあるでしょう。その場合は、パーオンを狙わず、気持ちを切り替えることが大切です。
「ハーフショットでグリーン手前に転がしてみよう」、「フルショットでバンカー手前に刻もう」というふうにグリーンオン以外の目標を具体的にするのです。グリーンを狙わないのなら、それだけハードルが下がって不安は少なくなります。集中力の維持もできて自律神経の乱れを抑えられるのです。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。