アリアをニスモがチューニングするとどうなる?
国産メーカーのなかでも、電動化にとくに力を入れているのが日産だ。ハイブリットもさることながら、リーフから始まった純粋なEVも日産が先駆けとなっている。そのフラッグシップがアリアで、今回さらにニスモが加わった。ニスモと言えば、日産のレース部門でもあるだけに、どんな仕上がりになっているか、非常に興味があるところだ。今回はテストコースでの試乗となり、公道では試せないようなシーンも体験することで、そのポテンシャルを実感することができた。
配信日時:2024年3月21日 04時32分
突然の発表に驚いたアリアNISMOの登場
アリアそのものについて整理しておくと、バッテリー容量の違いでB6とB9というふたつに分かれ、それぞれFFと4WDがある。走行性能はEVらしいパワフルなもので、とくに4WDはe-4ORCEと呼ばれる日産独自の制御を採用。強力な加速や安定したコーナーリングだけでなく、強くブレーキをかけたときでも車体が不安定にならないなど、巨体を感じさせないパフォーマンスを実現している。デザインも押出しが強く、存在感十分。和のテイストをうまく取り入れるなど、かなり凝ったものだ。
そこに追加されたのがNISMOで、予想だにしなかった突然の発表ということもあって、かなり話題になった。NISMOと言えば、日産のレース部門でもあり、そもそもパフォーマンスレベルが高いアリアに対して、さらにどのような味付けがされるのかというのが湧いた理由だ。実際、発表時には「旋回性能はGT-Rを上回る」というコメントも出ただけになおさら。そして今、アリアNISMOに試乗するチャンスが巡ってきた。
ニスモらしさあふれるデザインにまずは心掴まれる
アリア自体、EVらしいデザインで、かなりレベルは高い。それに対して、NISMOらしさをしっかりとプラスしていて破綻はなし。前後バンパー、サイド、フェンダーなどが専用品で、よく見るとかなり凝った形状をしていて、よくある「あとで付けました感」はなく、理屈抜きでかっこいい。ホイールすら専用で、NISMOらしさを表現した逸品だ。
注目なのはただかっこよくデザインしただけでなく、空力などにも徹底的にこだわっている点。実際に担当したデザイナー陣も、機能をしっかりと確保することにこだわりを持っていて、それがこのNISMOデザインにつながっているという。また、NISMOのイメージカラーである赤が締まった印象を与えるし、バンパーに装着されたNISMOのロゴも心掴まれるアクセントだ。
インテリアも同様で、素材の変更も含めたデザイン変更が各部でなされていて、エコや先進性を重視したクリーンなデザインのノーマルグレードとは一線を画している。シート表皮はタッチのいいスウェード調で見た目もレーシー。外装同様、各部に赤を多用していて、特別感とワクワク感を演出している。
速いけど安心! 誰でも楽しめる異次元の走り
そしていよいよ試乗へ。標準のアリアには何度か試乗していて、SUVらしからぬスポーティな走りを体感済み。NISMOとなるとどうなってしまうのか興味あるところだし、車両重量が2トンを越えているだけに安定感はあるのか、など気になるところは多い。
まずコーナーではとにかくよく曲がる。サスペンション全体を煮詰め直していたり、駆動力を後輪に多めに配分していたりして、制御だけで曲げている感じはなくてとても自然。もちろん重たさは感じない。フォミュラE向けにタイヤを供給していたミシュラン製のEV専用タイヤもアシストしているのだろう。とにかくしっかりと安定してコーナーをクリアする。ちなみにこのタイヤ、内側に吸音スポンジを付けることで、EVで問題になるタイヤの静粛性にも優れているという。
さらにタイトなスラロームをけっこうなスピードで入っても、難なくクリアしたのは驚いた。車重があると、どうしても飛び出し気味になるが、それがまったくなし。開発陣からスピードをしっかりと出して体験してほしいと言われていたのだが、さすが自信満々だけのことはある、と関心するばかりだった。
そして気になる加速は、ドライブモードがスタンダードでも標準モデルに対して、かなり速い。モーターはエンジンと違って低速から駆動力が一気に立ち上がるが、それにしても速い。そして本丸、NISMOモードを選ぶと、爽快を通り越した過激な加速が楽しめる。電撃がキーワードというが、掛け値なしで電撃で、衝撃的だ。ただ凄いのは、ブレーキをかければ、普通に止まるということ。高速道路の制限速度以上からのブレーキなので、正確には普通以上の性能があるということになるし、感覚も緊急ブレーキではなくて、強めに踏むとグッとスピードが落ちていく感じだ。e-4ORCEはブレーキング時の姿勢安定制御もウリのひとつで、それがしっかりと体感できるほど威力を発揮してくれていると言っていい。
最後にNISMOモードの特徴をもうひとつ。それがEVサウンドだ。EVにはエンジンはないので当然静かで、それがスポーツモデルでは一転して物足りなさに繋がることも。それを解消すべく、海外メーカーでは音をスピーカーから流して気分を高めるというのが増えている。ただ問題はどんな音を付けるかで、そもそも後付けなので実際は無理くりというものもあったりする。アリアNISMOではデザイナーを中心に音までデザインしていて、アクセルをオンにすると高音を中心とした高揚感のあるもので、オフにすると減速感を強調する低音中心のなる。好みはあるだろうが、クルマのキャラに合ったものなのは確かだろう。
今回のNISMOの登場に合わせて、生産材料不足などで販売を中止していた標準グレードも再開して、フルラインナップが改めて出揃ったのもトピックスだ。
NISSAN ARIYA NISMO B9 e-4ORCE (ProPILOT 2.0)
◆全長_全幅_全高:4650×1850×1660mm ◆車両重量:2220kg ◆モーター種類:交流同期電動機 ◆定格出力(前/後):45kW/45kW ◆最高出力(前/後):160kW(218ps)/5950-11960rpm/160kW(218ps)/5950-10320rpm ◆最大トルク(前/後):300N・m(30.6kg-m)/0-4392rpm/300N・m(30.6kg-m)/0-4392rpm ◆ミッション:─ ◆WLTCモード一充電走行距離:─ ◆定員:5人 ◆価格:944.13万円
文/近藤暁史【MUSHROOM】
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