【ゴルフを職業にするという選択肢】三度の飯よりゴルフが好きだから!ティーチングプロになっちゃおうかな~
巷では、ゴルフの指導をして収入を得る人のことを「ティーチングプロ」「レッスンプロ」「ゴルフコーチ」「ゴルフインストラクター」などと呼びますが、狭義では日本プロゴルフ協会(PGA)によるプロ指導者資格を得ている指導者のことを、ティーチングプロと呼びます。そこで、本記事では日本における代表的なゴルフ団体である「PGAのティーチングプロ」にフォーカスして解説していきます。ティーチングプロの資格制度、種類、資格を取得するまでの道のりなど、詳細を知れば知るほど、ティーチングプロのゴルフに対する強い思いと愛の深さを感じるはずです。
配信日時:2024年5月15日 08時38分
1.ティーチングプロとは
ゴルフを人に教えて生計を立てている人のことを、「ティーチングプロ」や「レッスンプロ」などと呼びますが、実はティーチングプロという名称は、公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA)の登録商標です。
同協会がティーチングプロの資格認定を行っており、ティーチングプロについては「ゴルフ指導技能に優れ、広範にわたるゴルフ知識及びPGA指導要領を取得した者に付与され、ゴルフの普及と発展を目的に活動する」と定義しています。
そのため、PGAの試験に合格しないと、本来的にはティーチングプロを名乗ることはできません。
ティーチングプロとレッスンプロの違いは?
一方のレッスンプロとは、お金をもらって人にゴルフを教えることを職業とする人全般のことです。
PGAなどが主催するプロゴルフ指導者の資格試験に合格している人を指してレッスンプロと呼ぶこともありますが、ゴルフスクールなどで特別な研修を受けたコーチを指してレッスンプロと呼ぶこともあります。
ティーチングプロ(教えるプロ)と、レッスンプロ(レッスンするプロ)に、言葉の意味での本質的な違いはありませんが、PGA有資格者のティーチングプロを指してレッスンプロとはあまり呼ばず、また、ゴルフレッスンの講師を指してティーチングプロとあえて呼ぶ機会も少ないでしょう。
日本プロゴルフ協会(PGA)以外のプロゴルフ指導者資格
一般社団法人日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)も、プロのゴルフ指導者の資格認定を行っています。こちらは「JLPGAティーチングプロフェッショナル会員」という名称で、「健全なゴルファーの育成、ゴルフ技術、ルール及びマナーを研究錬磨し、その指導普及を図ること」を目的としています。
また米国のUSGTF(United States Golf Teachers Federation)など、海外にもゴルフ指導のプロフェッショナルになるための資格認定を行う団体が存在します。
2.ティーチングプロの種類
PGAのティーチングプロには、A級とB級の2種類があります。
PGAは1985年に「インストラクター資格認定制度」を発足、2002年に「PGAティーチングプロ」に改称し、従来の4階級からA・B・Cの3階級に変更しました。2007年にB級とC級が合わさり、以降、A級とB級の2階級制になっています。
とはいえ、いきなりA級とB級のどちらかを選べるわけではなく、ティーチングプロになりたい人はまずB級の資格取得を目指すことからスタートします。晴れてB級の資格を得た人のみ、A級の資格取得に向けて駒を進めることができるわけです。
B級の資格を取得した人はPGAに入会し、ティーチングプロ会員として登録されます。ここでようやく“ゴルフを教えるプロフェッショナル”の肩書きが得られ、レッスンの仕事をするうえでも有利に働きます。
A級は、PGAティーチングプロの制度において最高位の資格です。A級資格を取得するための講習会ではジュニア指導に特化した講義が実施されており、A級資格認定とともにジュニア指導員資格が認定される点も特徴です。PGAはジュニア指導員の目的として、「ゴルフの技術指導という狭義の枠に留まらず、“外遊びで体を動かす子どもたちを復活させる”」ことを掲げています。
なお以前は、男性はPGAに所属、女性はLPGAに所属という棲み分けがなされていましたが、PGAは2020年度から女性の受験も受け入れるようになりました。申込年度中に満20歳以上に達する者であれば性別に関係なく、誰もが受験することができます。
3.ティーチングプロ資格取得までの流れ
PGAティーチングプロ資格認定は、次のような流れで進められます。
PGAティーチングプロB級(2024年度)
【1】申し込み
申込書、宣誓書等のほか、「将来どのようなゴルフ指導者を目指すのか」をテーマにした800~1000字以下のレポートも提出します。
【2】書類審査
【3】プレ実技審査
ゴルフ場での実技審査です。36ホール・ストロークプレーで、合格基準は168ストローク以内。平均スコア70台後半~80台前半が求められます。
【4】実技審査
再びゴルフ場での実技審査です。36ホール・ストロークプレーで、合格基準は158ストローク以内の上位80位タイまで(予定)。平均70台で回る実力がないと厳しいうえ、順位も審査基準になるのがプレッシャーです。
【5】最終審査
10分程度の面接審査と、50分の筆記試験(途中休憩なし)が行われます。
筆記試験は、PGAが発行する『基本ゴルフ教本』の重要な語句を正しく理解するための試験で、合格ラインは8割以上。語句の意味をちゃんと理解して、パッと答えられるようにしっかり頭に入れておく必要があります。
【6】ティーチングプロB級講習会 前期
編成/4学期制・合計16日・120時間
内容/座学講習、レポート課題、実技指導、各種検定試験
トレーニング論の座学と実技、ゴルフスイング論、ゴルフルール、SNS活用法などを学びます。科目により、レポートの提出もあります。
【7】ティーチングプロB級講習会 後期
編成/2学期制・合計6日・75時間
内容/座学講習、レポート課題、実技指導、各種検定試
後期の講習は検定及び実技実習を除き、インターネットを活用した「eラーニング」で実施されます。
スポーツ医学(内科・外科)、ゴルフ医学実習(障害予防のためのテーピングや、心肺蘇生法、AEDの使い方)、ゴルフ栄養学、ゴルフ心理学などについて学び、いずれもレポートの提出があります。
【8】入会セミナー
編成/1日・5時間
内容/座学講習
入会セミナーではPGAの組織と運営、ゴルフ法学、保険、暴力団排除について学びます。
【9】PGA入会・ティーチングプロB級資格取得
以上の全科目において、出席点とレポート&実技検定の検定試験の点数両方が基準に達した人が、ティーチングプロB級資格に認定されます。
PGAティーチングプロA級(2024年度)
【1】ティーチングプロA級講習会
編成/4学期制・合計16日間(4日間×4回)
内容/座学講習、レポート課題、実技実習
ゴルフ指導だけに留まらず、未来のゴルフ界を担うゴルフプロフェッショナルの育成を目指した内容を学びます。
【2】ティーチングプロA級資格取得
A級資格認定と同時に、ジュニア指導員資格も認定されます。
なお、2024年1月1日付けでティーチングプロ新規B級資格を取得したのは、98名。B級の合格率は50%以下と言われますから、実に狭き門です。
ティーチングプロA級・ジュニア指導員資格取得者になったのは42名です。
4.ティーチングプロの資格取得にかかる費用
ティーチングプロ資格取得にかかる費用を紹介します。決して安くはないので、資格取得に向けて本気で臨まないと、残念な出費になってしまいます。
PGAティーチングプロB級(2024年度)
受験料/66,000円( 受験料 60,000円+書類審査料 6,000円)
ティーチングプロB級講習会前期 受講料/460,000円
ティーチングプロB級講習会後期 受講料/240,000円
PGA入会金/ 460,000円
※すべて税込み
合計は122万6,000円ですが、さらにプレ実技審査と実技審査でのプレーフィ、B級講習会の宿泊費・食事代、交通費等も必要です。実技審査や講習会の会場から遠い場所に住んでいる人は交通費もバカになりませんし、講習は泊まり込みで行われるため、その間は働くことができません。ティーチングプロになるには、お金も時間も必要なのです。
PGAティーチングプロA級(2024年度)
ティーチングプロA級講習会 受講料/300,000円
※税込み
合計は30万円ですが、これも交通費等が別途必要になります。
5.ティーチングプロの年収
ティーチングプロの収入は、働き方、勤め先によって大きく異なります。
主な例は、ゴルフ場やゴルフ練習場、ゴルフスクールに所属してアマチュアのレッスンを行うケース、個人のティーチングプロとしてゴルフ施設を回るケース、自分のゴルフスクールをオープンするケース、トーナメントプレーヤーについてプレーをサポートするケースなどです。
ゴルフスクールの社員となった場合の年収相場は300万〜500万円ほどのようです。ティーチングプロの資格を持っていないインストラクターより50万~60万円ほど額が上がることもあるので、「苦労して資格を取ったかいがあった」と思えるでしょう。
自分の名前が売れればメディアに取り上げられたり、YouTubeなどにレッスン動画を投稿して人気が出れば、さらなる収入を得ることも可能です。
6.PGAティーチングプロアワード
PGAには「ティーチングプロアワード」という賞が存在し、毎年レッスン指導に関する理論の中で特に優れたものが表彰されます。
2024年に15回目の開催を迎えたアワードは、高野逸夫(B級・61歳)、北山雄一郎(A級・45歳)、町田祐基(A級・50歳)の3名がファイナリストに選出されました。
そして上記3名のファイナリストの中から、最優秀賞がインターネット投票で決定され、2024年は町田祐基さんが最優秀賞と賞金100万円を獲得しました。
7.まとめ
ティーチングプロ資格取得にはお金も時間もかかりますし、本気で勉強しないと合格することはできません。そのハードルはとても高いのですが、だからこそ資格取得者はゴルフに対する情熱があって、確かな知識と技術を持ち合わせた指導者であることがわかります。上達を目指すゴルファーは、そんな人からゴルフを教わりたいと思うものです。
なにより“好き”を仕事にできるのは、大きなやり甲斐につながるでしょう。