おやじゴルフニュース「ファッショナブル女子のゴルフ進出をおやじはどう迎えるべきか」
ゴルフはそこそこそのキャリアを積んでいくと、マンネリや金欠、はたまた体の痛みなどさまざまな問題を抱えながら続けてゆくこととなります。そのとき感じているのは、ゴルフ道を極めようとガムシャラに目指していた目標を失う虚無感。ここらでひと息入れてみませんか。コラムニスト木村和久が、エンジョイゴルフの本質と核心、そしてこれからどうやってゴルフ生活を楽しんでいけばいいのかを提案し、マンガ家・とがしやすたかのイラストと共に旬なゴルフ情報をお届けします。
配信日時:2023年11月7日 02時00分
インスタグラムなどSNSの影響か、ファッショナブルな女性ゴルファーが増えています。練習場やコースで見かける機会が増えていますもの。大手コース運営会社の集計では、全体の10%程度だった女性客が、ここ数年で13~14%に増えているとのこと。低く見ても3割増ですからね、かなりのものです。
ほかシンクタンク系のデータでも、全体の利用者の2割程度が女性と出ています。増加した女性の多くは購買意欲が盛んです。ゴルフ量販店ではレディスウェア、小物類の売り上げが伸びているとのこと。ファッショナブルな女性はカタチから入るので、ギアよりウェアを気にするんですね。
そこで迎え入れる側としては、どのようにして若い女性に対応すべきか。施設やコース管理、接客、ルール&マナーなど、ハードとソフト両面で考えてみました。
1)過去の失敗例から学ぶ
今から30年ぐらい前、バブル全盛で「オヤジギャル」なんて言葉が流行った時代がありました。そのときと今の状況は似ています。バブルの頃、若いハイセンスな女性と何度かラウンドしましたが、ゴルフに対する考え方が、根本的に違うことに驚かされました。
男性のほとんどはゲーム、すなわちスコアを気にします。けど女性の関心事はちょっと別のところにあるようです。だいぶ昔ですが、午後から雨予報ながら、女性を交えてゴルフをしました。彼女は今にも雨が降りそうな雲行きなのに、嬉々としてラウンドをしています。この人は雨が好きなのか? 予想どおり雨が降ってくるや、その女性は待ってましたとばかり、新調した真っ赤なレインコートを羽織るのです。新しいレインウェアを周りの人に、お披露目したかったのでしょう。男性が新しいドライバーを買って、友達に自慢するのと感覚が似ています。
そのとき、おざなりのリアクションをして「さあさあ打って」とプレーを進行させました。今同じようなことが起きたら拍手喝采し、スマホで写真を撮るぐらいのことはしますね。
2)レディスティで女性への配慮を考える
女性ゲストの多くはレディスティで打ちます。レディスティは距離が短く、女性のために配慮していると思うでしょう。これが意外と打ちづらいのです。昔のゴルフ場は、レディスティをさほど設置してませんでした。鶴舞CCにいたときは、2000年頃、新しく新設工事をしてましたかね。
多くのコースは後付けで設置し、ティイングエリアの面積が狭く、左右どっちかの端にちょこんとあります。だから打つとき、妙なプレッシャーを感じてミスしやすいのです。コースの真ん中にレディスティを作ると見栄えが悪い、バックティから打って来るメンバーの邪魔になる、しかも面白みに欠ける。そういう考えがあるかどうか分りませんが、フェアウェイのど真ん中に、広々とレディスティがあるコースは見たことがないです。
要するにゴルフの上手な男性目線で、レディスティを作っているのです。今後レディスティを作る場合は、是非、女性の意見を、しかもさほど上手くない人の考えを取り入れて作って頂きたいです。
ほか女性向けの食事の開発、風呂場等のリラクゼーション施設の拡充、ショップの品揃えの充実なども必要ですね。
さらに女性はくるまに乗っけてもらうことが多いです。ここはクラブバスを拡充させ、電車ゴルフ利用で自ら行けるようにしたいです。調べると最寄り駅に近く、クラブバスを出せるのに、クラブバスを運行していないコースが結構あります。経営方針などいろいろ理由はあると思いますが、そこは再考してみてはいかがでしょうか。
3)女性が助かるローカルルールはあるのか?
米国のポピュラーなローカルルールで「マリガン」があります。これは朝一番のティショットを2回打てるというものです。
昔、大酒飲みでいつも二日酔いのマリガンさんという人がいて、朝はからっきしダメ。そこで友達から「マリガンさん、朝イチは2回打って、好きなほうのボールを選択していいから」と温かい言葉を頂いたそうです。
それが他の人にとっても好都合だと広がり、今や全米で広く行われるようになりました(※諸説あります)。昔、米国で地元の人々とゴルフをしたときに、皆さん当たり前のようにマリガンをやっていましたからね。こういうルールやマナーを超越した措置を、女性や初心者にやってあげるべきかと思います。
そう書くと、ここは米国じゃないので、ちゃんとルールを守りましょうという人が現れます。そこでR&Aの正式ルールで、ビギナー救済策が講じられましたので報告しておきます。それがこれです。
4)最大スコアの設定
これは2019年のルール改正で実施されている正式なローカルルールです。ラウンド前に、予め最大スコアを決めてラウンドすることが出来ます。個人的には競技やコンペ以外のプライベートラウンドで、このルールを使っています。
具体的には最大スコアをパーの倍に設定しています。つまりショートホールの最大スコアは6で、バンカーで何回ミスをしても6より上のスコアはありません。最大スコアはゴルフコンペでも採用できるのですが、未だ実施したコンペは見たことがないです。
ゴルフって上手い人間が取り決めをすることが多いので、下手の気持ちをまったく理解していないのでしょう。このルールにより、若いビギナーがバンカー無間地獄に叩き落とされて「スコア数えてたよ~はい15ね」などと、言われなくて済むようになりました。
5)今後起こりうること
例えば、池に囲まれたアイランドグリーンのショートコースがあるとしましょう。男性は挑戦意欲にかきたてられ武者震いをします。一方ファッショナブル女子は、なんと綺麗なホールと感嘆することでしょう。これは撮影してインスタにアップしないと。「このホールは撮影に専念するのでパス」って言われたりして。
ここでゴルフに厳しいオヤジは「お前ゴルフをナメとんのか~」と怒り心頭です。けど回転寿司では似たような光景がよく見られます。ウニやトロなどをスマホで撮影し、ダイエットしてるからと、シャリをたべないでパスする女性たちがいます。高級寿司屋じゃ大将が注意するかも知れませんが、回転寿司じゃそうもいきません。
そういう客に限って、後でデザートを沢山食べるので、いいお客さんだったりして。というわけで、今後スコアをつけなかったり、何ホールか飛ばしたりする人が現れるかも知れません。そういう人達と今後どう付き合って行くかですよね。
まっとりあえずマリガンからやってみますか。たぶんコース側は、進行が遅れるからって認めないでしょうけどね。
■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。
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