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    需要がなければなくなって当然? ゴルフ場から消えていくサービスについて

    時代の変化と共に、それまであった物やサービス、職業までもがなくなったりしています。この流れは止められず、かつてゴルフ場でおこなわれていたサービスについても同様なことが言えます。

    配信日時:2023年8月8日 04時42分

    • ゴルフライフ
    かつてはどこのゴルフ場でもあった連続写真や記念写真撮影のサービスは、時代の変化と共に姿を消しつつある
    かつてはどこのゴルフ場でもあった連続写真や記念写真撮影のサービスは、時代の変化と共に姿を消しつつある (撮影:ALBA)
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    「最近は、スイングの連続写真を撮ってくれるコースってなくなったね」
    同年代の(バブル期のゴルフを経験している)ゴルファーが言いました。視線の先には、同伴者のスイング動画を撮るために、スマートフォンを片手に、ほぼうつ伏せになっている若い男性がいました。

    昭和の終わりから平成の初期に、多くのゴルフコースのスタートホールにはカメラマンがいて、全員のスイングを撮影していました。ラウンドを終了してクラブハウスに戻ると、ロッカーの手前に机があって、朝撮ったスイングの連続写真が現像して並べてあるのです。

    探してみると、1993年に撮影されたスイングの連続写真とコンペの記念写真が見つかりました。連続の方はカット数12コマで、トップからフィニッシュまでが切り取られています。販売されているときは、そのうちの2コマだけが見えるように展示してあり、購入しない限りすべてのコマは見られません。連続写真と記念写真のセットで確か2000円ぐらい。バブル期のゴルフ場では、悪いコースでも平均で5割、接待コースでは9割の来場者が購入したそうです。

    社用族が激減したことや、カメラ付き携帯電話の普及も相まって、これらのサービス、販売は消えていきました。しかしあらためて見てみるとプリントアウトされた写真もなかなかいいものです。スマートフォンの画面で見る写真と違い、そこに実体として存在している良さを感じることができました。

    平成の初期まで、コースのロッカーには、お風呂に入っている間に、シューズを磨いてくれるサービスがありました。メンバーは無料というケースもありましたが、まあまあの料金でした。でも、ピカピカになるだけでなくソールの磨り減った鋲も交換してくれたりして、プロの仕事として高額だと思う人は少なかったのです。

    昭和40年代までは、ゴルフショップが少なかったこともあって、コースのメンバーのクラブ修理は所属しているプロゴルファーの仕事でした。この時代のプロは、例外なく、基本的な修理をする技術を修行を経て身につけていました。

    昭和30年代までは、暇なときにキャディが毛糸でヘッドカバーを編むのも仕事だったそうです。メンバーたちのヘッドカバーは、手編みで、各ゴルフコースごとの個性もあったそう。セルフプレーが主流となった現在では考えられない、なんとも粋なサービスですね。

    ゴルフコースは、ゴルファーに合わせて変化し続ける宿命を負った場所。
    消えてしまったサービスは、そういう象徴でもあります。本革の高級シューズが、憧れだったからこそ靴磨きやメンテナンスは価値があったのです。足りないものを補う関係は、まるで家族のようで、メンバーコースが、その昔は信じられないほど家庭的な雰囲気だったという証です。

    昭和から平成、そして令和へ。消えてしまったゴルフコースのサービスは他にもあります。需要がなくなったという判断のものもあれば、損得勘定で儲からないからやめてしまったものもあります。過剰なサービスがなくなった分、ゴルフが安くできるようになった、と歓迎する考え方が多数派で、まさに時代の流れと言えるのだと思います。これはゴルフ場とは違いますが、例えば出版物の電子化、デジタル化によって印刷物としての本や雑誌等がどんどん数を減らし、結果、街中の書店も姿を消しつつあります。しかし『書店がそこに存在することの効用』を否定する人は少ないはず。なくなっても不便じゃないけど、残って欲しいものもある。

    携帯電話にカメラが付き、スマートフォンに変わっていく中で、カメラの性能はひと昔前の高級コンパクトカメラを凌駕しました。カメラの需要は減り、街中にあったフィルムを現像したり、焼き増ししてくれるプリントショップはその多くが廃業しました。便利になっていく時代の流れの中ではしかたのないことですが、最近になって、かつて一世を風靡した使い切りカメラの“写ルンです”が復活して、若い人たちの間でちょっとしたブームになっていますね。

    枚数が限られていて、ミスしたら1枚が無駄になって、現像するまで仕上がりがわからない、という不便さと、写真になった独特の画質感などを面白いと感じているのが、復活ヒットの理由なのだそうです。

    ゴルフコースの消えたサービスを懐かしいというと、老害みたいな扱いを受けるときがあります。でも、ゴルファーファーストで、ゴルフを好きな気持ちに応えようとするために存在したサービスを、無駄だから、不要な物だからなくなった、と断言するのは悲し過ぎるので、せめて語り継ぎたい。

    ゴルフコースに望むサービスは、単なる損得勘定などではなく、ゴルフを好きな人同士がその気持ちを分かち合えるようなものであって欲しい。こういう時代だからこそ、復活するものを含めて、全国に広がらなくともそのサービスがあるからこのコースに行く、という物語に期待してしまうのです。

    ちなみに、とあるグループ系列のゴルフ場では、現在でも連続写真サービスが継続しているそうです。スマートフォンの中のデータのままでもかまいませんが、たまには、“実体ある存在としての写真”を手にするのも悪くないのかもしれません。

    (取材/文・篠原嗣典)

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